エクセルを使いこなしていますか?(写真:ふじよ/PIXTA)

皆さんは普段どんなふうにエクセルを使っていますか? エクセルの用途やレベルは実に幅広いですね。名簿や報告文書作成程度で機能の一部しか使わないという初心者から分析作業やシミュレーションなどエクセルの機能をフル活用する上級者までさまざまな方がいらっしゃるのではないでしょうか。


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私がエクセルのスゴさに気づいたのはコンサルタントになったばかりの頃。業務改善を専門とした人たちの仕事ぶりを目の当たりにしたときです。マウスはいっさい使わず、目にも止まらぬ指使いでショートカットを操る様はまるでピアニストのよう。表に埋め込まれた関数は便利で正確にやりたいことをやってくれる魔法の呪文のようでした。

その後、戦略プロジェクトでは経営陣の方々への緊張感あふれる報告で、おずおずと説明しようとした私に「清水さん、このグラフをみれば一目で何が問題かわかるから説明しなくてもいいですよ。わかりやすくまとめてくれてありがとう」という言葉をかけられ、グラフの雄弁さを実感することになりました。

エクセルの機能は本当にたくさんあり、私もすべてを使っているわけではありませんが、ほんの少しの機能を知り、使うことで仕事が劇的に変わる可能性があります。

私がプロジェクトマネジャーをしていたあるプロジェクトでは、エクセルを使いこなしている人とそうでない人の差は作業時間にすると倍以上あり、ミスの数もまったく違いました。ある日使いこなしている人のパソコンをプロジェクターにつないで投影し、作業しているところをみんなに見せてもらったところ、ほかの人たちはあまりの早業に驚き、次々と技を習得しはじめ、プロジェクト全体の作業時間が大幅に減りました。ほとんど使いこなせていないという方ほど効果が期待できるでしょう。

まずは速くて正確な入力から

実に幅広いエクセルの用途ですが、どんな作業をするとしてもすべては入力から始まります。この入力作業が速く正確にできるようになることがエクセル時短の第一歩。ショートカットキーによる小さい時短の積み重ねは確実に効いてきます。最初は指が慣れないかもしれませんが、気がつけば速く正確に、優雅に打ちこめるようになるはずです。

まずはセルの移動とデータ入力に使えるショートカットキーを覚えましょう。セルを矢印キーで一つひとつ移動しているのは、すべて徒歩で歩いて目的地まで行くようなものです。


次に覚えるのはデータ入力に便利なショートカットキーです。


ほしいものだけ貼り付ける

さらに覚えるべきなのが貼り付けのオプションです。単にすべてを貼り付けるのではなく、数式だけ、計算結果だけ、書式だけ……などさまざまな条件で貼り付けることができます。これを覚えていないと、貼り付けた後でセルの中身や罫線を消したりする手間がかかります。ほしいものだけ貼り付けられるようになりましょう。


日付や曜日、連番のデータなどをすべて都度、入力していませんか? これは遅いだけでなくミスの温床になります。特に英語で月名や曜日名などを入力する場合にはスペルミスが起きやすく、指摘されると恥ずかしいものです。「No1」や「1月」など数字と文字が組み合わさっていてもオートフィルを使えば連続データがラクラク&ミスなく入力できます。


オートフィルは使いこなしている方も多いと思いますが、さらに高性能なのがフラッシュフィル。関数を使ってもいいのですが、姓と名を分ける場合やメールアドレスのドメインだけを抜き出す場合などルールが違うと毎回違う関数を使う必要があります。オートフィルならデータの規則性をエクセルが考えていい感じで賢くやってくれます。


関数は魔法の呪文だと考える


関数というと「よくわからない、苦手……」という声がよく聞こえてきます。わかります。数学みたいでちょっととっつきにくいですよね。でも関数=魔法の呪文と考えてみると何だかワクワク感が湧いてきませんか? この呪文……じゃなくて関数はどれくらいあるかというと何と500近くあります。すべて覚える必要はまったくありませんが、10個覚えるだけでもデータを扱う速度と正確さはまったく違います。

試しに呪文風に関数がやってくれることを紹介してみましょう。

■文字よ!美しく! (PROPER関数)
■売上を四捨五入!(ROUND関数)
■今日の日付と時刻を表示せよ!(DATE関数・TIME関数)
■購入金額に応じて割引率を変えて!(IF関数)
■この条件を満たす人が何人いるか数えよ!(COUNTIF関数)
■去年の平日に何人の来場者がいたか教えて!(SUMIF関数)
■商品の名前を教えて!(VLOOKUP関数)
■エラーだったら消しといて!(IFERROR関数)

いずれもデータの数が少なければ魔法に頼らずともできそうな気もしますね。しかし数式を入力したり、並べ替えて数えてみたり、手入力で何とかなるのはデータが少ないときだけです。ミスをゼロにするチェックの時間もばかになりません。いくつか時短につながる関数をご紹介します。

まずは「この条件を満たす人が何人いるか数えよ!」の呪文、つまりCOUNTIF関数です。これは複数あるデータから条件に一致するデータの数を数えるものです。データを並べ替えたりしなくてすみます。数を数える場合はCOUNTIF、集計したい場合はSUMIFと覚えておきましょう。このように1つ覚えると派生的に覚えられます。


「文字よ!美しく!」の呪文

次は「文字よ!美しく!」の呪文、PROPER関数です。これはデータの文字表記を整えるもの。複数人で入力したりすると大文字、小文字がバラバラになっていることがありますね。そんなときはこの関数の出番です。


日付や時間の入力は、DATE関数・TIME関数。ミスしやすく、表示の形式もいろいろあり、都度変更していてはミスが増えます。現在の日付と時刻を求める関数はもちろん、入力されている日付や時刻のデータから、年月日、時分秒を取り出すことも関数でできます。


また、「納品日の翌月10日を支払日として設定する」などの条件もDATE、YEAR、MONTHという3つの関数を使えば求めることができます。


時短につながるVLOOKUP関数

さらに時短につながる関数としてはVLOOKUP関数があります。たとえば商品コードをセルに入力するだけで、商品名と単価を自動的に表示することができます。手入力が減るので確実に時短と正確さにつながります。


ご紹介したテクニックは自分の時短だけでなく、一緒に働くメンバーと共用することでより加速していきます。ミスも減るので全体の手戻りなどもなくなるでしょう。エクセルをピアニストや魔法使いのように使いこなすことによるエクセル時短で、「今日も速く正確にいい仕事ができた」と満足な一日となることを願っています。