急増した“海外組”の頂点に君臨 レアル久保、バルサ安部以上に勝負のシーズンへ

 総勢30人以上の日本人選手が、ヨーロッパでプレーすることになった。

 これまでも「海外組」はいたわけだが、これだけの人数になったのは初めてだろう。

 久保建英がレアル・マドリードのプレシーズンマッチに出場して、現地メディアからも高評価を得ているようだが、ジネディーヌ・ジダン監督はカスティージャ(レアルB)からのスタートを口にしている。

 ただ、この先まだどうなるか分からない。もしも、トップチーム入りするようなことになれば、確かに画期的な出来事になる。レアルのライバルであるバルセロナには安部裕葵がいる。レアルとバルサは“超”のつくビッグクラブであり、久保と安部が海外組の頂点にいるように錯覚してしまうが、最も頂点に近い位置にいるのは中島翔哉だ。

 中島がアル・ドゥハイル(カタール)から移籍したポルトは、ポルトガルのビッグクラブであり、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)でも強豪の一つだ。ブラジルをはじめ各国の有望な若手を獲得して、数年後にはイングランドやスペインのクラブへ移籍させる、“中間業者的”な立ち位置のクラブでもある。国内リーグでは常に優勝を争い、CLでも上位に進出。移籍ビジネスでも儲けてチーム力も落とさない。

 中島がポルティモネンセから直接ポルトへ移籍しなかった理由はよく分からないが、カタールのクラブでワンクッション置いたのは既定路線だったように思える。ともあれ、少しだけ回り道はしたものの、ヨーロッパでも最も品揃えのいいショーケースに並べられることになったわけだ。ここから上は、もうレアル、バルサ、マンチェスター・シティ、リバプール、ユベントスなどヨーロッパでも最上位のメガクラブになる。

 久保や安部と違って、今月23日に25歳の誕生日を迎える中島にあまり時間はない。1シーズンないし2シーズンの間に答えが出るだろう。25歳を過ぎた選手に将来性は期待しないので、次に移籍するなら即戦力としてだ。背番号10も与えられ、ポルトでは先発で起用されるはず。猶予期間のある久保や安部と違って、中島は今季が勝負になる。

90分間の5分だけ輝く選手では、ポルトの選手としてはやっていけない

 ポルトは伝統的に手堅いイメージがある。現在のセルジオ・コンセイソン監督も、攻守にハードワークを要求するタイプのようだ。中島はヤシン・ブラヒミ(アル・ラーヤン)の後釜として左サイドでプレーするはずだが、持ち前のドリブル突破など攻撃力が期待される一方で、守備もしっかりやれるかどうかがポイントになるだろう。

 ポルトガルリーグはポルト、ベンフィカ、スポルティングCPの3大クラブとその他の格差が大きいので、国内リーグに関して守備力はそれほど問われないかもしれない。しかし、優勝を争うライバルとの重要な試合やヨーロッパのカップ戦では守備的な展開も想定される。90分間の5分だけ輝く選手では、ポルトの選手としてはやっていけない。

 中島はボールを持てば“マジシャン”だ。ただ、それで守備を免除されるのはリオネル・メッシ(バルセロナ)やクリスティアーノ・ロナウド(ユベントス)のような年間40得点も叩き出す特例だけ。中島が世界のスターになれるかどうかは、ポルトでのあと数年にかかっている。(西部謙司 / Kenji Nishibe)