フル乗車でも安心で快適なロングドライブをこなせる軽

 ここ最近の軽自動車は内外装の質感、装備、先進安全運転支援機構はもちろん、走行性能も飛躍的に向上していると言っていい。ズバリ、下手なコンパクトカーをしのぐ走りの良さを備え、ACC(アダプティブクルーズコントロール)、レーンキープ機能まで付いているクルマもあるほどだ。ターボモデルを選べば、遠出、高速走行も楽々快適。だからこそ、今、日本でもっとも売れているクルマの上位がホンダN-BOXをはじめとする、日本の道、駐車事情にジャストな軽自動車なのである。

 とはいえ、すべての軽自動車がいいというわけではない。ここでは軽自動車の定員である4名乗車でも安心・快適に走れ、ロングドライブもこなしてくれる、言ってみれば下克上的パッケージング、走行性能を持つクルマたちを紹介したい。

 必須要件としては、まずは居住性だ。軽自動車のなかでもN-BOX、ダイハツ・タント、スズキ・スペーシアに代表されるスーパーハイト系は両側スライドドアを備えているため、乗降性は抜群。とくに子供を抱いた母親や、足腰の弱ったシニア、そしてペットとドライブする機会の多い愛犬家にもうってつけ。室内空間は、それこそ「あきれるほど広い」と表現できる。後席にしても、多くのコンパクトカーはもちろん、中型セダンをも圧倒する、頭上、膝まわり空間を備え、4人乗車でも誰一人からも、文句が出ないはずである。

 スモールモビリティだからこそ不可欠な先進安全運転支援装備も、最新の軽自動車なら、これまた下手なコンパクトカーをしのぐ充実ぶりだ。自動ブレーキはもちろん、ブレーキ機能付き前後踏み間違い制御、サイド&カーテンエアバッグまで完備するクルマまであるほどで、日産デイズに至っては、日産コネクトナビによるオペレーターサービス、事故やあおり運転被害など緊急時のSOSコールまで用意されているのだから安心だ。

1)ホンダN-BOX

 そうした要件の多くを満たす1台が、N-BOX。何しろ、身長172cmの筆者がドライビングポジションを決めた背後に座ると、頭上に265mm、膝まわりに最大450mm(シートスライド最後端位置)の、広すぎる空間がある。シートのかけ心地も悪くなく、狭さや窮屈さとは無縁の後席居住空間があるのだからうれしい。後席を最後端位置までスライドさせても、足が引けるのは、シート下が空間になっているN-BOXならではだ。

 乗り心地は最新の軽自動車と比較すると、全高、重心の高さもあって足まわりを引き締める必要があるためやや硬めとはいえ、4人が快適に移動できることは間違いなしである。ターボを選べば、余裕のクルージングが可能となり、現時点で渋滞追従はしないものの、ACC(アダプティブクルーズコントロール)も全グレードにホンダセンシングの機能のひとつとして装備されるから、高速走行もラクラクこなせるというわけだ。スーパーハイト系は重くて遅い……そんな先入観があるなら、改めたほうがいい。

2)ダイハツ・タント

 N-BOXのよきライバルがタント。助手席側Bピラーレスのミラクルオープンドアや運転席&助手席ロングスライドの採用で、まさにミラクルなパッケージングを実現。ダイハツのNAエンジンはトルクの豊かさで定評があり、ターボを選ばなくても、フル乗車にそこそこ対応してくれるのがうれしいポイント。

 身長172cmの筆者がドライビングポジションを決めた背後の後席居住空間は、頭上に270mm、膝まわりに最大355mmと、N-BOXほどではないにしても、ゆとりに満ちた空間が広がっている。ターボを選べばACCも用意され、高速道路を使ったフル乗車のロングドライブもラクラクこなしてくれるのだ。室内は想定外の静かさで、騒音によるドライブの疲労度も最小限と言っていい。

3)スズキ・スペーシア

 ターボ限定でフル乗車のロングドライブにお薦めなのが、スペーシア。エンジンは燃費最優先の仕様で、NAエンジンだとフル乗車のロングドライブでややモアパワーを感じさせるものの、ターボなら洗練されたインテリアデザインに囲まれた、スムースで心地よい、静かなクルージングが可能だ。

 身長172cmの筆者がドライビングポジションを決めた背後の後席居住空間は、頭上に270mm、膝まわりに最大340mmと、頭上方向ではクラス最大級のゆとりがある。

軽の常識を覆した話題のモデル

4)日産デイズ

 軽自動車の歴史、存在価値、概念を覆してくれた1台がデイズ。日産が初めていちから開発した軽自動車であり、日産自慢の高速道路同一車線運転支援技術のプロパイロット、緊急通報オペレーターサービスのSOSコールまで用意。質の高い走行性能だけでなく、そうした先進性に大きな魅力がある。

 先代のデイズはNAエンジンの動力性能不足がウイークポイントで、どうしてもターボを進めたくなるハイト系軽自動車だったのだが、新型はNAエンジンでもマイルドハイブリッド仕様があり、街乗り中心ならフル乗車も楽々こなす実力の持ち主に。ハイウェイスターのターボ、プロパイロットエディションを選べば、まさに一家に一台のファーストカーになりうる動力性能、室内空間が得られる。

 身長172cmの筆者がドライビングポジションを決めた背後の後席居住空間は、頭上に170mmはともかく、膝回りには最大340mmもの空間、余裕があり、足をゆったり延ばせる居住空間が得られるのだからびっくり。何しろ、後席の膝まわり空間は、先代比+70mmものスペースなのである。

 先進安全運転支援装備を含め、両側スライドドアではない軽自動車のなかから、フル乗車をラクラクこなしてくれる1台を選ぶなら、山道の(とくに緊張しがちな下り坂)走行性能、安定感もばっちりのデイズが最適と言えるだろう。

5)スズキ・ワゴンR

 ワゴンRもハイト系ワゴンの定番と言える車種だが、インテリア、とくに横基調のインパネまわりのデザインの良さ、洗練度では、依然としてピカイチ。スペーシア同様に、NAエンジンは低速域のトルクがやや細く、フル乗車だとやや加速力が物足りなく感じるシーンもあるにはあり、フル乗車の機会が多いなら、ぜひ、ターボで乗ってもらいたい、上質感あふれる1台。

 身長172cmの筆者がドライビングポジションを決めた背後の後席居住空間は、頭上に145mm、膝まわりに320mmと、ライバルに比べてやや数値的には小さいものの、大柄な乗員でもゆったりできる広さ、快適空間がある。ちなみに、売れに売れている大型SUVのRAV4の後席膝まわり空間は210mmなのだから、320mmという数値でも、いかに広く、余裕があるかが理解してもらえるはずだ。

6)ホンダN-WGN

 軽自動車にして、コンパクトカー並の走りの質感、走行性能、快適さを備えてデビューしたのが、N-WGN。とくに、1.3リッター級の動力性能を備えたターボモデルの標準車は、高速道路や山道の登坂路をストレス最小限で走ることができるのは当然として、タイヤがカスタムの15インチに対して、柔らかめの14インチにサイズダウンしたおかげで、乗り心地はより快適。荒れた路面の走行や、段差やマンホール越えでのショックは一段とマイルドになり、ロードノイズも低減。心地よく静かなクルージングがフル乗車でも可能となる。

 もちろん、先進運転支援機能も充実している。ホンダセンシングは全グレードに標準装備され、0〜135km/hで作動する渋滞追従型ACC(アダプティブクルーズコントロール)を標準化しているあたりは、ライバルをリードする注目点。日産デイズで同等のプロパイロットは、プロパイロットエディションのみなのである。

 身長172cmの筆者がドライビングポジションを決めた背後の後席居住空間は、頭上に195mm、膝まわりに最大320mmと十二分。フラットフロアで足の置き場の自由度が高いのも、後席の快適性に直結。シート下がトレーになっているのも、傘などを置けて便利このうえない。

7)スズキ・ハスラー(雪道)

 現時点で未試乗だが、新型ハスラーもフル乗車の機会が多い、それも雪国のユーザー、冬にスキー&スノードライブによく出掛けるユーザーにぴったりの1台だ。4WDを選べば、最低地上高180mmによる悪路走行の強さはもちろん、新型にはスノーモードも備わり、雪道走行も得意中の得意。何しろ、ハスラーは雪国のユーザーの要望に応えて企画された軽自動車でもあるのだ。

 しかも、新型はホイールベースを延長したぶんをそっくり後席居住性に当て、後席膝まわり空間は身長172cmの筆者がドライビングポジションを決めた背後で最大320mmと、軽自動車の本格クロスオーバーSUVモデルとしてトップクラスの広さを実現している。マイルドハイブリッド仕様のエンジンは、NAを新開発。乗り心地も改善されているはずで、後席を含むフル乗車への対応として、大いに期待できる走行性能が実現されていると予想できる。当然、先進安全運転支援装備もスズキ最新のものが用意されているから安心である。