[画像] 【日本代表レポート】ボロボロだった日本がなぜ中国とサウジアラビアに勝てたのか

日本代表は今年もアクシデントからスタートした。キャプテンの吉田麻也が負傷で招集できないのに加えて、冨安健洋もケガで不参加。またオフ明けの国内組を調整するために予定していたウズベキスタン戦も新型コロナウイルスの影響で中止となった。

さらに招集した中にも新型コロナウイルスにかかった時期のある選手がいた。そのためコンディションが元に戻っていないと感じている伊東純也、練習が出来ない時期があった植田直通や浅野拓磨など、どうプレーさせるか森保一監督は迷わなければならなかったはずだ。実際、浅野は中国戦当日に体調不良でベンチ外にもなってしまった。

そんな苦しい状況だった日本が中国戦とサウジアラビア戦になぜ勝てたのか。

中国は監督が交代して戦術も選手起用も「分からない」と森保監督は語っていた。一方で中国のリ・シャオペン監督は「研究分析した結果、サイドから攻撃するチャンスがある」と策を練っていた。

ところが蓋を開けてみると中国のサイド攻撃を完全に封じ込めるほど日本は両翼を使い続けた。森保監督は中国の選手の特長から「サイドからいいボールを配球する」と読み、自分たちがサイドから攻撃することで主導権を握りつつ、相手の狙いを潰していたと語る。

温厚そうな表情を浮かべる森保監督だが、試合になると相手を調べ上げ、嫌がることを90分間続ける。そしてその任務を実行するハードボイルドのリアリスティックな集団を作り上げ、中国に付けいる隙を与えなかった。

サウジアラビアのエルベ・ルナール監督は試合後に日本の弱点をどう分析していたか聞かれると「サッカーはシンプルなゲーム。技術的に優れていなかったり、まず最初にゴールに向かっていかなければ勝てない」と、日本の技術的な問題や攻撃での課題を挙げた。

だが試合でサウジアラビアのシュート2本に対して日本は8本を放つなど相手チームの4倍ゴールを目指した。2試合ホームゲームが続いたためコンディション調整がしやすかったという幸運はあるものの、メンバーを固定して起用し続けたためコンビネーションが形成され、短い時間でも完成度が上げられたからと言えるだろう。

ワールドカップアジア最終予選の最初の3戦で2敗を喫し、その後もロースコアのゲームが続いたため、森保監督は厳しい批判を受けている。ただし今年のカタールワールドカップ出場という目標に向けて着実に歩みを進めているのは事実。批判を受けてもブレずにチーム作りを続けたからこそ、この2試合に勝利を収めることが出来た。

もっとも、日本はまだワールドカップの出場権を獲得したわけではない。森保監督が現役時代に経験した「ドーハの悲劇」で言うと、第4戦の韓国戦に勝ち、第5戦のイラク戦に勝利を収めればワールドカップ初出場が決まるという状況と変わらない。

もちろん森保監督はそのことを分かっている。「ワールドカップ出場が決まったわけではありません。次の集合で『何も勝ち取っていない』と確認し、『目の前の試合を勝つ準備をしよう』と伝える」と気を引き締めた。

それでも自信はある。「(オーストラリア戦には)100パーセントの力を発揮できれば勝てるという自信を持って準備したい」。そしてオーストラリアを下せば、ワールドカップ出場を決めた2人目の日本人監督が誕生することになる。



【文:森雅史/日本蹴球合同会社 写真:岸本勉/PICSPORT】

▼ 田中碧

(撮影:岸本勉/PICSPORT)


▼ 谷口彰悟

(撮影:岸本勉/PICSPORT)


▼ 板倉滉

(撮影:岸本勉/PICSPORT)


▼ 守田英正

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▼ 伊東純也

(撮影:岸本勉/PICSPORT)


▼ 伊東純也

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▼ 遠藤航

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▼ 写真中央・久保建英

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▼ 権田修一

(撮影:岸本勉/PICSPORT)