[画像] 全ては『志1つ』!強豪私学を破り聖地へ上り詰める 六甲アイランド【後編】

 前編では兵庫県の21世紀枠推薦校に選ばれた六甲アイランドがどんな環境で練習をしているのか、深浦健太監督にお話を伺いつつ、工夫を凝らした練習を紹介してきた。今回は秋の大会について語ってもらった。

 弱みは強み!創意工夫でレベルアップを図る 六甲アイランド【前編】

ほぼゼロから築き上げ、ベスト8まで勝ち上がる六甲アイランドベスト8の立役者・木下颯太選手

 練習に様々工夫を凝らし秋は8強まで進んだが、新チームスタート時は不安があった。それは、夏の大会を経験した選手がたった1人ということ。つまりほぼゼロからスタートだということだ。 夏の大会でレギュラーだった石田聖弥は、「自分たちは指導者から最弱だと言われました。」と話す。

 それでも秋の県大会でベスト8に入った。この勝因を深浦健太監督はこう分析する。 「相手の野球をさせないようにバッテリーを中心に守備で粘って、ワンチャンスをモノにしてここまで勝ってきました」

主将でキャッチャー・金藏 崚汰選手

 その立役者はエース・木下颯太だった。 木下投手は夏の大会でベンチに入っていなかった選手だが、新チームになってから成長が著しく、県大会2回戦・相生、3回戦・西脇工を完封。木下投手の成長により、「今日は3点ゲーム」などと、相手の打力を見て計算して戦えるようになった。

 リードした捕手の金倉崚汰主将は、「木下のボールがナチュラルに動くのでそれをうまく使えたこと。そしてカーブと横のスライダーを低めに集めながら、打者の反応を見て内と外の投げ分けをしっかりさせた」ことで相手打者を翻弄した。

 木下自身も、「秋の大会で初めて完封ができたので、自信になりました。いろんな面での成長が収穫でした」と大会を振り返るが、一方で反省も口にした。 「ベスト8以上は緩急やコントロール、切れをもっと追求しないと通用しないことがわかりました。」

全ては『志1つ』タイヤを押して足腰を鍛える六甲アイランドの選手たち

 準々決勝では神戸国際大附と対戦。結果は0対11で5回コールド負けだった。 「神戸国際大附戦では自分のリードが通じなかった。やはり上にいけばいくほど、ワンパターンでは抑えられないので、バリエーションを増やすことが春への課題だと思います。」 と投手陣を引っ張る主将の金蔵は語る。

 深浦監督も、「わかっていたことなんですが、相手の方が全て上でした。先制点を初回にとられてリズムが崩れて…相手の野球をさせてしまいました。」

 ただ、サードのスタメンだった木嶋九太は、「こんなに勝てるとは思っていなかったです。」と話すように、新チームスタート時は不安の残るチームがベスト8まで勝ち上がった事実は変わらない。 「『やるからには近畿に行くぞ』と言っていましたが、実力からすればベスト8はないです。」と深浦監督も語る。

 初戦の神港学園、3回戦の西脇工も力は上だが、耐えて耐えて、気づいたら勝っていた。粘り強い野球で昨秋ベスト8に勝ち進んだ六甲アイランド。この実績と練習環境から兵庫県の21世紀枠の推薦校に選ばれるも、近畿地区の推薦校には選ばれなかった。

『志1つ』で勝てることをこれからも証明し続ける!

 実力で甲子園に行くために、春の大会ではバッテリー中心、センターライン中心の守り、そしてワンチャンスをモノにする野球をしていきたいと深浦監督は語る。 エース・木下投手も、「8強以上を掲げて、私学を倒せるようにしたい。」と話す。

 最後に深浦監督にこんな質問をしてみた。 “選手を育てるうえで何を大事にしているのでしょうか” すると返ってきた答えは、「『志1つ』です」と。続けてこう話してくれた。 「野球は強いものが勝つスポーツではなく、試合が終わっていた時に勝っているのが強い、弱者が勝てるスポーツです。だから『志1つ』だと思っています。」

 六甲アイランドは環境だけ見れば弱者なのかもしれない。しかし選手は高校生なので、精神的なことで変わることもある。大事なのはどうやったら選手たちが力を出せるのか。これを大事にしたことで8強まで進めた。

 満足いく練習ができる環境ではない。限られた広さ、時間をいかに有効に活用するのか。考え方1つ、もっといえば志1つで勝てるチームは作れる。昨秋の県大会ベスト8という成績がそれを証明した。 春からはベスト8の強豪として周りから注目される。各校からマークされる中、六甲アイランドが『志1つ』で勝てることを証明し続けた先に、必ず甲子園が待っているはずだ。

(文・編集部)