東京メトロ東西線が飯田橋〜九段下間で冠水し、約8時間にわたり不通に。折り返し運転区間の珍しい行先などにも注目が集まりましたが、この冠水、台風14号の影響による大雨だけが原因ではないようです。

連休中でも13万9000人の利用者に影響

 大型で強い勢力を保ったまま本州を縦断中の台風14号。2022年9月18日の東京でも暖かく湿った空気がもたらす大量の雨が公共交通に影響を与えました。東京メトロ東西線飯田橋駅では線路が冠水する浸水が発生。約8時間にわたって一部区間で運転を見合わせました。

 ただ、この浸水、台風14号の影響だけではなかったようです。


飯田橋駅で運休の対応にあたる東京メトロの駅員。9月18日(中島みなみ撮影)。

 9月18日13時15分頃、東京メトロ東西線は、信号トラブルによる異常を検知。飯田橋駅から九段下駅寄り進んだ場所での浸水を発見し、一時全線の運転を見合わせました。その後13時30分からは浸水区間を含む一部区間(高田馬場〜日本橋)を運休。そこに接続する駅までの折返し運転を開始しました。

 全線での運行再開は同日21時16分。復旧までに約8時間が経過し、利用者約13万9000人に影響を与えました。

 テレビニュースでは、利用者がホームから撮影した線路上を流れる濁った水が流れる様子が繰り返し流れ、台風の影響を象徴する出来事として報じていました。東京メトロも輸送障害について「線路内が冠水し(中略)運転を見合わせております」と説明します。

 18日の東京は朝10時頃から雨足が強くなり、12〜13時に17.5mm/h、13〜14時に21.5mmの降水量(気象庁)を記録していました。このまま降り続けると災害を予感させるような雨でした。

 しかし、飯田橋駅は千代田区、新宿区、文京区が結節する場所にあり、運行を停止した東京メトロ東西線のほか有楽町線、都営大江戸線、JR線などが集まっています。なぜ東西線だけが大きな影響を受けたのでしょうか。

現場付近では地下鉄設備の拡張工事が進行中

 その原因の一端は、地上で見ることができました。運行を停止する原因となった東西線 飯田橋〜九段下間の地上には、災害時の一次緊急輸送道路にも指定されている都道(新目白通り)が走っています。路面は覆工板で覆われ、夜間工事が行われています。

 中央分離帯に標示には「地下鉄トンネル改良工事を行っています」という文字。この日、駅などでの利用者への輸送障害のお知らせでは、こうありました。

「『東西線飯田橋・九段下間折返し設備設置工事』掘削箇所において、工事に支障する下水道の迂回工事箇所から、大雨の影響により雨水が漏水し、トンネル内に大量流入した(以下略)」

 折返し設備とは、本線上の運行に関係なく、進行方向の変更や車両の退避を行うことができる設備のことです。飯田橋〜九段下間にはもともと折返し設備があるのですが、その機能をさらに強化するための工事を行っていました。

 東京メトロ広報担当者は、この大量流入について、こう説明します。

「このトンネル工事中に、下水道を(工事に影響しないように)迂回させる必要があり、東京メトロの施工で迂回工事を終えていました。この下水道の接続部分から漏水し、線路内に想定を超える雨水の流入があったと考えられます」


9月18日は高田馬場〜日本橋間で運休となった(画像:東京メトロ)。

 下水道は地下鉄線と地上の間に位置し、東京都下水道局と工法を協議しました。が、今回の台風のような雨が重なったことで、漏水した工事現場を経て本線内の線路が冠水したと考えられます。

 東京都下水道局は「連休中で担当者が不在のため説明できない」と、回答しました。

 台風の備えは場所を選ばず必要なのかもしれません。この工事は、2026年3月末日まで続きます。