親が言い続けたことしか続かない(写真:Fast&Slow/PIXTA)

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10歳と6歳の娘がおりますが、子育てでいちばん難しいのが「継続」だと感じています。最初は楽しく取り組んでいても、気がつけば、続かないということが多く、10年の子育てで得た結論は、親が言い続けたことしか続かないという、なんとも親が苦しい状態になっており、親がいつまで導き言い続ければよいのか? 本当にこのままでよいのか? 疑問と悩みを抱えております。
継続させたいのは、電気を点けっぱなしにしないなどの日常の行動から、習い事の練習というようなことまでさまざまな事柄です。
(仮名:作山さん)

親の苦しさは子どもに伝わる

通常、親としてこのように考えるのは自然でしょう。電気をしっかり消す子のほうが助かりますし、習い事を継続的にやる子のほうがしっかり身に付きそうですからね。


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しかし、アプローチが適切でないと、“なんとかやらせよう”と親がせっせと頑張るばかりで子どもにはやらされ感が漂うという、とてもつらい結果に終わります。

もちろん、作山さんのように、親が頑張って継続させるようにしたというケースもあります。10年間言い続けてもやらないということもあるでしょうから、やることが当たり前にさせるまで、それこそ親の努力、努力による賜物でしょう。

しかし、ここで少し考えなければならないことは、それを親として「苦しい」と思っていることです。

苦しさを伴って頑張るというのは、ある意味で“昭和の発想”です。一般に“昭和の人たち”は、(悲壮感・苦しみを伴う)気合い・努力・根性は必要なものと考える傾向があり、そのあり方が正しいと勘違いしている場合が少なくありません。(悲壮感・苦しみを伴う)気合い・努力・根性でもそこそこできるようになったと感じるため、それが正しいと錯覚してしまうのです。その結果、親が頑張って、「期待」を込めて継続させようとすればするほど、「絶望」がやってくる場合があります。

苦しさを伴う努力というものは、すべてとはいいませんが、良い影響を与えない場合があるのですね。つまり、その親の苦しさは確実に子どもに伝わっており、子どもはその苦しさに同情することなく、「継続することは苦しいもの」「子どもを育てることは難しく、苦しいこと」という感情を受け取っているだけだったりするのです。

心が動かなければ、成果も出にくい

そこで、あえて次のことを考えてみましょう。

「継続“させる”ことははたして正しいのか?」

実は「継続できない」が正しい場合もあるのです。親は、習い事を今やっておけば、「あとで得する、いいことがある」と考えているでしょう。しかし、子どもは今の状態が嫌なのであって、その嫌なことを継続させることでさらに嫌いになる場合があるのです。

特に子どもが小さい頃は、たくさんの経験が必要です。たくさんの経験がその後の人生に大きな影響を与えていくからです。そのような経験を筆者は「つまみ食い」経験と呼んでいます。幅広い経験をするためには、飽きっぽい、継続できないことが前提条件になるのです。ですから、継続できないということが必ずしも悪いということではないのです(もちろん、はじめは嫌がっていてもやってみたら楽しくなって伸びていくこともまれにあります)。

このようなことを知らずに親が頑張って継続“させる”と、いったいどうなるでしょうか。

通常は、『継続は力なり』といって、継続することを奨励されます。これは正しいことだと思います。では、継続“させる”ことはどうでしょうか。

継続させようと親が頑張るほど、子どもはその対象から離れていくこともあります。子どもの中には天邪鬼(あまのじゃく)な傾向を持つ子も少なくなく、親が言うこととは逆の行動をとることがあります。

たとえば、

「早くやりなさい」と言われれば、ゆっくりやる
「勉強しなさい」と言われれば、やりたくなくなる
「継続しなさい」と言われれば、やめたくなる

これらに共通することは、すべて「命令形」ということです。命令に対して気持ちよく従う人はごくまれでしょう。これは子どもに限らず、大人もそうです。「今日の夜はカレー作りなさい! 味は中辛にしろ!」とご主人に言われたら喜んで作るはずはありませんね。激辛のカレーを作ってやろうと思うかもしれません。それよりも「今日のカレー、おいしかったよ」と言われれば、次はもっとおいしいカレーを作ろうと思うに違いありません。

人は心を持っています。その心の状態を無視して、目に見える現象を強制的に変えようとしても難しいのではないでしょうか。相手の心の状態を無視して、命令されて作った“表面的”カレーは、気持ちがこもっていないため、もうカレーは作りたくないと思うのではないでしょうか。つまり継続したくなくなるということなのです。

重要なことは、「心の状態→行動」という形を覚えておくことです。

心が動かなければ、人は成果も出しにくいものです。たとえ、強制的に継続できたとしても内容のない形だけの“作業”になるでしょう。“作業”だけであればやってもやらなくても大して効果は変わりません。

でも、「そんなこと言われても、ではどうしたらいいのでしょうか」と思われるでしょう。そこで具体的な方法についてお話ししましょう。

子どもが「利」を感じるようにする

まず初めに次のことを知っておいてください。

一般に、「人は『利』がないと動かない」

人は、「利」がないと動かないのです。非常時以外は(非常時は『義』で動く場合があります)。逆に「利」があると、言われなくても勝手に動きます。この場合の「利」とは、お金のことだけではありません。楽しいということも「利」、上手になったと感じることも「利」なのです。この「利」を感じさせてしまえば、人は動くのです。

では子どもにとっての「利」とは何なのか? その「利」を感じるようにするにはどのようなアプローチをとればいいのか、それを考えてみてください。

たとえば、電気を消すとどれだけ電気代が節約できるかということを記録にして、1カ月間限定イベントを家族でやるとか、習い事に1回いくとそれをポイントにして成長を数字で表してグラフ化していくなど、さまざまな工夫が考えられます。そうすれば子どもが「利」を感じ、やってみたい、続けていきたいと思うようになる可能性が高まり、自然と継続するようになっていきます。

このような「利」を感じるような方法を試しても、もし続かないということであれば、そのこと以外の経験をする機会ができたと考えていくとよいのではないでしょうか。そこから何を読み取るかが、親の役目かもしれません。