『日本維新の会』影の司令塔、橋下徹前大阪市長が公明党に猛烈な揺さぶりをかけ始めている。

 大阪ダブル選挙圧勝後、橋下氏はテレビメディアなどで「次期衆院選で公明党現職がいる大阪、兵庫の6選挙区で対抗馬を擁立する準備は整っている」と公明党殲滅を開始する発言をしているのだ。対する公明党は、反対していた維新の大阪都構想で共同歩調を取るのか、それとも維新と全面戦争に突入するのか、最終決断を迫られている。

 それにしても、維新と橋下氏の最終的な狙いは一体どこにあるのか。まずは橋下氏の公明党への強硬策について在阪全国紙記者が背景を解説する。

 「1つには関西での維新の強さがある。大阪ではもはや敵なしで、常勝関西を誇った公明党支援組織である創価学会をしのぐ勢いです。衆院大阪12区補選で自民党は公明党の推薦を受け、安倍首相や小泉進次郎氏を投入し盤石を期したほど」

 維新関係者が続ける。
「大阪市以外でも維新への支持基盤は強くなっている。象徴的なのは堺市です。大阪都構想実現には、政令都市で人口約83万の堺市民の動向は無視できない。ところが、堺市は竹山修身市長が旗振り役で都構想に大反対。その堺市の市議選で維新は18人を擁立し全員が当選した」

 さらに、都構想反対の旗を振ってきた竹山市長に政治資金で2億円を超える重大な疑惑が急浮上。大阪地検特捜部が強制捜査に乗り出すのは「時間の問題」とも囁かれだした。この竹山疑惑を先陣で指弾してきたのが維新だった。

 次に大阪隣接の兵庫県。
「県議選では選挙前から1議席増の9議席を獲得した。神戸市議選も4議席増の10人が当選。市議会では第三勢力に躍進した」(同)

 橋下氏がテレビメディアで発言した「関西の公明党6選挙区に維新候補擁立」はまんざら虚勢を張っているわけではないのだ。

 当然、与党である自民・公明党内からの反論はある。自民党関係者が語る。
「維新の強さは一部の関西圏だけ。全国的に見ればボロ負けしている。しかも、この勢いは大阪万博などで一時的なもの。継続は無理。所詮は地域政党だ」

 しかし、選挙アナリストはこう分析する。
「維新パワーは静かに広がっていますよ。4月7日開票の名古屋市議選がいい例です。維新の支援を受けた河村たかし市長率いる『減税日本』が改選前の8から14議席と第2党に大躍進した。維新との選挙協力があったからです。候補の重複を避け『減税日本』候補者に絞ったんです」

 河村市長は今回の結果で、維新とタッグを組み国政進出の足がかりにしたい腹だ。

 橋下氏側近が明かす。
「維新は大阪ダブル選効果で府議会を抑え、市議会もほぼ過半数に達した。最早、大阪都構想で公明党の協力はさほど重要ではない。次の衆院選でも公明党現職6選挙区に維新が擁立したら、勝つ公算が強い」

 公明党は衆院議席が29のうち選挙区は8。このうち関西の選挙区6議席が崩れると、公明党は全国的に崩壊の危機に瀕する。
「そこに橋下氏が出馬すると注目度は抜群。全国的に維新全体の底上げにもなる」(前出・選挙アナリスト)

 橋下氏側近が補足する。
「6選挙区擁立発言は、大阪都構想と安倍首相の改憲を意識した両睨みですよ」

 橋下氏側近によると、安倍政権は今年中に憲法改正の国会発議を模索しているという。天皇退位、即位やG20などを考慮すれば、発議は夏の参院選後の可能性が高い。衆院は発議に必要な国会議員数3分の2を確保している。問題は参院。夏の参院選では改憲派勢力中、89人が改選だ。

「発議に必要な参院3分の2超えには、ほぼ全員が当選しないといけない。ハードルは高い。公明党は改憲へのアクセルを踏み込めずモタモタ。維新は公明党がグズグズするなら自公政権解消を迫る一方、『後釜は俺たち』の自維政権でけん制する。都構想も公明党が賛成に回れば、スムーズに実現へ漕ぎつける。それが両睨み発言の深層です」(同)