そこで、どうするか。2つの手がある。

A案:自転車違反にも反則金の制度を適用する。
B案:駐車違反の放置違反金に似た「自転車違反金」(仮称)の制度を新設する。

私は40年間ほど交通違反、交通行政をウォッチしてきた。そこから僭越ながら言わせてもらえば、A案はつまらない。反則金の納付は任意だ。納付しなければ、現在と同じく罰金がどうこうの手続きへ移行する。めんどくさい。

一方、駐車監視員の放置違反金は、納付は任意じゃない。納付しなければ強制執行だ。預貯金などに差押えをかける。また、罰金や反則金と違って放置違反金は、取り締まりを行った都道府県の収入になる。自転車の違反から生じるカネも入れば、財政難に苦しむ自治体は大喜びだ。私ならB案を選ぶと思う。

警告ですませていた自転車違反のたとえ1割にでも赤切符を切れば、警察、検察は悲鳴をあげる。A案かB案か、当然にどちらかを導入することになる。その視点、言及が、私が見た報道には欠けていた。見事なほどスルーだった。

今回の自転車取り締まりの強化は警視庁だけだが、全国でやったらどうなるか。参考のため2021年の全国の、すべての自転車違反の検挙と警告の件数をあげておこう。

検挙=2万1906件
警告=131万2438件

警告が最も多かったのは2012年、こうだ。

検挙=5321件
警告=248万5497件

すっごいでしょ。このデータをどう読むか、話は長くなる。また今度解説したいと思う。

文=今井亮一
肩書きは交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から裁判傍聴にも熱中。2009年12月からメルマガ「今井亮一の裁判傍聴バカ一代(いちだい)」を好評発行中。