農地が無いならつくればいい──。都市部の農地不足解消につなげようとJA北大阪は、駐車場や庭などを“農地”化して農業を始めてもらうプロジェクトに今秋から乗り出す。初心者でも取り組める高床式砂栽培台とクレソンの栽培手引をセットで普及。JAが加工して販売することで高単価につなげ、新たな生産者確保を狙う。(本田恵梨)

 栽培台は、縦1・8メートル、横1・2メートル、高さ90センチで、川砂を敷き詰める。水と液肥の混合液をタイマーで自動的に点滴かん水する仕組み。養分は砂の隙間から流れ落ちるため土づくりも不要で、初心者でも取り組みやすい。クレソンの栽培手引も用意。設置や撤去も簡単にできるので、例えば、新規契約待ちの駐車場や庭先の空きスペースなどに設置してもらうことで、農地がない消費者らにも手軽に農業に取り組んでもらえるようにした。

 栽培台は繊維強化プラスチック(FRP)製で、30年以上使える。価格は1台5万〜6万円を予定。クレソンの場合4〜5キロを年8、9回収穫でき、JAが全量買い取ることで、2、3年で資材代を回収できる見込み。


 大阪府立大学と2019年から、クレソンの機能性についての共同研究も進めている。栄養価の高さはもちろん、抗炎症作用や育毛作用などが期待できるという。JAでは、こうした機能性を生かした青汁粉末やスムージーなどに加工して販売する予定だ。

 20年から組合員の2圃場(ほじょう)で、栽培の実証実験も進めている。実証に協力する吹田市の平野紘一さん(80)は「連作でき、腰に負担もないので続けやすい」と評価。既に飲食店7、8店舗と取引もあるという。

 JAでは今秋までに買い取り体制を整えたい考え。木下昭男組合長は「都市部の農地不足を解消する一手としたい。消費者にも気軽に農業を始めてもらい、将来的にはクレソンの生産部会の設立も目指したい」と意気込む。