今回のビジネス女子マナーは、広告会社勤務の工藤いくみさん(仮名・29歳)からの相談です。

「職場の上司についての相談です。年は私より10歳ほど上で妻子持ちなんですが、カッコよくて魅力的な人です。仕事もできるし、ほかの部下からも慕われています。すごくフランクな人で、部署内などで飲みに行ったり、仕事の相談を兼ねて2人でランチをしたこともあります。

ある日、残業後に1杯ということになり、その上司と2人で飲みに行ったんです。そしたら、好きだと言われてしまいました。驚いたけど飲みの席だったし、“私も好きです!”と返したら、“じゃあ付き会っちゃう?”と言われてしまい……。冗談っぽい言い方だったので、その場は笑ってごまかしましたけど、これって誘われていますよね。

その上司に対して、恋愛感情があるかどうかというと、好きかもしれません。でも、不倫なんて怖くてできません。とはいえ、今後一切無視するという気持ちにもなれず……。ずるいのかもしれませんが、今後もうまくやっていきたいんです。無理でしょうか。今もやんわり断っているのですが地味にしつこいし、このままのらりくらりしていると、逆切れされて仕事から外されそうでこわいです……」

慕っていた既婚上司からのお誘い。アラサー女子にとってはありがちで、不幸極まりない状況です。大嫌いな相手であれば声を大にして「パワハラ!」と非難して一生関わらなければいいという考えもできますが、「仕事上はうまくやっていきたい」場合、本当に困ってしまいます。こういうとき、どうしたらいいのでしょうか。鈴木真理子さんに聞いてみましょう。

☆☆☆

上司に恋心を抱いてしまう……

相談者さんの上司は、社内での仕事の評価が高い人なのでしょう。そういう人に可愛がられれば、学ぶべきことも多いでしょうし、ご自身のキャリアアップにも有利だと考えることもありますよね。実際、「誰につくか」で社内の人事が変わるということもありますし。

もしくは、たとえ部下がミスをしても「上司の私の責任だ」など、男気があって潔い人かもしれません。 信頼が恋愛感情に変わるということは、男女ともによくあることです。ずっと同じプロジェクトで寝食を共にしているうちに、仲間意識が恋心に変わっていって……という話も、珍しくはありません。相談者さんの場合も、一緒に仕事をしていたら、ある時から恋心に変わったみたい……という状況といえそうです。

でも、相談者さんがその上司を好きになった理由にはもうひとつ、他人のもの、つまり奥さんがいるからということはありませんか?

「妻子持ちの男性は、余裕があって、女性の気持ちを分かってくれる」と言っていた若手の女性がいました。
もちろん既婚独身の違いで十把一絡げに言えることではありませんが、落ち着きを感じさせる既婚者はいるようです。

さらに、手に入らないものほど欲しくなる人というのもいますね。略奪愛でしょうか。

上司に誘われてしまう女子社員とは……

あなた自身の問題を挙げるなら、隙がありそうです。
仕事だからという理由で、自分の若さや可愛らしさをアピールしていませんでしたか?上司に甘えたことはなかったでしょうか。「アラサーは若くない」という人もいますが、10歳年上の人から見たら、十分若く、フレッシュです。思い返してみてください、その上司に対して、女、女を意識させる出来事はなかったでしょうか。

今後もうまくやっていきたいのであれば、男女の関係ではなく、上司と部下の関係でいましょう。また、本当にその上司のことが好きならば、彼を出世させる“企業あげまん”をめざしてください。

部下と不倫したとなると、彼は仕事から干され、家庭は壊れ……と、リスクが高いです。相談者さんにとって、彼の魅力は「仕事ができること」なんですよね。あなたと関係を深めることは、あなたが彼に求めている一番の魅力が消えるリスクがあるということを肝に銘じてください。

とはいえ、急に態度を膠着させると、上司も不思議に思うでしょう。彼の腹の底がどうなっているのかは想像するしかありませんが、相談者さんの言うように、自分の味方じゃないのか?と訝しく感じたとたん、敵に回るのではないかと察して攻撃してくるタイプの男性もいます。

そのままやんわり断り続けて

少しずつ距離を置くように心がけてみてください。まずは、2人で飲みに行ったりはしないことです。また、「もうちょっと押したら付き合えそう」な雰囲気も出さないこと。「やんわり断る」は正しい方法ですが、それが、駆け引きのように思われてしまえば、意味がありません。むしろ、上司は恋のゲームだと思って盛り上がってしまうでしょう。

相談者さんの年齢から計算するに、上司は40歳前後ということですよね。家族があって仕事ができるその世代の男性であれば、面倒な不倫にうつつを抜かしている時間はさほどありません。しばらく断っていれば、あなたを口説いている時間の無駄を感じはじめるでしょう。それまで、色気を出さないことです。

どんなに魅力的で仕事ができる上司でも、部下を困らせる上司はダメ上司!



■賢人のまとめ
「社内不倫はしたくない」という気持ちは大正解。それを貫いてください。興味本位で手を出さないことです。また、「彼に嫌われたら仕事を外されそうだから……」などという理由をつけて付き合うというのも、絶対にやめてください。それは恋愛でもなんでもありません。少しずつ距離をおいていきましょう。その上司も、あなたに隙がないとわかれば、いつまでも口説くことはないはずです。

■プロフィール

女子マナーの賢人 鈴木真理子

三井海上(現・三井住友海上)退職後、“伝える”“話す”“書く”能力を磨き、ビジネスコミュニケーションのインストラクターとして独立。セミナー、企業研修などで3万人以上に指導を行う。著書は『ズルいほど幸せな女になる40のワザ』(宝島社)のほか、近著『仕事のミスが激減する「手帳」「メモ」「ノート」術』(明日香出版社)、『絶対にミスをしない人の仕事のワザ』は7万部を超えるヒットとなる。 

(株)ヴィタミンMサイトhttp://www.vitaminm.jp/