川口能活と共に日の丸を背負った闘莉王が惜別の手記

 J3のSC相模原に所属する元日本代表GK川口能活は14日に現役引退記者会見に臨んだ。日本代表がベスト16入りした、2010年南アフリカワールドカップでチームメートだったDF田中マルクス闘莉王(J2京都サンガF.C.)は「THE ANSWER」で炎の守護神に惜別の手記を残している。

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 能活さんの現役引退を聞いて、本当に寂しい気持ちになりました。まだやれるでしょう。まだまだできるはず。自分はそう思っています。

 そもそも、自分が語っていいような選手ではありません。選手としても人間としても本当に偉大な存在です。日本代表で一番好きなユニフォームは日本がワールドカップ初出場を決めた炎のユニフォーム。能活さんはキーパーだったので、緑色のユニフォームだったけれど、その姿は今でも忘れていません。能活さんがプレーしている日本代表に憧れて、自分は日本国籍を取得しようと決意しました。

 Jリーグの舞台では何度も対戦しました。フィールドでは挨拶していたけれど、確かオシムさんの時の日本代表で初めてチームメートになりました。

 選手として、どれだけ素晴らしいのかは自分が言うまでもないでしょう。対戦相手としては、試合中に味方にも怒鳴る、熱い人というイメージだった。でも、実際に話してみると、すごくいい人だったので驚きました。尊敬できる人格者ですが、ちょっと天然なところもあります。後輩からいじられても許してくれる懐の広さがありました。そのギャップも最高でした。本当に人間味が溢れていて、誰からも好かれる人でした。

GK出身の名監督が出てきてもいいタイミング

 南アフリカワールドカップに(当時の代表監督だった)岡田(武史)さんは能活さんを精神的な支柱として招集したと語っていましたが、その理由がよく理解できました。今回のロシアワールドカップをテレビで見ていましたが、画面から伝わるベンチの選手の表情と比較して、南アフリカ大会のチームとしての強烈な一体感は、どんなチームとも比較できないほどなのだ、と改めて感じました。

 その理由は能活さん、俊輔さん(磐田MF中村俊輔)、ナラさん(名古屋GK楢崎正剛)らベテランの存在だったと思います。あれだけの実績、経験、数字を残した人間がベンチでチームを支えることは簡単ではありません。嫌な顔一つせずにチームを引っ張ってくれました。ベンチにいても、「自分に出来ることはないのか?」とサポートに徹していたように感じます。自分が同じ立場だったら、試合に出られない悔しさがまず出てしまうと思います。

 それでも、チームの勝利のために、自分たちが子供の頃から憧れていた選手たちがエゴを捨てているのです。あそこまでできる人たちはなかなかいません。ああいう人たちがいなければ、南アフリカ大会開幕直前にボロボロだった日本代表が立ち直ることはなかったでしょう。

 個人的には能活さんやナラさんには、日本トップの指導者になってほしいと願っています。あれだけサッカーを知っている人たちはいないし、GKコーチという枠に収まってほしくありません。そろそろ日本でもGK出身の名監督が出てきてもいいタイミングだと思います。能活さん、本当にお疲れ様でした。

(京都サンガF.C. DF田中マルクス闘莉王)(THE ANSWER編集部)