考えている間に、気持ちを伝えるタイミングを逃してしまうのはもったいない!(写真:Weekend Images Inc./iStock)

2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を前に、英語を話せるようになりたいと考える人は増えているが、参考書で英文法を勉強したり、フレーズ集の表現を覚えていてもなかなか手応えを感じられずにいる人も多いのではないだろうか。
「フレーズ集での学習に行き詰まったり、物足りなさを感じてきたら、フレーズの外にある言葉たちや、同じ場面でのさまざまな伝え方の違いに注目してみてはどうでしょうか。さっそく使えて、会話が弾む表現が思いのほかたくさん見つかるものです」
そう語るのは英語Twitterで人気No.1の「今日のタメ口英語」を運営し、『今すぐ使えて、会話がはずむ 今日のタメ口英語』の著書のあるKazumaさん。
Kazumaさんは10代のある日に思い立ち、単身渡米。現地でできた友人宅に泊まりながら生活を続けるうちに、「教科書からだけ学んでいては一生自然な英語は身に付かない」と痛感。独学での英会話習得を始め、真に使える英語とその勉強法について、長年考えてきました。

たった2、3語でいろんな機微を表現する方法

ふとした瞬間の、感情を伝える言い回しほどその場になると意外と口から出てこないものですよね。そして考えている間にタイミングを逃すという。そんなとき、たった2、3語でいろんな機微を表現する方法ってけっこうあるんです。

たとえば、話し始めの前置きや、内容を思い出そうするときに出る日本語の「えーっと」に近い表現 ”well” を、なにか聞かれたときに、”w…well” と怪訝に返すことで、「言いたくない、聞かないでくれ」という雰囲気を出すこともできます。また、

ここでタバコいいですか?(Do you mind if I smoke here?)のように、比較的丁寧な質問に使われるとされるこの表現も、いら立ちを込めて”Do you mind?” とだけ言えば、「やめてくれない?」という意味を持って気持ちを伝えることもできるんです。”Stop it” 「やめて」 よりも皮肉めいている、とまでは言いませんが、人間くさい、より日常的な空気が感じられます。

日頃よく使うHow are you?。それへの返事も、毎日使うものだからこそ日によっては内容を変えて、ときには最近の自分のニュースを一緒に伝えると、出会いからの会話も弾みます。

教科書であいさつを習うときには、下記みたいな形が多いと思います。

How are you?(調子はどうですか?)

I’m fine, thank you and you?(調子いいよ、ありがとう。あなたは?)

これが自然でないとか、実際には使わないとか、そういうことが言いたいわけじゃありません。やや堅苦しい形式ばった表現ではあるものの、意味は100%伝わりますし、失礼さもまったくありませんしね。ましてこちらは外国語を使ってるんです。「コイツはなにを言っちゃってるんだろう」なんていうふうに思われることはもちろんないですから。

ただ、そうしたことを抜きに、普段の生活の中で、友人や同僚に会ったときに自然と出てくるやり取りを思い浮かべて、その状況に合った言い回しを学ぶのは楽しいし、現実味もあるので記憶に残りやすく、なおかつ英語話者の友人がいれば気さくなやり取りに即使えますよね。

いつものあいさつなら、こんな感じで

毎日会うような相手への、いつものあいさつならこのぐらいでしょう。

最近調子どう?
How’s things?

普通普通。
I’m OK.

大変な時期であれば冗談半分でこんなふうに答えたり。

なんとかやってるよ。
I’m hanging in there.

いちど文章が終わっているので、文型を気にせず理由を続けることもできます。

なんとかやってるよ……このところかなり忙しくて。
I’m hanging in there…It’s been pretty hectic.

それにこんな形も。日本語でもありますよね。

調子どう?
How are you?


よう、元気?
Hey, Mike. How are you?

「元気?」って聞かれて、「元気だよ、ありがとう。君は元気?」じゃなく「よう田中。おー元気か?」だけ返すのと同じです。

こういうものに触れていくにつれて英語との距離感がどんどん縮まっていきますし、なかなか忘れず、使ってみたいとも感じるようになれると思うんです。

聞き返すのにも、ちょっとした使い分けができると話すほうも会話を続けやすくなりますよね。

ほんとう? Really?

そうなの? Is that so?

ありえる Could be.

ある意味正しい In a way you’re right.

うん、たとえば〜とかね Yeah, like 〜.

でしょ? Right?

〜ってことでしょ? You mean 〜 right?

ちなみにあいづちの回数は日本語ほど多くないので、相手と同じぐらいのタイミングで打つといいですよ。

おいしいものを食べたときには、It’s deliciousに限らず

とろける Melty.

とろとろ Thick.

ふわふわ Fluffy.

などなど、普段、自分だったら日本語で何て言っているだろうと考えて、それに当たる表現を探していくと、英語が勉強ではなく言葉として頭に入ってくるようになります。

自分なりのフレーズをストックしていく

もちろん普段使っている日本語すべてを自力で英文に直すのは難しいでしょうから、構文集からよい例文を見つけて、単語を入れ替えてみたりするのがおすすめです。

1用法につき数フレーズ例文が載っている書籍で、同じ用法で自分なりのフレーズが浮かんだら、ページのどこか空白に書き足しておくのがいいと思います。全構文やる必要もないですから気の向くまま、思いついたときにメモるぐらいです。

趣味を楽しみながらだったら、洋画でも海外ドラマでも洋楽(※文章として成り立っていないこともある)でも、和訳も併せて、日常使えそうなお気に入りの言葉やフレーズを、意味や構成をできるだけ調べて理解して、自分の周りに置き換えて英文を作ってみる。出来上がった英文を音読練習、実践してみる。これなら息抜きと基礎理解、内容によっては新しい知識の獲得までも、バランスよく学習に取り入れられます。

ドラマなどには、1文字も違わずそのまま使えたり、単語を入れ替えるだけで広く応用の利く表現がたくさんありますしね。音読は必須なので早送り早戻しのできる、音声と文章がセットのものを使いましょう。

僕自身も構文を身に付けたり単語の意味を調べたりと、基本的な学習はもちろんしましたが、そういうときでも、読んだままに「"この構文はこの場面で使える"と覚える」という受け身だけでなく、「"自分の生活のどの場面で使えるか"を考える」という能動的な姿勢が強く、それがやる気の秘訣でもあったし、今の僕が持つ「英語の解釈の仕方」の土台を作ったとも思います。

経験としても言えるのですが、実生活に当てはめてみて、和訳も自分でしっくりする形に直すと、すんなり入ってくるし、記憶にも残りやすいと思います。

たとえばですが、too 〜 to 〜 は

そのスープは熱すぎたので飲めなかった
The soup was too hot to eat.

のような例が多いと思います。

だんだん口グセの種類を増やしていけばいい

こういうものは「構文を学ぶため」に単語は簡単にしつつ、そのうえで日常使いそうな表現で説明することで、なじめるようによく考えられていると思います。ただ「スープが熱すぎて」だと誰にも当てはまるようにしすぎていて、個人的に見るとまだ味気ない、実感が薄いなと。そこで、こう置き換えてみたりするわけです。

朝起きるのダルすぎ
(I'm) Too depressed to get up in the morning.

例文を参考にオリジナルの言い回しを集めていくと「定型文をつないだ」みたいな感覚がなくなって自分の言葉として定着していくようになります。日本語でも口グセがあったり、気がつくと同じ言葉ばかり使っていたりしますよね。英語でもそうなればいいんです。そしてだんだん口グセの種類を増やしていけばいい。


構文集って受験のイメージが強かったり、その受験英語にも登場する高度な単語のせいでとっつきにくくなっていて、しかもいざ会話となると覚えたはずの構文が言えないから、身に付いてる実感が湧きません。

「あんなのテストのためのもので実際は意味ない」なんて思うかもしれませんが、実はものすごく有意義で、「理解している構文を」「実感を持って」「音読練習する」ことで口から出てくるようになりますし、1構文で1パターン自然に言えるようになったら単語を入れ替えた応用もできるようになってきます。上手に利用すれば表現の幅がとっても広がるんです。

参考を基にして、自分の定番フレーズを少しずつ増やしていく、ひとつのおすすめ練習法です。

そしてそんなお手伝いになればと、「今日のタメ口英語」では実際によく使われる言い回しや、ふとした一言たちを紹介しているので、お気に入りを探してみてください。