日産の現行ラインナップ 車齢が長過ぎる

text:Kenji Momota(桃田健史)

最近、新車が全然出ない……。ユーザーも日産ディーラーも、そう思ってきた。

確認のため、いま(2020年4月中旬)のラインナップでフルモデルチェンジした時期を見てみると、以下のようになる。

北米で販売されている日産ローグ・スポーツ(2020年)

2007年:GT-R
2008年:フェアレディZ
2009年:NV200バネット
2010年:マーチ/ジューク/フーガ/エルグランド
2012年:シーマ/シルフィ/ノート/NV350キャラバン
2013年:スカイライン/エクストレイル
2014年:ティアナ
2016年:セレナ
2017年:リーフ
2019年:デイズ
2020年:ルークス

確かに、日産車の車齢が長いことが分かる。

ノートやセレナはeパワー投入、スカイラインはプロパイロット2.0投入で商品性は上がったが、車体などクルマ本体としての古さを感じる。

では、これらのうち、どのモデルが売れているのか?

2019年度販売 トップ50入りは4モデル

登録車を見てみる。

日本自動車販売協会連合会の調べでは、2019年度(2019年4月から2020年3月)販売ランキングでトップ50に入ったのは次の4モデルだ。

日産ノート

4位:ノート 10万5908台(前年比80.4%)
8位:セレナ 8万4051台(84.0%)
30位:エクストレイル 2万9325台(63.1%)
40位:リーフ 1万7772台(79.6%)

2019年10月の消費税アップの影響で、前月比が100%割れのモデルも多い。そのなかで、車齢が長い日産車の販売減が目立つ。

唯一、前年より伸びたのが、新車効果のデイズ(15万4881台/110.6%:全国軽自動車協会連合会調べ)だった。

さて今年、新車は出るのか?

日産は結局、海外優先のブランドなのか?

最も期待されているのが、SUVのキックスだ。

一部メディアは、ディーラーからの情報として5月末発表/6月上旬発売と報じている。

日産キックス

ただし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、発表や発売が遅れる可能性は十分に考えられる。

そのキックス、各種報道でご承知の方も多いと思うが、2016年発売でブラジル、中国、アメリカ、インドなど世界各国で販売されている。

日本にはジュークと入れ替わるかたちで、eパワー搭載の日本仕様として登場する予定だ。

ジュークだが、けっしてモデルとして消滅するのではない。ジューク人気が高い欧州市場ではフルモデルチェンジするのだ。

こうした話を聞くと、日産は海外市場ばかり大事にして、日本市場を軽視しているのではないか、と思ってしまう。

日本市場で唯一好調のデイズにしても、三菱自動車との共同開発であり、生産も三菱自動車・水島工場で行う。日産としてリスクが少ないように見える。

日産は、日本市場をこれからどうしようと思っているのか?

キックスに続いて、噂されている新型エクストレイルや、フェアレディZのビックマイナーチェンジが早期に行われるのか?

そんな不安と疑問について、内田誠CEOは2月に行われた第3四半期決算発表の場で記者の質問に真っ向から答えた。

日産CEO「最大の課題は『車齢の長さ』」

決算は厳しい内容だった。

アメリカで、インセンティブ(販売奨励金)を大幅に削るなどして、販売の質を上げたが販売量が想定以上に落ちた、と指摘した。

臨時株主総会時の内田 誠CEO。最も大きな課題は「車齢の長さ」だと認めている。

その他、中国での景気減速に加えて、新型コロナウイルス感染が世界で最も早く広まった。日本ではやはり、消費税アップの影響が出た。

などなど、いろいろな理由を言うのだが、最も大きな課題は「車齢の長さ」だと認めている。

内田CEOをあえて言葉に出さなかったが、日産車の車齢がここまで伸びてしまったのはゴーン戦略の根本的な失敗だ。

筆者(桃田健史)が知る限り、日産社内では様々な新車企画、開発、デザインが着々と進んでいたにもかかわらず、ゴーン経営陣の決断は市場変化をしっかりとつかみとれず、すべてが後手に回った。

その上で、内田CEOは「2022年を目指して、各地域へ車種群の集中戦略をとる」と言い切る。

具体的に、各地域の車種群とはどんなモデルなのか?

集中戦略というのは結局、海外市場を優先して日本は後回しという、現状と何がどう違うのか?

日本での集中とは、軽自動車への一極集中を意味するのか?

そうではなく、新規モデルや既存モデルのフルモデルチェンジを早期に行うのか?

中国/北米/欧州マーケットの人気車種

現状で、各地域での車種群は、中国、北米、欧州、日本、その他の新興国で分かれている。

日産の総販売台数のうち、最も大きい約30%を占める中国では、中国向けシルフィとエクストレイルが主役。今後はさらに、SUVシフトが進みそうだが、セダンも根強い人気がある。

新型日産エクストレイルは、ブラジルで特許出願され、そのデータがリークしている。

次に北米は、中大型SUVなどライトトラック市場が今後も伸びる。

欧州は、ジュークやキャッシュカイなど小型SUVがこれからも主役だ。

では、日本はどうなる?

小型SUV/中〜大型SUVに期待よせられる

電動化や自動運転技術など、日産インテリジェントモビリティを世界に発信するショーケースとしての役割がさらに強まる。

そこで投入されるのが、世界で唯一eパワー搭載となるキックス。そして、今年後半の登場が期待される、クロスオーバーSUVでEVのアリアだ。

日産キックス(上)と日産アリア(下)

エクストレイルと、さらに大きなクロスモーションは北米導入を皮切りに日本上陸の可能性が高い。これらは2021年以降と推測される。

日産はいま、ゴーン戦略から完全脱却するため、ゼロベースでの変革を進めている。

いまだ先行き不透明ながら、日本での新車導入を着実進めることは間違いない。