世界トップクラスの航空会社が発表した最新決算の中身とは(写真:デルタ航空)

先週4月13日のアメリカ株式市場で、ひときわ注目を浴びた企業がある。空運業界で世界トップクラスのデルタ航空だ。

アメリカン航空などのライバル企業に先駆けて、最新の2022年度第1四半期(1〜3月)決算を発表した。営業損益(調整後、以下同)は7億9300万ドル(約991億円)の赤字、1株当たり損益も1.23ドルの赤字だったが、同日の株価は前日比プラス6.2%と急騰。同業各社の株価も”ツレ高”した。

好業績が株価上昇につながるケースが多い中、赤字のデルタ航空の株価が急上昇した背景には2つのグッドニュースがあった。それぞれを丁寧に見ていくことは、日本のANAホールディングスや日本航空(JAL)をはじめ、空運業界のアフターコロナを見通すうえで参考になるはずだ。

「3月はデルタ航空の歴史上、最高の売り上げを記録」

「ビジネスや旅行の需要が回復し、3月はデルタ航空の歴史上、最高の売り上げを記録した。これまでの最高だった2019年春に比べて、座席数が10%少ないにもかかわらずだ」


決算発表後のオンライン説明会で、当社のエド・バスティアンCEOは力強く語った。

新型コロナウイルス「オミクロン株」の影響が薄まり、ビジネスクラスやファーストクラスなどプレミアム座席のチケット販売がコロナ前(2019年1〜3月)の77%まで回復。当社がクレジットカードに「デルタ」ブランドを提供しているアメリカン・エキスプレスからのロイヤルティー収入や、貨物輸送事業の成長も大きく貢献している。

その結果、第1四半期の売上高はコロナ前の79%に当たる82億ドル(約1兆0250億円)。2022年初に発表した予想数値を上回った。

コロナの影響が残りつつも思っていたほど悪くなかった、というのが1つ目のグッドニュースだ。バスティアンCEOによると、「ウクライナ紛争による旅客需要への影響は今のところ出ていない」という。

4月以降についてそれなりに明るい見通しが示されたことも、投資家たちを一安心させたようだ。デルタ航空は、第2四半期(4〜6月)の売上高が2019年の同期間の93〜97%まで回復する見込みだと発表した。

傘下に製油事業子会社を抱えている

一部の国で渡航制限が残り、海外旅行をしづらい状況が続く中で、コロナ前の9割超の水準に戻る見通しは楽観的に映るかもしれないが、当社は売上高の8割以上を、移動が比較的しやすいアメリカ国内(Domestic)で稼いでいる。


米国会社四季報 2022年春夏号』の111ページを開くと、デルタ航空の業績推移や地域別売上高がすぐにわかる

第1四半期も、国内事業が全体の回復を牽引した。バスティアンCEOによると、3月の1カ月間の営業利益率は10%と黒字化している。第2四半期は3カ月間でも営業黒字に復帰する見込みだという。

本日4月18日に発売された『米国会社四季報 2022年春夏号』の巻頭特集では、今期予想純利益の増益率ランキングで18位にデルタ航空が食い込んでいる。

ただ、ロシアのウクライナ侵攻に伴う原油高は依然として懸念材料だ。当社には製油事業(Refinery)子会社を抱えているというアドバンテージがあるとはいえ、第1四半期の燃料費は、フル稼働だった2019年の同期間と比べても7%増加した。

中国で新型コロナの感染が急速に再拡大する中、アメリカの感染者数にも若干ながら増加傾向が見られる。国内事業も前途洋々とはいえない。

4月20日以降に最新決算が発表されるユナイテッド・エアラインズ・ホールディングスやアメリカン航空をはじめ、同業他社の業績動向やCEOの発言も注視したい。

TradingView提供のDAL相場

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

(中山 一貴 : 東洋経済 記者)