アイドルにとって、“成功”とはなんだろうか。
その一つに、「有名な会場でライブを開く」というものがある。
たとえば、武道館。
事実、AKB48から始まったアイドルブーム以降、武道館での単独コンサート開催を目標に掲げているアイドルグループは少なくない。だが、実際にその地に立てたアイドルは、AKB48やももいろクローバーZなど、超有名グループを含んでも、実は30グループに満たない。
つまり、“夢を達成できたアイドル”は、ほんの一部に過ぎないのだ。
◆書類審査で落ち続けた少女がアイドルに
しかし、それでもアイドルを目指す。そんな少女たちが絶えない。
秋元康プロデュースによる、「ラストアイドル」(テレビ朝日系、2017年8月に放送開始)から生まれたグループ、「シュークリームロケッツ」の小澤愛実(おざわ・あいみ)もそのひとりだ。
©テレビ朝日/テレ朝POST シュークリームロケッツの小澤愛実
同番組挑戦者の多くが、過去にアイドルとしての活動を経験しているが、小澤は数少ない未経験者のひとり。
物心ついた頃からアイドルに憧れ、48グループのライブや握手会にも熱心に通っていた小澤。特に好きだったのは元HKT48の指原莉乃で、彼女がプロデュースするグループ「=LOVE」などのオーディションを受けたものの、毎回書類審査で脱落してしまった過去がある。
それでも彼女は諦めず、『ラストアイドル』へ挑戦し、アイドルとしてのスタートラインに立ったのだった。
彼女はなぜ、アイドルを目指したのか。
アイドルになって、望んでいたものを得ることはできたのかーー。『ラストアイドル』に賭けた少女の、ビフォーアフターに迫る。
◆AKB48の衣装を自前でつくった小学生
2003年4月、神奈川県で生まれた小澤愛実。
幼少期からアイドルが大好きで、物心がついた頃には48グループの大ファンだったという。
©テレビ朝日/テレ朝POST 当時2歳。
「テレビやDVDを見て練習したり、家の前にちょうどいい高さの段差があったので、そこをステージの代わりにして、近所のお友達と毎日歌って踊ったりしていました。いつも『ママ、見て〜』って言って、誰かに見てもらいたがってたみたいです」
©テレビ朝日/テレ朝POST 当時3歳。カメラを向けられるとすぐにポーズを決められる子どもだった
小学校に上がってからも、人前に立つことが大好き。学校の行事でチャンスがあるたびに、AKB48の楽曲を歌って踊っていた。
©テレビ朝日/テレ朝POST 当時4歳。好奇心のかたまりだった
「年に1回、誰でもエントリーができて、劇や歌、手品までなんでもありのパフォーマンス大会があったんです。そこで、友だちと一緒に『ヘビーローテション』を踊ったり、いろんな曲を披露しました。その他にも、たまに自分のクラスだけの発表会もあったので、みんなで『So long!』を踊ったのを覚えています」
歌と踊りだけでなく、アイドルの衣装にも夢中。欲しくてたまらなかったワンピースを作ってもらえなかった、苦い思い出も。
©テレビ朝日/テレ朝POST
「シングル『ギンガムチェック』が出たときには、白と青のワンピースの衣装がすっごくかわいくて、お母さんに『作って、作って!』って駄々をこねた記憶があります。結局、作ってもらえなかったので、青のすずらんテープをたくさん割いて貼って、スカートみたいにしたのを覚えていますね(笑)」
彼女の“ヲタっぷり”は本物だ。小学校の高学年、中学になると、コンサートや握手会にも通うようになる。
©テレビ朝日/テレ朝POST 当時11歳。AKB48にハマり、ライブに足を運ぶほど熱中する
「大好きな指原莉乃さんに会えるようになったのが嬉しかったです。一番思い出に残っているのは、3年前に横浜アリーナでおこなわれた、総選挙の祝賀会コンサートです。指原さんのうちわを持ってアリーナの1列目に立っていたら、本人が近くまで来てくださって、それがDVDに写ってたんです。その映像を、指原さんがソロコンサートで『私のファンだった子が、アイドルになってる』と話して流してくださって。嬉しかったけど、少し恥ずかしかったです(笑)」
◆2ヶ月以上風邪をこじらせ、アイドルを志す
そんな小澤、自分がアイドルになりたいと思ったのは、いつだったのか。
©テレビ朝日/テレ朝POST
「小学校のとき、風邪が長引いて、2ヶ月以上も学校を休んでしまった時期がありました。自分が落ち込んでいる時期に見たアイドルは、いままで以上に輝いて見えて、すごく元気をもらえて。自分もそんなふうに、誰かを元気にできる存在になりたいと確信したんです」
©テレビ朝日/テレ朝POST 当時12歳。AKB48の衣装を自作するほどハマっていた
その決意を持ってから、最初に受けたのはAKB48の16期生のオーディションだった。
「でも、書類審査で落ちてしまって…。なにかを変えなきゃダメだと思って、都内でボイストレーニングを受けたこともありました」
その次に挑戦したオーディションは、大好きな指原莉乃がプロデュースするグループだった。
だが…。
「また書類落ちしてしまったんです。でも、指原さんが『運とタイミングが大事』って言っていたのを思い出して、くよくよせず頑張ろうと思いました」
©テレビ朝日/テレ朝POST
◆「8時59分になっても連絡が来なくって…」
こうして前向きになったタイミングで巡り合ったのが、『ラストアイドル』のオーディションだった。
©テレビ朝日/テレ朝POST
「新聞を見たら、オーディションの告知があったんです。大好きな秋元さんがプロデュースするグループだ!と思ったんですけど、今回は、他のグループとの兼任もOKというルールだったので、周りはレベルが高いだろうし…。今回もダメなんだろうと思ったけど、お母さんが『やってみるしかないでしょ!』って背中を押してくれました」
©テレビ朝日/テレ朝POST 当時14歳。ラストアイドル加入前の貴重な一枚
意を決して挑戦したものの、合格の連絡が待てど暮らせど来ない。今度もまた、書類落ちなのか…。
「いついつの夜9時までにメールが来なかったら落選って注意書きがあったのに、8時59分になっても連絡が来なくって…。もう中学も卒業するタイミングだし、この先どうしようかな…。そんなことを考えてました」
その日は、母親が気を使って買い物に誘ってくれていたという。書類通過後に待ち受けるのは、ダンスの審査。だが、この時点で小澤はレッスン着を持っていなかった。
「どうせダメだと思ってたから、レッスン着は買ってなかったんですけど、お母さんが『今後も使うかもしれないから』って買いに誘ってくれて…」
服を選んでいるそのときだった。
小澤のもとに書類審査通過の電話が入る。
©テレビ朝日/テレ朝POST
「もう、そういうタイミングだったのですごく嬉しかったです。やっと対面で見てもらえるんだって」
こうして小澤は、番組開始当初から暫定メンバーとして番組に登場。バトルでは惜しくも敗退したが、セカンドユニット「シュークリームロケッツ」の一員として、アイドルになる夢がかなったのだった。
◆すずらんテープから、本物の衣装へ
アイドルになり、まず喜びを感じたのは自分だけの衣装が用意されたこと。
©テレビ朝日/テレ朝POST
「昔はすずらんテープで衣装を作ってたので、大好きなオサレカンパニーさんの作った衣装を着れたの嬉しくて、夢のようでした」
さらに、憧れ続けたアイドルたちの楽曲を作り出してきた秋元康の楽曲を歌うことができる。夢が現実になったのだ。
幼稚園の頃には家の前の段差で踊っていた少女が、アイドルになり、ステージに立ち続けている。
©テレビ朝日/テレ朝POST
この眼前に広がる現実を、彼女はどのように捉えているのだろうか。
「しばらくは半信半疑のままでした。でも、見に来てくださる方には笑顔になってもらいたい気持ちは強かったので、毎回全力で臨んでいます」
小学生の頃は、体育館で100人を前に踊っていたが、現在は数千人を前にパフォーマンスをすることも。
特に印象に残っているのは、2018年末にTOKYO DOME CITY HALLでおこなわれた1周年記念コンサート。
©テレビ朝日/テレ朝POST
「たくさんの人がサイリウムを持ってくださる景色が、本当にキレイで思い出に残っています。ステージに立った瞬間、本当はダメなのに、涙が出てきちゃって(笑)。走ってステージに出ていって、『好きだ!』って叫んだ後に、『好きで好きでしょうがない』という曲が始まる予定だったんです。我慢できずに涙が流れちゃったんですけど、カッコいい感じの曲なので、うまく馴染んでよかったです。かわいく笑顔の曲だったら、『なんで泣いてるの?』ってなったと思うので」
©テレビ朝日/テレ朝POST 16歳。指原莉乃に憧れた少女は、念願のアイドルになった
◆握手会に季節感を取り入れる工夫
サイリウムの他にも、自分の名前が入ったうちわやタオルを持ってくれている人が見えるたびに、喜びを噛み締めている。
©テレビ朝日/テレ朝POST
「世の中にこんなたくさんのアイドルさんがいて、ラストアイドルだけでも52人もいるのに、そのなかで自分を応援してくださる方がいて、わざわざグッズも買ってくださって。それが本当に嬉しいんです。毎日、応援してくれる人たちのことを考えていますし、みなさんに喜んでもらえるためにも、もっともっと良い報告ができるように頑張らなきゃって思っています」
握手会など、ファンと触れ合うことのできるイベントでは、その感謝の気持ちを最大限表すための工夫をこらしている。
©テレビ朝日/テレ朝POST
「季節ごとに合わせて、画用紙で作った暖簾をブースにつけたり、画用紙で飾り付けをするんです。春だったら、桜の花びら、夏だったらプールと浮き輪とか…。これからも、もっといろんな工夫をしてみたいと思っています。握手会はぜんぜん緊張しないし、じつは話し出すと止まらないほうなんですよ」
憧れのアイドルになったはいいが、あくまでまだスタートラインに立ったばかり。今後は、どのような目標に向かって進んでいくのか。
「先月、『ミュージックステーション』に出させていただけたのは、本当に嬉しかったです。今後も、自分たちをもっと多くの方に知ってもらって、より大きなステージでコンサートができるように。個人的には、誰からみても歌とダンスのレベルが高いって言われるくらいまで上達するように、頑張っていきたいです」
<撮影:スギゾー、取材・文:森祐介>
©テレビ朝日/テレ朝POST
※小澤愛実(おざわ・あいみ)プロフィール
2003年4月、神奈川県生まれ。指原莉乃に憧れてアイドルを志し、AKB48、=LOVEに続き『ラストアイドル』に挑戦。ユニットバトルでは、プロデューサー・つんく♂の指示で本番の3時間前に髪をバッサリ切ったことも。当時は似合っていると思っていたが、「振り返ってみるときのこちゃんみたい(笑)」とのこと
※リリース情報
6th Single『大人サバイバー』発売中