だが、森保監督の招聘にどこまで影響力を発揮したかは不明だ。田嶋会長体制になってから技術委員長の座に就いた西野、関塚は、原、霜田コンビに比べると弱い印象を受ける。代表監督の仕事ぶりに厳しいチェックを入れるタイプには見えない。現在の技術委員長、反町氏は原氏に近いキャラだが、先述の通り代表チーム担当ではなくなった。山本ナショナルチームダイレクターにも西野、関塚的な「良い人臭」がプンプンと漂う。代表監督の仕事ぶりにダメ出しをするようなタイプではない。森保監督をひたすら温かく見つめる役でしかないように見える。それがナショナルチームダイレクターの仕事だとすれば、チェック役は誰になるのか。

 田嶋氏が会長になってから今年で8年目を迎えるが、その間、代表監督は3人変わっている。ハリルホジッチの解任。西野監督の誕生。森保監督の誕生と続投劇が起きている。ハリルホジッチの解任及び西野監督の誕生はW杯本番の2ヶ月前という慌ただしさだった。まさに英断だった。W杯本大会出場をまたいで行われた森保続投も、日本サッカー史において初の出来事だった。重要な判断を迫られてきた。それぞれ決断したのは技術委員長ではなく田嶋会長だ。

 田嶋会長はこう言っては何だが、世界のサッカーに特段、詳しそうではない。代表歴もある元選手ながら評論性は低い。その会長の下で2050年までにW杯で優勝という目標を掲げられても説得力に欠ける。その前にするべきは組織の構築だ。1995年、ネルシーニョ案が時の会長、長沼氏の一声でご破算になった時、田嶋会長は強化委員として地団駄を踏んだはずではなかったのか。その間に28年が経過した。27年後の2050年、W杯で優勝する姿をイメージすることはさすがにできない。健全な組織の構築こそロードマップの第一歩だと考えて欲しいものである。技術委員長、ナショナルチームダイレクターの役割や権限が明確でないサッカー協会の体質を放置してはいけない。