健康的な食事を摂るにはどうすればいいか。カロリーや塩分を気にしすぎて「これは控えよう」ばかりでは楽しくない。東京慈恵会医科大学付属病院の管理栄養士・赤石定典氏は「食べたいものに何かを加えれば、きちんとバランスのとれた食事になる。気をつければ、ラーメン二郎でもダイエットはできる」と説く。体にいい「食べ合わせ」のコツとは――。

※本稿は、大谷義夫・赤石定典『疲れ知らずで病気にならない 名医が教える科学的に正しい食べ合わせ』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

写真=日刊スポーツ/アフロ
ラーメン二郎のラーメン - 写真=日刊スポーツ/アフロ

■食事は「引き算して足し算」するのが正解

大学病院の管理栄養士である私の仕事は、患者さんへの栄養・食事指導をすることによって、病状の改善、治療、治癒までサポートすることです。食事に関しての私のモットーは、「引き算して足し算」。たとえば、糖尿病にしても高血圧症にしても、制限ばかりしていてはさらに栄養状態が悪くなって、病状が悪化してしまうこともあります。それでは本末転倒で最悪だと思います。

食事にはバランスが大切です。糖尿病だから糖質をカット、高血圧症だから塩分をカットという食事では楽しくないですし、おいしくありません。そんな食事が毎日続けば患者さんだってウンザリしてしまいます。すべて「カット」「制限」という思考ではなく、ほかの部分をプラスしてバランスをとろうというのが私のスタンスです。

■コンビニおにぎりは「イクラ」を選ぶ

業務の忙しさのためにコンビニを継続して利用せざるを得ないこともあると思います。

そこで気をつけていただきたいのは、おにぎりです。コンビニのおにぎりは、想像以上に食塩(ナトリウム)含有量が高いのです。そうすると、糖質の塊であるお米にたっぷりの塩分を摂るわけですから、毎日食べるのは避けたいところです。

大谷義夫・赤石定典『疲れ知らずで病気にならない 名医が教える科学的に正しい食べ合わせ』(KADOKAWA)

それでもおにぎりを食べたい方には、イクラのおにぎりをおすすめします。おにぎりの海苔にはほとんどの栄養素が入っていますが、ビタミンDだけが入っていません。そのビタミンDが豊富に入っているのがイクラを含めた魚卵や魚介、鶏卵など。だから、イクラのおにぎりは栄養素的にいえばバランスがとれているといえます。

ビタミンDは体内において骨を強くしたり、カルシウムとリンの吸収を助けたり、血液中のカルシウム濃度を一定に保ってくれます。ビタミンDが不足すると、骨粗しょう症を発症するリスクが高まるといわれています。

もう1品プラスするなら、枝豆です。おにぎりしか買わない人でも、枝豆を足せば栄養価が一気に上がり、栄養のバランスが良くなります。枝豆は未成熟の大豆であり、植物性のタンパク質が豊富な上、葉酸、ビタミンB群と、大豆にはないビタミンCも含んでいます。

■「サラダ+ノンオイルドレッシング=健康」ではない

また、コンビニには多くの品目が入ったサラダが売られています。食生活の正常化のためにも、こうしたものも摂るのがいいでしょう。とはいえ、サラダだけを食べて健康的だと思っている人は注意しなくてはいけません。タンパク質のおかずも摂っているかどうかを意識してください。

脂溶性ビタミンを効率よく摂取するために、ドレッシングに油が入っているものを買っているかどうかも重要です。ノンオイルドレッシングで野菜サラダを食べてもビタミンAなどの吸収率は高まりません。もちろん、ほかのおかずのどこかに油分があれば大丈夫です。

■「半熟卵」で足りない栄養素をプラス

私がおすすめしたいもう1品が半熟卵です。卵が「完全食品」といわれるゆえんは、体を作るのに必要な栄養素のうち、ビタミンCと食物繊維以外のほぼすべてが含まれているからです。主成分はタンパク質と脂質ですが、体への吸収率を考えると半熟の状態が一番です。健康のことを考えると、トータルエネルギーは基礎代謝以上欲しいもの。男性であれば1食700〜800キロカロリーは必要だと思います。

コンビニ食材で食事を済ませる場合、おにぎりでもパスタでもパンでもそばでも、ファーストチョイスはなんでもいいのです。それに対して足りない栄養素を加えていく、という考え方を常に実践してみてください。

包装には、原材料など成分が詳しく書いてあります。それを見て、野菜が足りなければ野菜を買い、タンパク質が足らないのであれば半熟卵やサラダチキンを買えばいい。それだけを留意してください。

■「どうしてもラーメン!」のときは麵硬め

皆さんのイメージ通り、ラーメンは1食でも塩分はオーバー、脂質も摂り過ぎになります。それでもラーメンをどうしても食べたい場合、少しでも体にいい食べ方をするなら「麵硬め」にするべき。油は当然少ないほうがいいですし、味も薄いほうがいいです。これは、「レジスタントスターチ」によって血糖値の上昇を抑えることができ、糖の吸収を遅くすることができるという考えです。

レジスタントスターチとは、小腸内で吸収されないデンプン、およびデンプンの部分分解物のこと。摂取したデンプン量の2〜10%は消化・吸収されずに小腸を通り過ぎて、大腸で食物繊維と同様の働きをすると考えられています。ラーメンのトッピングには、食物繊維としてほうれん草やキャベツ、タンパク質としてチャーシューや卵もよし、ぜひ海苔も加えたいところです。

血液を作ることに関係する葉酸(ビタミンB類)が抜群に多く含まれている海苔は、ビタミンD以外の栄養素はすべて入っているという素晴らしい食材です。普通のラーメン屋さんで出てくる海苔は3gほどですが、家で作るラーメンでは10gぐらいを推奨します。それらを足していけば、少しはヘルシーになります。

■二郎は野菜マシマシで肉をプラス

食事を楽しむという意味でも、引き算より足し算で考えましょう。「○○カット」ばかりでは楽しくありません。私は、濃厚なスープとボリュームで有名な「二郎」のラーメンでもダイエットが可能だと思っているくらいです。野菜マシマシで肉をプラスして食べれば、それだけでお腹がいっぱいになるので、麵の量は少なく済み、ヘルシーだとさえ思います。

その場合、「麵硬めで」と注文すればレジスタントスターチも働くので、糖質を吸収しづらくなる状態になり、血糖値も上がりにくくなります。ただし、塩分を控えるためにスープは飲み干してはいけません。運動不足ではない限り、論理的には太ることはないはずです。

■こんぶを噛みながらランチに出る

外食時におすすめの方法があります。先に都こんぶや梅こんぶを嚙みながら出かけるというワザです。こんぶは食物繊維を豊富に含んでいます。

職場の引き出しにそれらを入れておいて、昼休みになったらそれをかじりながら店に向かってください。すると、いきなり丼物を食べたとしても食後の血糖値の上昇を少しは抑えることができます。あるいは、脂肪の吸収を抑えてくれるトクホのお茶などもひとつの選択肢としていいと思います。

また、最初にコンニャクを食べるのもおすすめです。コンニャクを食べるとお腹が張るので、主食の量が抑えられます。それによってごはんという糖質の塊を摂取することを減らせますし、減らせないとしても血糖値の上昇を抑えてくれます。

外食でコンニャクファーストを実践するのは難しいかもしれませんが、自宅で食事をする場合は実践可能です。コンニャクがいいのは、しっかりと嚙まないと飲み込めないところ。ただ、あまりコンニャク単品を置いているお店はないでしょうから、代わりにゴボウサラダをおすすめします。

ゴボウサラダにはマヨネーズを使うので、カロリーだけ見ると普通のサラダのほうが良さそうですが、ゴボウサラダもしっかり嚙まないといけません。よく嚙むことによって満腹中枢に信号を送ることができ、食べ過ぎを抑えてくれます。また、油が入っているので血糖値の上昇を抑えられます。

好きなものを我慢せずに食事を楽しむためには、足りない栄養をプラスする、そして食べる順番を考えること。これが毎日の食事をおいしく健康的にするコツなのです。

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赤石 定典(あかいし・さだのり)
管理栄養士
1970年生まれ。華学園栄養専門学校卒業後、東京慈恵会医科大学附属病院栄養部に勤務。入院患者の献立作成や栄養管理の指導、アドバイスなどを行っている。『名医のTHE太鼓判!』『世界一受けたい授業』などテレビ出演で注目される。主な著書・監修として『その調理、9割の栄養捨ててます!』『慈恵大学病院のおいしい大麦レシピ』他多数。
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(管理栄養士 赤石 定典)