中高年婚活でも、コロナ禍を機に、オンラインでのお見合いを実施するようになったという(写真:つむぎ/PIXTA)

新型コロナウイルスへの感染拡大を防ぐため、気軽に外出したり人と会うことができない今、中高年の婚活はどのように進められているのだろうか。

1960年の創業から中高年の婚活・結婚相談を専門に事業を展開してきた茜会と、結婚相手紹介サービス最大手のオーネットに、コロナ禍での中高年の婚活について聞いてみた。

コロナ禍での婚活

茜会、オーネットともに、現在は婚活パーティーや婚活ウォーキング、婚活料理教室などのイベントはすべて自粛している。

「会員様の中には一部、休会する方が出てきておりますが、通常の活動を継続されている方がほとんどです。1対1で会うサロンでのお見合いは、会員双方の希望の下、数は限定的ではありますが、安全に十分配慮して行われております」。茜会で統括を務める川上健太郎さんは言う。

数人の男女が直接対面するイベントは自粛しているが、1対1で会うお見合いは一部継続しているようだ。

ただ、これまでのお見合いはサロンが中心だったが、コロナ禍を機に、事前に会員双方の連絡先を伝え、サロンではなくカフェや別の場所でお見合いする仕組みを導入し、実施している。

「弊社新宿サロンや横浜サロンのある都心に来られるより、どちらかのご自宅の近所や郊外でお会いするほうが、新型コロナへの感染リスクを減らせますし、ご自宅の近所でお会いするほうが効率的なので、お見合いに慣れている方に喜ばれています。一方、『初めて会う相手に最初から自分の連絡先を知らせたくない』と考える方、『初めての出会いの際には、スタッフに間に入ってほしい』という方にはこれまでどおり、サロンでのお見合いをお勧めしています」(茜会の川上氏)

一方、オーネットマーケティング部の長岡正光副部長はこう話す。

「3月後半頃に一次的な数字の落ち込みはありましたが、それ以降は安定して弊社にアクセスがあるという状況です。イベントを自粛しているため、実質的な出会いという意味では大幅に減少しましたが、Zoomなどを利用したオンラインによる会員間同士の交流は、以前に比べて大きく伸長しています」

オーネットでは、4月7日の緊急事態宣言以降、来社しての面談やお見合いなど、対面でのサービスすべてを自粛しているが、代替として、オンラインによる面談やオンラインお見合いのほか、Zoomを使ったオンライン婚活パーティーをスタート。多くの会員たちに受け入れられているという。

Zoomを利用したオンラインお見合いは、茜会でも実施されている。

それでは、オンライン婚活がうまくいっている人の事例、うまくいかなかった人の事例を見てみよう。

オンライン婚活がうまくいっている人の事例

【男性】

千葉県在住、62歳のAさんは、離婚して数十年。茜会には今年の1月に入会し、すぐに3回ほど見合いを行ったが、離婚してから一度も婚活をしたことがなく、もともと女性との付き合いに不慣れなこともあり、交際まで発展しなかった。

それでも少しずつはお見合いに慣れてきていたが、「直接女性と対面すると緊張して話が続かない……」と自信を失いつつあった。

そんなとき、新型コロナの影響で外出自粛に。

Aさんは、「これからどのように婚活したらいいのか」と茜会に問い合わせた。すると、“オンラインお見合い”を提案される。

Aさんは、「相手の方に同意いただけるなら、ぜひオンラインでお見合いしたい」と返答。

茜会から紹介された相手の中から、気になる相手にオンラインでお見合いを打診すると、快く受け入れられた。

オンラインお見合いでAさんは、直接女性と対面していないこと、アウェー(茜会サロン内含めた外出先)ではなく、ホーム(文字どおり自宅)で会えることから、普段よりリラックスして話ができ、「打ち解けることができた」と実感。相手の女性もAさんに好意を持ったようで、連絡先を交換し、直接会うことに。

これまでに2度カフェで会い、親交を深めている。

【女性】

神奈川県在住、57歳のBさんは、数年前に離婚。茜会在籍11カ月。これまでお見合いやパーティーに何度も参加したが、Bさんは相手に対する希望条件が多く、「次はもっとすてきな人に会えるかも」という期待値も高いため、一度も「また会いたい」と思えるパートナー候補ができたことはなかった。

この調子で積極的に活動し、「そろそろいい人と巡り合いたい」と考えていたところ、新型コロナの影響で外出自粛に。

茜会のすべての婚活パーティーが中止になってしまい、ショックを受けていると、Aさんからオンラインお見合いの申し込みが届く。とくに抵抗を感じなかったので、受けてみることにした。

オンラインお見合いでBさんは、いつものお見合いより和やかな雰囲気で話ができたと満足。Bさんはもともと男性の外見や条件にこだわりが強かったが、オンラインお見合いで相手の自宅の様子や日常が垣間見れたことで、Aさんの外見だけでなく内面にも自然にひかれた。

オンライン婚活がうまくいかなかった人の事例

【男性】

埼玉県在住、54歳のCさんは、数年前に離婚。茜会在籍8カ月。Cさんは、お見合いも婚活パーティーも積極的に参加してきた社交的なタイプ。外見にも自信があり、婚活を“楽しんでいる”面も見受けられる。

そんな中、新型コロナの影響を受け、「オンラインお見合いをやってみたい」と自ら申し出、実施。

オンラインお見合いを経験してCさんは、「オンラインでのお見合いは便利だが、今は仕事でもZoomを使っているため、お見合いなのに、思わず会社の人とミーティングをしている感覚に陥り、つい事務的な話し方になってしまった」と言う。また、「いくら社交的なタイプでも、初めて会う人とパソコン画面を介して自宅で話していると、店などで話している状況とは違い、話題に詰まることもある」「やはり、直接会うほうが自分には合っている」と感想を述べた。

【女性】

東京都在住、47歳のDさんは、結婚歴はなく、茜会に入会してまだ2カ月。ただ、過去に別の結婚相談所に在籍していたことがあり、お見合い経験はあった。

入会して間もなく、新型コロナの影響で外出自粛に。

まったく活動しないのも時間がもったいないと感じ、とりあえず、Cさんから申し込まれたオンラインお見合いを受けてみることにした。

結果、Dさんは「出会いにおける大事な要素は、その人が持つ雰囲気や振る舞いも含めた人物そのものである」と痛感。それが、パソコン画面からだけでは、どうしてもわからない部分もあると感じ、「やっぱり従来のお見合いのほうがいい」と思ったとのこと。

茜会の川上さんは、こう話す。

「正直なところ、弊社ではオンラインお見合いのニーズは高くはありません。多忙な方や遠方にお住まいの方同士のお見合いについては、一定のニーズがありますが、やはり直接お会いしてお相手の雰囲気などを知りたいという方がほとんどだからです。

ただ、10人程度の会員様とオンラインミーティングを開催した際、普段サロンでお会いするときより、自宅にいるためか、リラックスされている雰囲気が感じられたり、背景に会員様の自宅の様子が見られるなど、オンラインならではのメリットも感じました」

多くの人は、「直接会って、相手のことを詳しく知りたい」と考えているが、一方で、自宅のほうがリラックスして話ができる人や、相手の自宅の様子や日常を知りたいと思う人には、オンライン婚活の需要があることがわかった。

3.11後とコロナ後

東日本大震災の後、茜会は、問い合わせや会員が増えた。

「『心残りがないように生きよう』と考える人や、災害への不安感から、『誰かと支え合って生きたい』という人が増えました。最近は、『新型コロナの影響で、1人でいるのが不安になった』という話を、離婚歴のある40〜50代の女性から多く聞きます。コロナ後も、3.11後に近い雰囲気になるのではないかと思っています」

3月から現在まで、退会して婚活を諦める人はほぼいないという。

「現在は外出自粛のため、社会全体がうつうつとしていますが、コロナ収束後にはイベント参加者や新規入会希望者が一気に増えるような雰囲気を感じます。やはり現在1人でいる皆様は、リアルな誰かとつながっていたいのではないでしょうか。今はただ、コロナが少しでも早く収束し、安心できるパートナー探しのお手伝いができたらと考えています」と川上さんは話す。


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各業界では、コロナ禍をきっかけに、オンラインサービスを早々に導入しながらも、最適な使い方を模索している。

オンラインの短所を挙げ連ねて毛嫌いする声も聞かれるが、リアルで不足する部分や弱点をオンラインで補うと考えれば、問題はないのではないだろうか。

「オンラインだけ」「リアルだけ」ではなく、長所を生かし、どちらもバランスよく取り入れていくのが最善だろう。