[画像] 「"面白い女性"は損をする」海外研究、驚きの中身


「"面白い女性"は損をする」世界の学術研究、驚きの中身を紹介します(写真:mush/PIXTA)

一部上場企業の社長や企業幹部、政治家など、「トップエリートを対象としたプレゼン・スピーチなどのプライベートコーチング」に携わり、これまでに1000人の話し方を変えてきた岡本純子氏。

たった2時間のコーチングで、「棒読み・棒立ち」のエグゼクティブを、会場を「総立ち」にさせるほどの堂々とした話し手に変える「劇的な話し方の改善ぶり」と実績から「伝説の家庭教師」と呼ばれている。

その岡本氏が、全メソッドを初公開し、15万部を超えるベストセラーとなった『世界最高の話し方』に続き、このたび『世界最高の雑談力―― 「人生最強の武器」を手に入れる! 「伝説の家庭教師」がこっそり教える 一生、会話に困らない超簡単50のルール』を上梓し、発売3日で3万部を突破するなど、早くも話題を呼んでいる。

コミュニケーション戦略研究家でもある岡本氏が「『"面白い女性"は損をする』海外研究、驚きの中身」について解説する。

「女性は面白くない説」は海外で学術研究がされている

「Women cannot be funny(女性は面白くなれないんだよ)」。あるとき、バイリンガルの高校三年生の娘が発した、こんな言葉に私はびっくりしました。


「話し方」のコーチングや研修を仕事にしている私は、講演などで、表情の固い聴衆を和ませたいと、「笑いの取れる話し方」について研究するために、芸人のライブなどに足しげく通っています。

「おかげで、少しは笑いがとれるようになってきたよ」という話をしたところ、冒頭のコメントが娘から返ってきたのです。

「女性は面白くない」という説は、実は海外のソーシャルメディアなどではかなり定番の話題で、検索したところ、実際にこの説について数多くの学術的研究がされていることがわかりました。

「男は……」「女は……」というステレオタイプを助長するのではなく、あくまでも「科学的データ」に基づき、「はたして『面白さ』に男女の差はあるのか」を検証してみたいと思います。

12月10日に日本テレビで放映された『女芸人No.1決定戦 THE W』ですが、2017年の開催当初から、SNSなどでは「面白くない」「つまらない」といった意見が交わされてきました。

ネット上では、「出演者への審査員の評価が優しすぎる」という意見や「なぜ、女性を別枠にする必要があるのか」といった声もありました。私も見てみましたが、「ほかのお笑いグランプリ同様、面白い人もいれば、そんなに面白いと感じられない人もいる」という印象でした。

12月18日に開催される『M-1グランプリ』では、決勝進出者9組中、女性は「ヨネダ2000」の1組のみ。女性コンビは2009年のハリセンボン以来13年ぶりとのことです。

日本でも、面白い女性芸人は数多く登場してきていますが、やはり、まだまだ少数派のようです。

海外では「何十年」にもわたって研究されている

「女性が男性と同じぐらい面白いかどうか」は、実は何十年にもわたり、海外の研究者が研究をしてきたテーマでもあります。

そうした研究はどのような結論を導き出しているのでしょうか。

「男性は女性より面白いのか?」については、たとえば、

・アメリカの教員を評価するサイトのレビューを分析したところ、男性教授は女性教授よりも面白いと評される確率がはるかに高かった(アメリカ・ノースイースタン大学)

・アメリカ人学生の参加者たちに漫画のセリフをつけてもらい、評価したところ、男性のほうが、5点満点で約0.11ポイント高かった(アメリカ・カリフォルニア大学)

男性の63%が女性の平均的なユーモア能力より高い(アメリカ・ノースカロライナ大学)


といったように、「男性のほうが面白い」との結論が導き出されるケースが多いようです。

一方で、次のような結果もありました。

・男女に1コマ漫画の面白いセリフを考えさせるという実験を行った結果、男女ともに同じ評価を得た(カナダ・ウェスタン オンタリオ大学)


 では、なぜ男性のほうが「面白い」と評価されやすいのでしょうか。

まず、「男性は『面白くあろう』とすることに凄絶な努力をする人が多い」ということが挙げられるでしょう。

それは、「面白い」とは、まさに「モテる」の同義語であるからにほかなりません。

「面白いこと」と「頭がいい」は強い相関関係あり

2007年にイギリスの作家、クリストファー・ヒッチェンズは、雑誌『Vanity Fair』で、「なぜ女性は面白くないのか」という記事を発表し、賛否を呼びました。

その中で、彼は「男がやらなければならない人生の最大の仕事は、異性を感心させることである」「女性が男性のことを『面白い』と言うのは、男性が女性のことを『可愛い』と言うのと同じ」と論じました。

実際、女性が「面白い男性」を好むというのはよく知られた話ですよね。好きな男性のタイプなどと聞かれて「面白い人」というのは、つねに上位に並びます。

その理由は「面白いこと」と「知性」「頭がいい」は強い相関関係があるからです。狩猟採集をしていた古代から、進化の過程で「知性」は生存に必要な要素とされてきました。

ユーモアは「他人の心の中に身を置き、他人が何をおかしいと思うかを理解する能力のようなもの」「社会的知性や自信を必要とする」と、進化心理学者のデイビッド・バス氏は『アトランティック誌』の中で語っています。

ペーパーテストをするより、話の面白さで頭の良さを測るほうがよほど簡単ですから、「知性の代理としてユーモアで判断する」のだそうです。

「女性が男性のユーモアのセンスを判断すること」と「その男性をどの程度知的であると認識しているか」が相関していることは研究でも示されています。

男性は女性に面白いと認識してもらうために、ほかの男性と競争し、涙ぐましいほどの努力をし、技を磨こうとする傾向があるということのようです。

「おやじギャグ」という言葉はあっても「おばさんギャグ」という言葉はありませんよね。結局、圧倒的に冗談を言う回数が女性より多いので、男性のほうが面白いと思われやすくなるというわけです。

ミネソタ州立大学のある調査によると、女性はより「ポジティブ」、もしくは「中立的」、もしくは「不条理なユーモアスタイル(面白い話をしたり、人生の難局をユーモラスにとらえたりする)」で、男性はより「ネガティブなスタイル(皮肉、からかい、自虐表現など)」「性的・攻撃的なユーモアを生み、楽しむ」傾向があるそうです。

「身体を張る」「下ネタ」「裸芸」「大声」「理性がぶっ飛んだ演技」など、お笑いの鉄板は男性が得意とするところでもあり、「『お笑い』=『男性がやるもの』」という先入観を多くの人が持っている可能性が高いということになります。

さらに、喜劇の面白さは、ネタだけではなくそのステージパフォーマンスも大きな要因です。

一般的に、男性は「自信過剰」になりやすく、女性は「自信過少」になりやすいといわれています。

「絶対面白いはず」という「根拠のない自信」が突き抜けた面白さにつながりますから、女性の「自信の低さ」が、観客の笑いを損なう可能性があるというわけです。

面白い女性は「職場」でも冷遇されやすい

面白い男性が評価されるばかりではありません。面白い女性には「ペナルティー」が科されていることが研究によって明らかになってきました。

・男性がユーモアを交えたビジネス・プレゼンテーションを行うと、ユーモアを交えない場合と比較して、「組織内での地位(尊敬や名声)が高い」とみなされ、業績評価やリーダーシップ能力評価も高くなる。しかし、女性が同じプレゼンテーションにユーモアを加えると、人々は「地位が低い」とみなし、業績評価も低く、リーダーとしての能力も低いとみなす(アメリカ・アリゾナ大学)

男性のユーモアは機能的女性のユーモアは破壊的とみなされ、ステレオタイプな男性のユーモアを使う女性は好感度が低くみられる(オランダ・ティルバーグ大学)


つまり、面白い女性は職場でも、冷遇されやすいというのです。

しかも、それだけではありません。残念ながら、面白い女性は実際に「モテない」のだそうです。

男性が「ユーモアを使うと好感度が上がった」のに対し、女性が「ユーモアを使うことで、魅力が半減する」ということが研究から明らかになっています。

男性は、同じようにきれいな女性で、たまたま面白い女性よりも、きれいで面白くない女性のほうがより魅力的だと感じたという調査まであります。

「面白い=賢い」を意味するので、脅威に感じる男性が少なくないのかもしれません。

ある研究では、男性が「知能テストで自分より優れている」と言われた女性を紹介されたとき、その女性を「魅力的ではない」と評価し、その女性とデートしたいという確率が低くなったそうです。

若者の何気ない会話を分析した研究によると、「男性は男女混合でより多くの冗談を言う」のに対し、「女性は女性だけのグループでより多くの冗談を言う」ことがわかりました。

「女性は、男性がいないときにだけ冗談を言う」ということです。男性からの反応を意識したうえでの行動といえるでしょう。

お笑いに必要な「自己主張」や「支配」といった男性特有の行動を体現する女性は、モテにくくなるというわけで、まさに「面白い女性は損をする」ようにできてしまっているのです。

「制約を取っ払う」ことで、女性の面白さは開放できる

このように、「ユーモアのジェンダーギャップ」は明白に存在していますが、「能力の大きな差」ということではなく、むしろ「外部環境」によるところが非常に大きいというのが真実のようです。

「先入観」や「ステレオタイプ」を改め、「制約を取っ払う」ことで、女性がその面白さをもっと開放できる場も広がっていくのではないでしょうか。

(岡本 純子 : コミュニケーション戦略研究家・コミュ力伝道師)