食や観光など北海道の魅力を全国に発信しようと、道内と全国各地を結ぶ航空会社AIRDO(エア・ドゥ)は、道内の農業高校などと連携し、生徒が育てた野菜を使ったスープカレーの機内販売を始めた。乗客からも好評で、生徒は「自分たちが育てた野菜を実際に食べてもらえてうれしい」と期待を寄せる。

使われる喜び実感


 同社は2011年、北海道と包括連携協定を締結。道内の食と観光の振興、北海道を支える人づくりに取り組む。今回、客室乗務員へのアンケートを基に道内で生産される野菜を主役とし、北海道らしいご当地グルメの開発を計画。「空飛ぶスープカレープロジェクト」を立ち上げた。

 プロジェクトには、道内の農業高校、農業に関する学科を設置する高校14校が参加。19年2月から、生徒が栽培を始めた。

 帯広農業高校(帯広市)はジャガイモ、黒豆、旭川農業高校(旭川市)はニンジン、タマネギ、ニンニクなど、各校が分担し、全6種類の野菜を栽培。ジャガイモは煮込んでも形が崩れにくい「メークイン」、ニンジンはスープの味に負けない強い甘味が持ち味の「向陽2号」など、品種にもこだわった。

 美幌町の美幌高校は、ジャガイモとニンジンを提供した。同校生産環境科学科3年生の佐々木快人さんと中村拓斗さん、横尾武琉さんの3人が、授業で栽培した。リーダーの佐々木さんは「一生懸命に栽培に取り組んだ。本校で栽培した野菜がスープカレーの具材に使用されるのはとてもうれしい。全国の人に味わってほしい」と話した。

 北斗市の大野農業高校は、ジャガイモ約300キロの他、ニンジン、ニンニク、黒大豆、白大豆の5種類を栽培。提供した量と品目は同校が最多だった。農業科畑作班などの3年生12人が校内の畑で栽培した。

 スープカレーを試食した畑作班の石川遥也班長らメンバーは「スパイスが程よく効き、野菜のうま味が引き立つ」と高評価。「自分たちが育てた野菜が具材になり、多くの人に食べてもらえるのはうれしい」と口をそろえる。

 豚肉は道内農業高校のOBが飼育した豚を活用する。牛すじベースのまろやかなスープにアクセントとしてニンニクを使用、素材そのものを感じられる味に仕上げた。


栽培した生徒の写真などを記載したレトルトスープカレーのパッケージ(エア・ドゥ提供)

航空会社とコラボ


 パッケージには地図上に農業高校の場所を記した他、栽培した生徒の写真やコメントも添え、生徒が作った野菜を使用していることをPRした。

 スープカレーはレトルトタイプで1箱(450グラム)1100円。機内でのみ販売する。同社は「家族への土産用として2、3個購入されるケースが多い。取り組みが、北海道の農業を担う人材育成につながってほしい」と話す。

 プロジェクトを提案・後押しした美幌高校の鎌田一宏校長は「農業高校は農業生産工程管理(GAP)や危害分析重要管理点(HACCP)など、さまざまなことに挑戦している。スープカレーを通じて農業高校を知ってもらうきっかけになってほしい。納期を守るなど生徒も経営を学ぶまたとない機会になった」と話す。