[画像] 新型コロナ感染をCT画像で判定するAIアルゴリズム、人間の医師と同等の精度を獲得

米マウント・サイナイ病院の研究者が、患者の肺のCT画像から新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への感染を診断できる画像認識AIを開発したと発表しました。このAIは患者の年齢、症状血液検査、感染者との接触履歴といったパラメーターとともに肺のCT画像を分析する独自のアルゴリズムを備えており、研究者は「大量のデータを迅速に分析する大きな可能性を秘めている」と述べています。マウント・サイナイ病院では、「中国の医療機関とのコラボレーションにより新型コロナ患者のCTデータをAIに実装するための専門知識を活用できた」と説明します。研究の筆頭著者Zahi Fayad氏は、このAIモデルは「診断経験豊富な放射線科医と同等の正確性を持ち、いくつかの事例ではCT画像には疾患の明確な兆候が見られなかったいくつかのケースでも優れた分析結果を示すことができた」と述べました。

このAIは、COVID-19患者の肺における特徴的なパターンを特定し、それが1週間半後にどのように変化するかを調べた以前の研究をさらに拡張したものだと研究者は説明します。中国の医療機関から取り寄せた900人以上の患者のCT画像を使って画像認識AIを鍛えつつ、画像ごとの患者の臨床情報もAIアルゴリズムに統合することで、医師がCOVID-19の診断を行うワークフローを模倣して最終的な判定を予測します。

たとえば、COVID-19患者は症状が出ていても必ずCTにそれを示す兆候が見つかるとは限らず、インフルエンザや症状の強い風邪と誤判断される場合があります。しかしこのAIの場合、放射線科の医師がCT画像を見て陰性と判定した患者のなかで実は陽性だった人の68%を検出できたとのこと。これは早期に感染していることを認識して隔離し、新たな感染者を生み出さないためにも重要なことです。

実際のところは、米国ではCOVID-19の診断にあまりCTスキャンが使用されていないと研究者は述べています。しかし、必要に応じて患者のCTを取り、陽性と出ればすぐさま隔離できるほうが、医療機関もリソースを無駄に消費せずに済むと考えられます。またPCR検査などラボでの試験による判定には2日前後の時間がかかり、それでも偽陽性、偽陰性といったあいまいな判定がでてしまった場合に、AIによる「セカンドオピニオン」を提供することもできると考えれば、このAIは今すぐにでも活躍することができそうです。

ただ、マウント・サイナイ病院の研究者らは、CTデータと臨床情報の微妙な差異から効果的な治療法選択の手がかりを見つけるために、このAIモデルをさらに開発する考えです。

Source: Mount Sinai, Nature Medicine