JFA連載コラムで育成年代の“改革”について明かす「レベルの高い試合が増える」

 日本サッカー協会(JFA)が26日、公式ホームページ上で反町康治技術委員長の連載「サッカーを語ろう」を公開した。

 第7回は「選手育成とユース改革」と題して、来年から取り組む“育成年代”のプランニングについて明かしている。

 反町技術委員長は2001年にアルビレックス新潟で監督に就任。そこから日本代表のコーチや北京五輪代表監督を歴任し、2009年から11年までは湘南ベルマーレの指揮を執った。12年に松本山雅FCの指揮官を務め、就任3年目にはクラブ史上初のJ1昇格を達成。19年限りで松本の監督を退任した。そして、20年3月29日にJFA理事会で技術委員長への就任が決定。現在は技術委員会のトップとして、日本サッカー界を牽引している。

 今年は、新型コロナウイルスの大きな影響を受けて開催予定となっていたU-20ワールドカップ(W杯)インドネシア大会と、U-17W杯ペルー大会の中止が決定。これに伴って、アジアからの出場国を決める予定だったU-19アジア選手権、U-16アジア選手権も中止となった。この件について反町技術委員長は、「U-20の日本代表はほとんどプロで固められているが、U-17は学年でいえば、高校の1年生、2年生が主体。世界の中での日本の現在地を知れる重要な大会がなくなったのはとても残念である」とし、「だからといって、彼らをそのまま“放っておく“わけにはいかない」と、来年から育成年代に“テコ入れ”するプランを明かした。

 まず、ユース年代の頂点を決めるプレミアリーグでは来年4月から東が12、西が12チームと2チームずつ増加する。反町技術委員長は「2つ増やしてもレベルが落ちる心配はまったくしていない。むしろ、よりレベルの高い試合が増えると見込んでいる」と、前向きに捉えているという。

 さらに、“カレンダー”にも手を加える。過酷な連戦が強いられる夏の全国高校総体(インターハイ)が議論の出発点となったようだ。

「この大会、いろいろ問題があると感じている。一番は夏の昼間に連戦を強いる日程である。熱中症対策としてクーリングブレイクを設けているが、たっぷり水分を補給し、体を氷で冷やすような時間を取らなければならないほどの環境で試合をさせること自体が問題だろう。インターハイはいろいろな競技が集まった高校生のオリンピックみたいなものだ。本家のオリンピックもサッカー競技は分散してやるように、インターハイも本体とは別に涼しい場所でやれないものかと思う。それはプレミアリーグやプリンスリーグも同じ。炎天下でパフォーマンスが上がらない試合をするより、夏場ならせめてナイター施設が整った場所で試合をさせた方がいいように思う」

年間のスケジュールも“見直し”へ…オフ期間の導入を検討「メリハリが大事」

 これに伴い、年間を通して日程の再編も視野に入れているようだ。「7月の終わりころから8月の初めのころにかけて、完全にブレークを入れる」と、大幅な改革を考えているという。その理由を反町技術委員長は自身の言葉で述べた。

「レベルの高い試合を年間を通してやり続けるにはメリハリをつけることが大事で、サッカーに不向きな夏場に休むのは、誰がどう考えても理にかなっている。夏休みに親と休暇を取ったことがないとか、部活の先生は家庭を顧みなくても仕方ないとか、どう考えても異常だろう。早くに起きて、校庭にラインを引かなくてもいい、ごく普通の朝が学校の先生にだって必要だ。最近、聞いた話だけれど、コロナ禍で部活動が停止になって朝練をしなくなったら、普通に通学して勉強だけをしていた選手の体がどんどん大きくなったらしい。連日の早朝練習が選手を寝不足にして肝心の身体の成長を阻んでいたわけである。シーズン中に、特にサッカーに不向きな夏場にしっかりオフの期間を設けることは、家庭を持つ先生(監督)にとってもその家族にとっても、選手とその家族にとっても、ウィンウィン。それで競技レベルが上がれば、まさに『三方良し』だろう」

 オフ期間により、夏のインターハイや冬の高校選手権予選などに“しわ寄せ”がいくものの、「一案として“スキップ”がある」としている。例えば、プレミアリーグに参加している青森山田高校は各大会の県予選1回戦から出場せず、準決勝ぐらいから出場する“シード権”を持つことなどが候補として挙げられる。議論は必要ながら、環境を整えることが「ユース年代のスキルや全体のレベルを上げることにつながると信じる」と反町技術委員長は確信を得ている。

 日本代表の強化のためにも必要なユース年代の育成。反町技術委員長はこの問題と、とことん向き合っていく覚悟を持っているようだ。(Football ZONE web編集部)