「なぜ酔っ払うと集中できなくなるのか」という謎の解明に貢献するような研究結果を、テキサス大学サンアントニオ健康科学センターの研究チームが発表しました。結果はオープンアクセスの学術誌「Nature Communications」に2020年12月2日(水)に掲載されました。

Ethanol abolishes vigilance-dependent astroglia network activation in mice by inhibiting norepinephrine release | Nature Communications

https://www.nature.com/articles/s41467-020-19475-5



Drinking blocks a chemical that promotes attention

https://medicalxpress.com/news/2020-12-blocks-chemical-attention.html

研究チームは2光子イメージングと呼ばれる手法で、ジョンズホプキンス大学とハイデルベルク大学の共同研究者から入手した特殊なマウスの研究を行いました。

注意を払うとき、脳は神経核の1つ・青斑核からノルアドレナリン(ノルエピネフリン)を分泌します。分泌後に何が起きているのかは、これまではっきりしていなかったそうですが、今回、研究チームのマーティン・ポーケルト博士らは、ノルアドレナリンがバーグマングリア細胞の受容体と結合し、カルシウム濃度を上昇させることを示しました。

飲酒はノルアドレナリンを放出するような脳内信号を抑制するため、研究チームは「飲酒することで、バーグマングリア細胞のカルシウム濃度上昇が抑えられ、千鳥足になるなどの酩酊時の症状が起きる」と推測を立てて今回の研究を行いました。しかし、実際にはバーグマングリア細胞に限らずアストロサイト全体で同じ現象が起きることが分かりました。アストロサイトは神経細胞の役割を支える存在で、シナプス伝達や脳血流の制御などを行っています。

今回の発見は「アストロサイトが脳の基本的な機能の維持をサポートするだけではなく、認知機能にも積極的に関与しているという現行の示唆と一致している」とポーケルト博士は述べています。

論文の共同著者であるManzoor Bhat博士は、「この発見は、覚醒状態を最終的に決定する脳回路を定義する新たな道を開き、これらの回路に干渉する化学物質が、脳が本来備えている覚醒システムを本質的に抑制する仕組みを明らかにするでしょう」と語りました。