年齢を理由に大統領選への立候補はしないと語っていたブルームバーグだが、ビリオネアは、米民主党予備選への立候補の可能性も伝えられていた。

2020年の米大統領選を目指す現状の民主党候補者たちに不満を抱き、エリザベス・ウォーレンでは物足りないと感じたビリオネアのマイケル・ブルームバーグが、自らの立候補を検討していることが伝えられていた。その時点で本人からの明確な出馬表明はなかったが、前ニューヨーク市長だったブルームバーグは、アラバマ州で実施される民主党予備選へ立候補する。(訳注:書類の提出期限は2019年11月8日だったが、ブルームバーグは正式に立候補を表明した。)

ニューヨークタイムズ紙やニューヨークポスト紙は、複数の情報筋からの話として、ブルームバーグの立候補の可能性を伝えていた。ニューヨークタイムズ紙は、ブルームバーグの顧問のひとりハワード・ウルフソンが「(トランプは)米国史上最悪の脅威だ」とし、現状の民主党候補者ではトランプに対抗できないと考えたブルームバーグが「立候補を前向きに検討している」と語っていることを伝えた。またニューヨークポスト紙は、「民主党がエリザベス・ウォーレンを擁立するようなことがあれば、トランプが再選されるだろう。民主党員の誰もそんなことは望んでいない」というブルームバーグの発言を伝えた。

現在77歳のブルームバーグは、ウォール街に高価な金融情報端末を販売して巨万の富を築いた。彼は2019年3月、2020年の大統領選には立候補しないと表明していた。しかし10月中旬、ジョー・バイデン前米副大統領が民主党の最有力候補の座を獲得するのに悪戦苦闘している状況を見て、出馬を再検討しはじめたという。

50億ドル(約5兆4600億円)以上の資産を保有するブルームバーグは、ウォーレン候補の提唱する富裕層への課税対象者ということになるだろう。ウォーレンは富裕税による歳入を、国民皆保険制度(Medicare for All)や奨学金の返済免除やさまざまな社会問題の対策に充てることを主張している。しかし富裕税案に対しブルームバーグは、「恐らく、憲法に違反する制度だろう」と述べた。

顧問のウルフソンは、政治、ビジネス、「影響力の大きな」慈善活動におけるブルームバーグによる「特筆すべき実績」を強調した。ブルームバーグは2001年から3期に渡りニューヨーク市長を務めた。ニューヨーク市長時代にストップ・アンド・フリスク(警官が路上で不審者を制止して所持品検査を実施すること)を推進した実績を持つブルームバーグは、刑事司法制度改革に積極的な民主党の予備選では不利に働くかもしれない。一方で、銃規制を支持する活動に多額の支援を行ってきたことで、多くの政治的支援を集めた。

2019年11月6日にバージニア州で行われた地方議会選挙で民主党が大勝した直後から、ブルームバーグによる立候補の噂が流れはじめた。バージニア州の選挙では、彼が支援する銃暴力に反対する団体エヴリタウンが、全米ライフル協会(NRA)を200万ドル(約2億2000万円)以上上回る選挙資金をつぎ込み、両議会における民主党候補の圧勝につながった。

ブルームバーグはこれまでも、立候補を表明したり取り消したりを繰り返してきた。従って今回も懐疑的にならざるを得なかった。3月に彼はあるインタヴューで、立候補を断念した理由について説得力のある主張をしている。

この時ブルームバーグは、「79歳から4年の任期を全うし、再選して8年間務めるとなると、今回の立候補は最善の選択とは言えない」と、自分が大統領の職に就くには歳をとり過ぎたと語っている。さらに2020年へ向けた民主党の有権者の構成を見て「自分は指名を受けられそうにない」と判断し、「自分の考え方を大きく変えて、いわゆるお詫び行脚へ出ようという気にならない限り、大統領選への立候補はないだろう」と、歳をとった白人であることを弁解しているバイデンを引き合いに出した。また収監者数の増大につながる犯罪関連法(1996 crime bill)を強く支持するブルームバーグは、「(リベラル派に)支持されて然るべき法律だった。彼らは内容を精査しようともしなかった」と、3月の時点では批判していた。