作新学院は不安を残しながら決勝へ!宇都宮工には投打で逸材揃う勝利を決めた作新学院
5月5日、春季栃木県大会の準決勝第1試合、作新学院vs宇都宮工の一戦は作新学院が制した。
2011年から9年連続で甲子園出場を果たしている作新学院。相手のスキを伺うスピード野球は健在だが、不安を残す部分もあった。宇都宮工の先発・植竹 遼(はるか)は中々の好投手だった。無駄のないテークバック、球持ちの良いリリース、安定した体重移動。フォーム技術が高い。ストレートは常時130キロ〜135キロと両サイドに投げ込み、120キロ中盤のスライダー、フォーク系統の変化球を低めに集める。そんな植竹に対し、作新学院は2番相葉 秀三が二塁強襲安打。外野手が深めに守備をとっていたこともあり、相葉はそのスキをついて一気に二塁へ。さらに相手の二塁手のエラーの間に、またもボールが後ろへ転々とする間に生還。作新学院が1点を先制する。
先手必勝の作新学院が1点を先制してからはさらに勢いに乗り、3回表、9番井上 力斗の三塁打から2番相場が敵失を誘う鋭いゴロを放ち、1点を追加。3番大房 健斗が左越えの適時二塁打でさらに1点を追加し、3対0とリードを広げる。結果的に5回まで6三振を奪われたように、植竹の投球は作新学院打線に通用するほどのストレートの威力、変化球のキレはあった。制球力も高い好投手に対し、3点を先取できたことについて3番の大房 健斗は 「序盤、中盤、終盤と分けて点をとっていくことをテーマにしていて、自分たちはなかなか序盤に点がとれなかったので、序盤で点を取れたのは良かったと思います」と振り返った。
先発の井上は左オーバーから120キロ後半の速球、120キロ近いスライダー、カーブ、チェンジアップを低めに投げ分け、打たせて取る投球。4回まで無失点に抑えていたが、二死満塁から3番福田空脩にレフトへ適時二塁打を打たれ、2点を失う。
6回からリリーフ登板した林 拓希は130キロ前後の速球と120キロ中盤の縦変化を描くカットボールでコンビネーションで宇都宮工打線を封じる。林は2019年夏の甲子園に出場した時のエース・林 勇成さんの弟だ。小針監督も「結果恐れず、自分のテンポで投げることができていた」と評価するように、リズミカルに宇都宮工の打者を打ち取っていく。
しかし9回裏、一死一、二塁のピンチを招いたところで投手交代。マウンドに登ったのが背番号18の佐藤 優成だ。174センチとそれほど上背はないが、作新学院の右投手らしい分厚い下半身からスリークォーター気味に振り下ろす速球投手で、常時133キロ〜138キロの速球でねじ伏せる。明らかに勢いがあり、140キロを超えていてもおかしくない投手だ。しかし8番飯塚 太永の右前2点適時打で1点差に迫られるが、後続の打者を併殺に打ち取り、28回目の関東大会出場を決めた。
先発・植竹遼(宇都宮工)試合後、小針監督は「まず投手については井上、佐藤が結果を恐れてしまうあまり、攻めのピッチングができていなかったですね。林についてはテンポの良い投球ができていたと思います。打線については自分たちで点を取ったというよりもらった点数が多いので、反省点が多い試合です」
厳しく総括しながらも、「耐えながら勝利している点については大会を通じて成長ができています」と成長を称える。関東大会出場を決めたことについては「他の出場校と比べると関東に出るような戦力ではないと思っています。総合力。そして選手総動員で立ち向かっていきたいと思います」
個々の選手のポテンシャルを比較すると、野手については準決勝の第2試合に登場した白鷗大足利、佐野日大の選手たちに劣るところはある。ただ、守備力の高さや、相手のスキを伺い、1つでも先の塁を盗む走塁技術の高さはさすがであり、戦っていて嫌らしいチームであることは間違いない。
敗れた宇都宮工も夏まで見逃せないチーム。まず冒頭で紹介したエース・植竹に加え、2番手の功刀は120キロ後半の速球、キレのあるスライダーを投げる投手で、次のステージで140キロ台の速球を投げ込む潜在能力が高い左腕。
また2点適時打を放った福田も広角に鋭い打球を飛ばせる左の巧打者で國學院栃木戦では本塁打を放っており、県内を代表する外野手に入るのではないだろうか。一塁手の武藤凪冴の179センチ88キロと恵まれた体格をした左の強打者で最終打席で鋭い安打を放っている。投手、野手も素材力の高い選手を揃える宇都宮工。あとは作新学院の足攻を耐えうる守備力を身につけられるかが鍵となるだろう。
(文=河嶋 宗一)