筆者は、午前中と夜〜夜中に集中的に仕事をしている。そして日中は趣味のビリヤードに出かけるというのは日常の生活パターンだ。

その日も午前中にがっつり仕事をこなし、そそくさとビリヤードへ向かった。
翌々日から実家に帰省の予定が入っていることもあり、帰省前に終わらせておきたい仕事も多かったり、荷物の準備があったりと、いつもよりもバタバタしていた。

急ぎ足で最寄り駅に向かい、いざ改札を通ろうとしたそのときだ。
バッグのポケットに入っているハズのスマホがない!
別のポケットを探るも、スマホがない。

筆者は、いつもスマホを仕事するデスク付近に置いている。
外出の際は、自然にスマホをバッグの所定ポケットに入れてから家を出る。
しかしこの日は、昼食のときにリビングで充電していた。そしてラグの奥の方に置いたままだった。

「嗚呼、スマホを家に置き忘れた。」

一旦家に戻ることも考えたが、筆者の家と最寄り駅は、片道約7分。往復で14分。
しかも猛暑の真夏日で、太陽は容赦なく照りつける。
10秒ぐらい考えたのだが、諦める道を選んだ。
暑さに負けたのだ。

「電車に乗るために現金で切符を買う」

何年ぶりだろうか、電車に乗るために現金で切符を買った。
特に近年は、交通系の電子決済のおかげで、運賃を意識したことなく、切符を買った記憶もない。

気を取り直し、路線図を見て金額を確かめた。
そして自販機とにらめっこ。
まごつきながらなんとか切符をゲット。
券売機の操作に慣れていない、もうすっかり忘れているのを改めて思い知る。
イマドキは切符を買う人はほとんどいないため、券売機の後ろで待つ人が行列にならず、焦らずに切符を買えたのが、せめてもの救いだった。

スマホを自宅に忘れた今回のミッションは、
「いつもの場所にビリヤードをしにいって帰ってくる」
これだけだ。

そのときの筆者は、
スマホがなくても、これくらいなら問題はないだろう。
少し落ち込みつつも、楽観的に考えていたのだった。

ビリヤード場に着くと、まずはひとりでボウラードというゲームをする。
ボウリング形式でスコアを付けるゲームだ。
さぁ、いつも使っているスマホアプリでスコアを付けよう…

「あ、スマホがない!」
「手書きでスコアを付けなかればならない」

うぅ、手書きで計算って、かなり面倒だ…。

引き続き、常連さんと相撞き。
相撞きの場合、相手が撞いているときには待ち時間ができる。
今日はゲリラ雷雨があるという話もあったので、雨雲レーダーをチェックしておこう。

「あ、スマホがない!」
「ゲリラ雷雨情報が調べられない」


翌々日、実家の徳島に帰省する。台風がくるみたいだけど移動は大丈夫かなぁ。
あさっての東京と徳島の天気予報をチェックしておこう。

「あ、スマホがない!」
「あさっての天気予報が調べられない」


その後、スタッフからビリヤード関連のおもしろい情報をゲットした。
その件に関して興味がある友だちがいるので、LINEで知らせてあげよう。

「あ、スマホがない!」
「LINEで友だちとやり取りできない」


タイムリーな情報なので、早く知らせたかったのに、激痛。
自宅に戻った後にスマホをチェックしたら、その友だちからその情報が送られてきていた。
筆者の方が先に情報をゲットしていたのに、連絡できなかった。
悔しかったのは言うまでもない。

そういえば、今日連絡が来ることになっていた仕事、どうなっているかな。
メールは来ているのかな?とチェックしようとすると、

「あ、スマホがない!」
「メールがチェックできない」


ちょっとしたチェックや確認はビリヤードをしながらでもできる。
いつもは家に帰る前に、ささっとタスクを処理、解決しておくのだが、それができない。
こうしたタイムロスやタスクの後回しは、ボディブローのように、そのあとの負荷としてダメージになっていくのだ。

そんな不便さを感じつつも、ビリヤードは楽しめて終わった。さぁ支払い。

「あ、スマホがない!」
「Edyで支払いできない」


筆者は、ビリヤードの料金は、普段いつもEdyで支払っているのだ。
このため、私が「上がりまーす」というと、スタッフは金額を計算してEdyでの支払いを準備してくれる。
しかし、「今日はスマホ忘れたので現金で払います!」
と前置きして、現金でお支払い。

さてここで筆者は、いつも帰る前に、必ず家人に帰るコールをしている。
「○○買ってきて」とか、
「今日はどこか食べに行かない?」
など、ちょっとした予定の変更を相談できるからだ。

「あ、スマホがない!」
「帰るコールできない」


特にその日は、外で食事する気分だったので、困った。
苦肉の策で、お店の固定電話を借りて家人のスマホに電話した。
救いだったのは、家人のスマホの電話番号を暗記していたことだ。
家に固定電話はあるのだが、ほぼ営業電話しかかかってこないため、普段出ないことが多い。スマホの電話番号を覚えてなかったら連絡できなかった。
昨今は、普段スマホで電話するので、相手の電話番号を覚えてないという人も多い。
ちょっとだけ、電話番号を覚えていた自分を褒めてあげたい。

やっと連絡もとれて、家の近所のインド料理屋さんで待ち合わせることに。
筆者が家人に
「スマホ、絶対持ってきてね」
と念を押したのは言うまでもない。

そしてビリヤード場を出て、電車で移動。
もちろん帰りも切符を現金で買った。

電車に乗るといつもチェックするWebサイトがあるので、チェックしようとしたら

「あ、スマホがない!」
「Webが見られない」

もう何度もスマホがないことを思い知らされているのだが、習慣とは恐ろしい。
ほぼ無意識にスマホを利用しようとしてしまうのだ。

さらに、今日は現金の支払いを多くしたので、忘れないうちにマネーフォワードに出金を入力しておこうとすると。

「あ、スマホがない!」
「家計簿が付けられない」


筆者は昨年、家計簿をパソコン用ソフトからクラウドに移行したのだ。
スマホでその場で現金の利用を記録できるので、非常に快適なので活用している。
しかしスマホを忘れたらパソコンのある家に帰るまで入力できないのだ。

料理屋さんには筆者の方が先に着いた。
家人を待つ間、スマホで…。

「嗚呼、スマホがないんだった!」

もう、ここまで来れば、もはやコントのようだった。
自分でもおかしくなって笑ってしまった。

スマホを忘れたことでこんなに強烈にストレスを感じるなんて、思ってもみなかった。
たかだか数時間だし、初めて場所にいくわけでもなく、あちこち移動するわけでもなかったのに。

一番ショックだったのは、
スマホを忘れていることを頭では理解しているはずなのに、つい手が動いて、使おうとしてしまうことだ。

たった数時間の間に、何度も何度も再認識させられたことだ。
それだけ自分が、無意識のうちにスマホを生活で使っている、依存していることを思い知った。

お店で家人からスマホを受け取り、
「これでやっとストレスから解放される」
頬ずりしたくなるくらい、スマホがいとおしく見えた。

数年前にも一度携帯し忘れたことがあった。
しかし当時は、これほどまでのスマホ喪失感、不便さを感じなかった。

スマホをより活用するようになり、依存度が高くなってきているのは確かだろう。
筆者は、スマホでゲームなどを楽しんではいない。
普通に毎日の日常生活で使っているだけである。

つまり、現在のスマホは、それだけ
・日常生活で利用している
・生活で便利なサービスや機能が増えている
・無意識に使う習慣が染みついている
など、リアルに、なくてはならない存在になっている。
そう痛感した。

みなさんも、スマホの携帯し忘れには十分注意しよう。
筆者もかなり懲りたので、
「出かける前には必ずチェック!」
を徹底しようと思う。


内藤由美