走る前からわかる? 新旧走りの違い

text:Kenji Momota(桃田健史)

日産が満を持して日本市場に導入した、新型ノート。

メディア向け取材会で、筆者(桃田健史)は実車の外観、内装、エンジンフードの中をじっくりと見た。また、日産関係者から新型ノート開発の詳細な情報も得た。

日産ノート(2020年型)。「次世代上級小型車向けプラットフォーム」と表現される、CMF-Bを下敷きにする。    日産

動かない状態の新型ノートと、各種データを見ただけで、先代(2代目)と新型との走りに圧倒的な差があることは、実車で試乗する前からはっきりとわかる気がした。

そうした確信が持てる最大の理由は、プラットフォーム(車体)の刷新だ。

今回のフルモデルチェンジで、メディア、販売店、ユーザーが最も気にするのは、やはり第2世代eパワーだろう。

なにせ、eパワー導入によって、2代目ノートは一躍、日本市場のトップスターに躍り出たのだから。

とはいえ、第2世代eパワーを活かすも殺すも、クルマの母体であるプラットフォーム次第であることは明らかだ。

2020年11月26日にオンラインで開催した発表記者会見でも、日産自動車・第1製品開発部・チーフビークルエンジニアの渡邊明規雄氏が「第2世代eパワーと新型プラットフォームがもたらす感動の走り」という表現を用いている。

商品コンセプト「常識を超える先進コンパクトカー」の軸足となるのは、プラットフォームなのである。

ノートの新型プラットフォームとは?

「次世代上級小型車向けプラットフォーム」

発表記者会見の際も、またメディア取材会の際も、日産側が使った表現である。

日本で未導入の2代目「ジューク」も、新型ノートと同じCMF-Bプラットフォームを使用する。    AUTOCAR英国編集部

日産関係者から直接聞いたが、このプラットフォームは日産社内でCMF-Bと呼ぶもの。

CMF(コモン・モジュール・ファミリー)のBセグメント用だ。

現状で、新型ノートと同じCMF-Bを使うのは、欧州などで2019年から発売され日本で未導入の2代目「ジューク」だという。

また、2021年に日本で発売予定で、すでにアメリカでは「ローグ」として発売されている次期エクストレイルは、中型車(C/Dセグメント)向けのCMF-C/D。

また、2021年に日本を含めて世界市場で発売予定の「アリア」は、CMF-EVと呼ぶことを、新型ノート実車の前で、日産関係者から確認した。

次世代上級小型車向けプラットフォームでは、ボディとして超ハイテン材を2代目比で24%増やし、ボディ剛性が30%上がった。

また、サスペンションを刷新したことでサスまわりの剛性が10%増。

さらに、注目されるのはステアリング回りの剛性が90%も上がっている点だ。

資料には「高剛性からハンドル操作に対してクルマが素直に反応」とあるが、見方を変えると2代目の弱さが改めて浮き彫りになったともいえる。

トヨタ/スバルで感じた「差」

新型ノートの2020年度中の発売確定を確認した2020年5月以降、様々な機会に2代目ノート(NAとeパワー)を改めて試乗してみた。

すると、ドライバーや乗員が直接感じる、クルマの基本性能の評価ポイントであるNVH(ノイズ・振動・路面からの突き上げ感)について、「明らかに旧世代のクルマ」という印象を持った。

日産ノート(従来型)    日産

こうした感覚は、ノートに限った話ではない。

時代を少し振り返ってみると、2010年代で自動車産業界で最も大きな変化があったのが、プラットフォームの次世代化だと感じる。

TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)や、スバルのSGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)など、導入のビフォー/アフターで、クルマの出来ばえは一気に変わった。

具体的には、現行クラウンと現行インプレッサ、それぞれのプロトタイプ試乗会が別の日程で、同じ日本サイクルスポーツセンター(静岡県伊豆市)でおこなわれたが、それぞれの新旧車を乗り比べてかなり驚いた。

TNGAやSGPなど、各メーカーが”次世代”という枕詞をつける意味を実感することができた。NVHへの改善は大きく、車内での静粛性と操縦安定性が一気に向上していた。

こうした新旧差を、新旧ノートではかなり強く感じると予想できる。

「上級」がもたらす、なめらかさとは

その他、海外メーカーでも2010年代は次世代プラットフォームが次々と登場してきたが、新旧モデルの差は歴然である。

繰り返すが、新型ノートの場合、次世代「上級」小型車向けプラットフォームと、あえて「上級」という形容詞を用いている。

新プラットフォームがあるからこそ、第2世代eパワーの特長としている「なめらかさ」をドライバーと乗員がしっかりと体感できる、と筆者。    日産

その上で「コンパクトカーの常識を変える運転の快適さと楽しさが詰まった、先進コンパクト」という高い次元の商品企画を目指してきた。

新プラットフォームがあるからこそ、第2世代eパワーの特長としている「なめらかさ」をドライバーと乗員がしっかりと体感できるのだ。

市街地走行時、アクセルオフの際の減速Gを軽減しての「なめらかさ」

高速道路の走行時、アクセル操作に対してモーターを過度に敏感な反応させずの「なめらかさ」

駐車時/停車時で、新たにクリープ走行を設定しての「なめらかさ」

そして、ワインディング路での、ハンドル操作に対するクルマ全体の追従性に対する「なめらかさ」である。

さらには、後輪軸モーターをこれまでの最大出力3.5kWから50kWへと大幅に引き上げた、eパワー4WDにおけるクルマ全体の動きの「力強さ」と「なめらかさ」の両立が実現できたといえる。

今後、実車走行によって、ノートの新型への走りの進化を「プラットフォーム軸」でしっかりと体感してみたいと思う。