製造業の自動車産業において、日本のトヨタ自動車は60年ほどかけて「トヨタかんばん方式」を作り上げてきた。その生産方式は劇的な資金量削減を成し遂げ、VW・フォード・GMなどと続いてきた量産方式に革命をもたらした。現在、製造業で量産品を製造販売するメーカーにおいて、トヨタ方式「多種少量生産」を基本としていない企業は生き残れなくなった。

【前回は】【投資の真髄:トヨタ生産方式(7)】新日鉄シャーリング工場との工程結合

 それほど「資金効率」の高い生産方式なのだが、その効果によって「資金量が劇的に減っている」ことを認識できている経済学者は、私が知る限り存在していない。企業経営者でもかなり少数だ。まして、物流の「コンビニ」がこの資金量の減少効果で成り立っていることを認識している人はまれだ。そして、この「トヨタ生産方式」を物流に応用した考え方が「提案型販売」なのだ。

 物流では「製造機能」がない分、この方式で「資金効率を上げる幅」は少なくなる。サービス業では在庫品がない分、この方式では資金量を減らす幅がさらに狭くなるのだ。しかし、人件費の問題で効果が出る。このように、製造業では「トヨタ生産方式」によって最大数千倍の資金効率向上が見込めるが、物流では数倍〜数十倍、サービス業では数倍と見込んでおくのが正解であろう。

■「待ちの姿勢」で、資金効率が高い「コンビニ方式」

 コンビニの商品の品ぞろえはスーパーに似通っている。これは結果論だが、スーパーに比べコンビニの店舗面積は大変狭い。そして、「商圏」もスーパーに比べてコンビニはかなり狭い。それでも「定価販売」で成り立ってきた。これは、「ジャストインタイム」をコンビニが実現しているからだ。消費者が「欲しい物を、欲しい時に、欲しい値段」でコンビニは商品を揃えているのだ。

 コンビニの商品仕入れは時間単位だ。つまり、時間帯で品ぞろえが違うのだ。そのおかげで、スーパーに比較して狭い売り場面積を補っているとも言える。また、「狭い売り場面積を時間で衣替えして、別の商売をしている」とも言える。コンビニは時間ごとに品ぞろえが替わるが、スーパーはコンビニほどの変化はない。

 さらに、社会のインフラとしてのコンビニの機能は「近所の雑貨屋さん」であり、周囲200m〜500m範囲の各家庭の在庫品を共同で保管しているようなものだ。そのおかげで各家庭の在庫品は少なくて済み、その在庫分の資金でオンラインゲームをするなど、余裕が出来た資金を他の消費に振り向けることが出来ているのだ。資金を家庭内に眠らせることなく消費を促す社会システムでもある。

 だがコンビニンの商売の姿勢は、基本的に「待ちの姿勢」にとどまっている。「お客様が来店してくれるのを待っている」と言える。