外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2018年4月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。

○【ユーロ/円 4月の推移】

4月のユーロ/円相場は129.980〜133.480円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約0.8%の小幅な上昇(ユーロ高・円安)となった。2月鉱工業生産や3月消費者物価指数など、ユーロ圏の経済指標に冴えない結果が目立っており、欧州中銀(ECB)による早期の量的緩和(QE)終了期待は萎みがちだ。それでも、米中貿易戦争への過度な懸念やシリアおよび北朝鮮の地政学リスクが後退する中、円安が進んだため、ユーロ/円は小幅に上昇した。なお、4月のユーロは円に対して上昇したが、米ドルに対して下落。ポンドや豪ドルに対しては、ほぼ横ばい圏で取引を終えている。相手によってマチマチの動きであり、決め手を欠く相場展開であった。

○【ユーロ/円 5月の見通し】

4月のユーロ相場は、相手の通貨によってまちまちの動きであった。これまで、ユーロの買い材料として強く意識されてきた欧州中銀(ECB)の金融政策正常化観測は、消滅こそしていないものの、ユーロ圏の景気が足踏みし始めた事でやや後退気味だ。5月のユーロ圏主要経済指標をチェックしたいところだろう。中でも、2日の1-3月期ユーロ圏GDP・速報値や3日の4月ユーロ圏消費者物価指数、4月の独およびユーロ圏製造業PMI(23日)などは注目しておきたい。仮に、冴えない結果が目立つようなら、シカゴ通貨先物市場における投機筋の買い越し額が依然として大きい点から見ても、ユーロが全面的に上昇する事は考えにくくなる。また、5月のユーロ/円は、円安の継続性もカギを握りそうだ。世界的な貿易摩擦問題や、北朝鮮問題の行方などに加え、日本の政局動向が市場センチメントにどう影響するかが重要だろう。

○執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)

株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya