ブームは一過性?

キャンピングカーブームと言われて久しいが、このトレンドはいつまで続くのだろうか?

【画像】北米トヨタのつくった「タゴジラ」【どんなクルマ?】 全31枚

東京オートサロン2022(2022年1月14日〜16日、於:千葉県幕張メッセ)での現地取材や、直近での各方面への取材をもとにあらためて考えてみたい。


ホワイトハウスキャンパーがフリード+をベースに開発したキャンピングカー    上野和秀

キャンピングカーが世の注目を一気に浴びるようになったのは、2020年春以降だ。

新型コロナ感染症の社会的に影響が、人々の予想を遥かに超える規模でグローバルで拡大する中、人々の生活習慣に対する意識に変化が生まれた。

キャンピングカー本来の利用方法であるキャンプのみならず、活用方法が広がっていった。

「三密」を避けるための移動空間として、また自宅駐車場や公共施設などに駐車して使う仕事や遊びの空間として、「リモートオフィス」という言葉もキャンピングカーに対してメディアやSNS上で使われることが増えていった。

こうした社会状況の変化は、コロナ禍という有事における一過性の出来事なのだろうか?

言い方を換えると、現在(2022年1月中旬)に第6波となった感染状況が今後、収束に向かうことがあれば、キャンピングカーブームも終息するのだろうか?

キャンピングカー関連メーカーにとっては当然、一過性のブームではなく、日本でもキャンピングカーライフを楽しむことが定着することを望んでいる。

一方で、大手自動車メーカーは別の見方をしてきた……。

メーカーはまだ「様子見」

「当分は、市場動向の様子を見たい」

大手自動車メーカーでミニバンや商用バンの商品企画関係者たち、または自動車メーカー直系の部品メーカーでアクセサリーパーツを商品企画する人はこれまで、キャンピングカーブームについて大筋に同じような意見を持ってきた。


ホンダNバンをベースとしたキャンピングカーも登場

何をどう様子見なのかといえば、自動車メーカーのカタログモデルとして、キャンピングカーをどう扱うのかという点である。

日本市場でキャンピングカーといえば、トヨタ・ハイエースをベースとしたバンコン(バンコンバージョン)が主流だ。

その他には、軽キャン(軽自動車キャンピングカー)としてホンダNバンやスズキ・エブリイワゴンも需要が増加してきた。

こうしたベース車に対する架装は、全国各地のキャンピングカー専門業者が少量で対応してきた。

それが、2010年代に入り、需要が安定して拡大し始めると、そうした専門業者の中からメジャー処が生まれ、年間対応台数が数百台レベルに達する企業も出てきた。

さらには、自動車メーカーと正式に新車販売の基本契約を結んでいる、いわゆる地場系の自動車販売会社の中で、独自に架装を施して販売する、いわゆる「販社架装」も徐々に始まっている。

とはいえ、自動車メーカー側の表面上の動きはまだ鈍い……。 

課題は「安全性」の基準

自動車メーカーがキャンピングカーの商品企画に対して慎重な姿勢を示し続けている理由は、補償に対する課題である。

自動車メーカーが商品企画、開発、製造、販売という流れで新車を市場導入する際、車両に対して安心安全であることをユーザーに示さなければならない。


日産セレナをベースとしたキャンピングカー

その中で、基本となるのは、国土交通省が所管する領域である保安基準である。

加えて、自動車メーカー各社は独自に、社内で部品や製品に対する安全や保安に関する基準を設けている。

この社内基準に対して、ベース車を架装する場合の制限がある。

簡単に表現すれば、ベース車のボディの一部を大きく切ったり貼ったりすることはご法度だ。

そのほか、走行中の安全性に関わる領域でも制約は少なくない。

自動車メーカーの社内規定に合致する範囲で、一部の正規新車販売店が「販社架装」を施したオリジナルブランドとして販売しているのだ。

こうした業界の常識に対して、ユーザー側としては「できれば、新車カタログモデルとしてキャンピングカー対応をしてくれれば、さらに安心度が増す」と考えるのは自然なことだといえる。

このような市場からのニーズが、一定数以上に達し、また一過性のブームではなく持続性があると自動車メーカーが判断すれば、新車カタログモデルとして登場するだろう。

来年以降に本格化?

2021年後半頃から、自動車メーカー直系のアクセサリー分野を担当する企業関係者の間では、キャンピングカーに対して「ブームというより、ライフスタイルとして定着するであろうことは十分に理解できた」という声が主流になってきた印象がある。

そのうえで、2023〜2024年頃から、新車カタログの中でオプションパーツとしてキャンピングカーに対応しうる商品設定が増えていくだろう。


日産は東京オートサロン2022でもキャラバンをベースとしたカスタムカーを出展していた

あわせて、新車の商用車では、キャンピングカー的な乗用へのアレンジが可能な商品企画が増えてきそうだ。

既存での代表例は、ホンダNバンであり、新規導入ではダイハツ・アトレーがある。日産ではキャラバンに対して「新しい展開」の可能性が色濃くなってきた印象がある。

真打ちである、日本版ハイエース300系については、現状では導入時期を含めて、キャンピングカー的な特別仕様車設定についての詳しい情報は、ハイエースの故郷である各務原市周辺からまだ漏れてこない。

また、乗用ミニバンのキャンピングカー仕様については、新型が発表されたトヨタ・ノア/ヴォクシーや、ホンダ・ステップワゴンで大きな動きがなかったことは、少し残念だ。

当面は、軽を含めた商用車でのキャンピングカーへのアレンジで、自動車メーカー各社の今後の展開を注目していきたい。