2020年は、PC市場においてとりわけノートPCの売上が前年よりも好調だ。
その要因となるのが、Windows 7のサポート終了による買い替え需要、そして新型コロナウィルス感染症対策として多くの企業で導入されたリモートワークへの対応、そして巣ごもり需要もある。

筆者はもともと在宅での仕事がメインであるため、今回のテレワークによるPC需要とは無縁の筈だった。
ところがこのタイミングで利用中のノートPCの調子が悪くなっている。すでに5年も経過しており、ハードウエア的にも色々と不具合も出てきている状況なのである。

・本体の冷却性能低下ですぐに高温になり、キーボード面も熱くなる
・上蓋を閉じた状態から開くと画面が点滅もしくは全く映らないことがある
・上記に関連して画面が常にちらつく
・キーボードのキーが取れてはまらなくなる


キーボードの上部の温度が46℃を超えていて熱いと感じる。PC本体の方も心配だ


こうした不具合は、ノートPCの裏蓋をはずしてケーブルの指し直しや、キーボード交換など、個人でもメンテナンスの手間をかければ延命できる可能性もある。

筆者の場合は、ノートPCの用途に動画編集作業あり、動画の出力に掛かる時間を短縮したいと言う思いもある。この問題を抜本的に解決するために、今回、PCを新調しようと決断した。

ノートPCの製品選びは、スマートフォンほど簡単ではない。
というのも、前述したように動画の出力などハイパフォーマンスな製品を必要とするなど、用途によって製品の選択肢が大きく変わるからだ。

デザインが良い、価格が安いなどと言ったスマートフォン感覚でノートPCを選ぶと性能不足で全く役に立たないと言う結果にもなりかねないのである。

たとえば、
テレワークと書類作成がメインであっても、
・画面が大きくて作業がしやすいことを優先するのか
・持ち運びやバッテリーの持続時間を優先するのか
これだけでも選ぶノートPCはまったく異なる。
誤った製品を選択すれば、仕事を効率的に進めることができなくなってしまう。

筆者の場合は、文書作成、写真編集、Webページ、印刷物制作に加え、動画編集を行うため、クリエイティブ系のノートPCが必要ということになる。

ところがこの用途でノートPCを探すと、
・薄型・軽量やモバイル性に重点を置いている製品
・GPUの性能が今ひとつという製品
これらが意外に多い。
作業的にはそれほど高機能なGPU性能を必要とはしないが、写真・動画編集アプリがサポートするGPUおよびGPU性能はクリアして欲しいところである。

そこで筆者が目を付けたのが、ゲーミングノートPCだ。
ゲーミングノートPCの特徴は次の通りだ。
・高性能CPU
・高性能GPU
・冷却性能
・大容量RAM
・ハイフレームレートディスプレイ
これらの要素が、ニーズに応じて選択可能である。

筆者がこの中で重視したい項目が、
・高性能CPUと冷却性能
・データを処理するために必要な大容量RAM
この2点だ。クリエイター向けのノートPCとはことなり、ゲーミングノートPCであれば、これらの条件をクリアする製品が多い。

ゲーミングPCを吟味する中で、苦労した項目がディスプレイの問題である。
というのも、ゲーミングPCにおいて今やディスプレイはハイフレームレートで表示し、いち早くゲーム内の状況を読み取ることに重きが置かれているからだ。

応答速度が速いTNパネルは、144Hz以上で動作する物が多いのだが、さすがに視野角が狭く、さらに色域が狭いため、写真や動画編集には向かないのだ。

そこで製品のパネル情報を調べるのに時間がかかってしまったが、IPSパネルで最低限sRGBカバー率が高い製品という条件で数モデルまで絞り込むことができた。
あとは、価格を確認して決めるだけとなった。ちなみに、クリエイター向けのノートPCの場合は、真っ先にディスプレイのクオリティを訴求するのが製品の違いでもある。




そして選んだのが、レノボの「Legion Y7000」だ。
・CPUには第9世代Core i7-9750HF
・GPUにはNVIDIA GeForce GTX1650
・RAM 16GB
・SSD256GB+HDD1TB
・15.6インチFHD(1920×1080ドット)IPSパネル搭載

Legion Y7000は、
ゲーミングノートPCとしてはエントリークラスのGPUだが、写真や動画編集には十分な性能を持つ。価格も定価は20万円前後のモデルだが、1世代前の製品と言うこともあり、セールでは11万円を切る価格で購入することができた。

+5万円程度でワンランク上のGPUを選択することもできたが、その予算で内蔵のSSDとHDDを、それぞれ1TBのSSDを別途購入して置き換え、さらにRAMを32GBにすること目論んで選択した。




勝手なイメージだがゲーミングPCといえば、フルカラーLEDで輝くものと思っていたのだが、Legion Y7000はキーボードのバックライトと天板のロゴが赤く光る以外、やや無骨ながらキーボード面およびディスプレイ面のベゼルなどに装飾がない。シンプルなデザインのおかげでゲーミングノートPC感はそれほど強くない。


本体の上にディスプレイが乗ったデザインであるため、ディスプレイ開閉の自由度が高く、本体冷却の邪魔をしない


ディスプレイは180°開閉するので、膝上で作業するときに見やすい角度で固定することもできるので便利に使える。




キーボードはキーが大きくて打ちやすいが、テンキーの配列が特殊すぎるため、誤入力が多発した。これは慣れるしかないだろう。テンキーのキー配列は、まるでカシオの電卓のようである。




タッチパッドは小さめで、タップ操作は気持ち強めに行う必要がある。下部には2つのボタンがついているので、ドラッグ操作などが容易に行える。


豊富な背面の接続端子。残念ながらUSB 3.1 Gen2やThunderbolt 3などは非搭載だ


端子類は、左右にUSB Type-A端子と左側面にイヤホンマイク端子、背面にはACアダプターや有線LANなどケーブルを常時接続する端子類がまとめられている。HDMI、USB Type-A、USB Type-C(ディスプレイ出力兼用)、mini DisplayPortも背面にある。




実際の使用感は、CPUは最大4.5GHz 、6コア12スレッドでパワフルに動作するため、以前のPCよりも写真や動画編集ソフトがサクサク動いて快適だ。これは期待以上の効果を生み出して、今までできなかったことができるようになったため、新調した価値があった。

このモデルが搭載するCPUは、内蔵GPUを持たないCore i7-9750HFと言うちょっと珍しいCPUである。そのため、内蔵GPUを使用した動画サポートなど一部の機能を利用することはできないが、別途用意されているGPUのGeForce GTX1650でそれを補うことができる。
このCPUを使ってみて思ったのが、内蔵GPU用のグラフィックドライバーを必要としないため、構成がスッキリとしたことである。

GeForce GTX1650は、ソフトウエアの対応が進んでいるため動画編集や出力時にそのパフォーマンスがいかされ、それに伴ってCPUの負荷軽減にもなっている。動画出力時の高負荷がかかったときに気になるのが、熱によるパフォーマンス低下だ。Legion Y7000は、ゲーミングノートPCならではの底面の2つのファンで空気を取り込み、背面から熱を放出するエアーフローを採用している。

ピークパフォーマンス時のファンの音はそれなりの音量となるが、あまり耳障りではない。ゲーミングノートPCとしては薄型であることを特徴としているが、それでもそれなりに厚みがあるため、キーボード面まで熱くなりすぎることなく使用できている。

ディスプレイは選んで購入したこともあり、視野角が広く、明るさも十分確保できている。もちろん、色再現もしっかりしており、写真や動画編集においてまず困ることはない。

ゲーミングノートPCと言うことで、ゲーミングの性能が気になるかも知れないが、GPUがエントリー向けであるため、FHDの解像度において60fps以上で遊ぶためには、グラフィックスの品質を落とす必要がある。ただし、ディスプレイは144Hzのハイフレームレートに対応しているため、設定を突き詰めれば60fps以上の滑らかな映像でゲームが楽しむことができた。


マイクロソフトのドライブゲーム「Forza Horizon 4」では、設定を欲張らなければ、60fps以上を常にキープすることができた。上位モデルのGPUでは、もっと高画質設定が可能だ


ゲーミング性能を重視するのであれば、この製品に限らずGPUはGeForce GTX1650以上で、最低でも「GeForce GTX1660Ti」を選ぶことをオススメする。ちなみにノートPCにおけるGeForce GTX1650とGeForce GTX1660Tiの違いは、性能や価格だけではなく、ACアダプターの出力にも違いがでてくる。例えば、Legion Y7000の場合、GeForce GTX1650モデルの消費電力は170W、GeForce GTX1660Ti以上のモデルの消費電力は230Wと高くなる。

久々のパソコンの購入だが、一時はPC市場が縮小してなくなってしまうのではと危惧していたが、5年前より選択肢が着実に増えておりそれによって製品選びに苦労をした。一方で、製品の構成やトレンドなどを知ることができ、それもまた楽しむことができた。




後悔しないノートPC選びのコツは、
・用途はどのようなものか、ハッキリさせる
・ディスプレイの品質や大きさはどこまで求めるか
・USB端子やディスプレイ端子はどれだけ必要か
そして最後は予算次第となるわけだが、安く収めたからいい買物というわけではないことに注意して欲しい。

特に、拡張性やディスプレイの品質は、価格に直結しているからだ。
さらに
・外部ディスプレイとの接続には変換アダプターが必要
・外での使用では画面が暗すぎる
・視野角が狭くて作業中にストレスを感じる
・画面が小さい(狭い)ためオフィスソフトの作業効率が上がらない
このようなモデルでは、いくら安くてCPUだけ高性能でも、買ってから後悔する可能性が高いため、避けたいものである。


執筆  mi2_303