昨シーズンプロ野球中継がいちばん多かったテレビ局はどこだったのでしょうか(写真:gootaro / PIXTA)

【2月26日15時13分追記】記事初出時、テレビ埼玉と千葉テレビが中継したビジター放映回数をテレビ埼玉0回、千葉テレビ2回と表記していました。しかし、正しくは4回、3回でしたので本文中の記述とランキング表を訂正します。

早くもオープン戦や一部の地方開催ゲームのチケット販売が始まったプロ野球。巨人戦の全国放送が激減しただけで、今も在京以外の球団本拠地ではプロ野球中継は数字がとれる重要なコンテンツだ。

球団にとっても、ホームゲームの中継は放映権料が入り、ビジターゲームの中継も、放映権料こそ球団には入らないが、露出頻度が上昇し、ファン層の拡大につながる。

そこで、2017年シーズン、地上波の各テレビ局がどのくらい中継したか、言い換えると、各球団はどのくらい放送してもらえたのかを集計してみた。有料のCS、アンテナ設置が必要なBSは除外、地上波のみに絞り、対象は生中継のみとし、録画放送は除外した。全国放送されたゲームは、対戦球団双方の地元で放送されたことになるので、ホーム球団ではホームゲームの中継回数に、ビジター球団ではビジターゲームの中継回数にカウントした。また、同一ゲームを複数の放送局で放送した場合はダブルカウントした。

東京MXがソフトバンク戦63試合を中継

球団別ではのべ161回の福岡ソフトバンクホークスが2位の阪神タイガースを振り切って首位を獲得。最大の要因は、独立局の東京MXテレビが、東京ローカルでホームゲーム63試合を放送していることにある。

パ・リーグ6球団は球団自身が実況、解説付きの基本映像を、外部の技術会社に委託して製作し、中継をするテレビ局に販売している。テレビ局側は別途実況、解説、カメラを用意し、買い取った映像とミックスして番組に仕上げている。このため、パ・リーグ6球団の中継の最後に流れるテロップでは、製作著作が球団と放送局の連名になっている。

ホークス球団は地元の九州東通に基本映像の製作を委託しており、大型の中継車を持っていないMXテレビは、同じ九州東通にMXテレビ用の番組製作を委託。番組はソフトバンクの通信回線を使って東京・麹町の本社に送ってもらい、放送している。

東京MXテレビは1998年から年間20試合前後のペースで、神戸の独立系テレビ局・サンテレビから番組を買う形でタイガース戦を中継していたが、需要の変化で2005年頃から縮小。代わって2007年から始めたのがホークス戦の中継だ。きっかけは東京でファン層を拡大したいホークス球団からのオファーである。

東京MXテレビの分を差し引くと、ホークスの中継回数はのべ98回。広島東洋カープに並ぶ回数で、ホームゲームの中継は地元のキー局系5局が分け合い、ビジター中継はTVQ九州放送が13回と健闘している。


タイガースはサンテレビの独壇場

2位のタイガースは、ホームゲームは原則、水曜と日曜が朝日放送の独占枠。このため、朝日放送と、朝日放送の放送が終了した後、ゲーム終了までリレー中継するサンテレビの2局が突出している。ビジター中継は大型中継車で北海道から九州まで、タイガースを追いかけるサンテレビの独壇場だ。

3位の北海道日本ハムファイターズはホーム57回、ビジター46回と、ビジターの中継回数もかなり多い。ホームゲームは日本テレビ系の札幌テレビ、テレビ朝日系の北海道テレビ、TBS系の北海道放送が中心だが、ビジターはフジテレビ系の北海道文化放送も含めた4局で分け合っている。

4位の広島東洋カープはホームゲームはキー局系4局で分け合うが、ビジターゲームはフジテレビ系のテレビ新広島が頭一つ抜けている。5位の中日は、親会社の中日新聞の資本が入っている東海テレビ(フジ系)とCBCテレビ(TBS系)がホームゲームの7割強を分け合う。

かつてはプロ野球中継の代名詞だった巨人はわずか27回。このうち21回が日本テレビ。ホームゲーム22回のうち18回が昼間に開催される土曜、日曜の試合。平日のゴールデンタイムに放送されたのは4試合だけだった。ちなみに、全国放送された回数では今も巨人がトップだが、それでもたった11回だ。

ベスト10に独立系が5局ランクイン

次にテレビ局別で見てみると、ベスト10に独立系が5局もランクイン。ベスト3は独立系が独占する形になった。独立系はキー局系列局とは異なる番組製作方針を持っており、地元球団の中継は重要なコンテンツなのだろう。トップは「タイガース命」のサンテレビ。ビジター中継回数の多さが奏功し、東京MXをわずか1回上回った。

横浜DeNAベイスターズはビジター中継がなく、ホーム中継37回のうち33回がテレビ神奈川で、残る4回が球団の前親会社・TBSだ。埼玉西武ライオンズはホーム中継32回のうち28回がテレビ埼玉でビジター中継4回もすべてテレビ埼玉。千葉ロッテマリーンズも31回のうち29回が千葉テレビだ。

独立系は地上波デジタル放送が始まる以前はUHF局と呼ばれていた放送局で、東京、神奈川、千葉、埼玉、栃木、群馬、岐阜、三重、滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山の合計13都府県にしかない。

電波が飛ぶ範囲は半径50km。千葉テレビとテレビ神奈川は神奈川、千葉だけでなく、東京、埼玉の一部でも視聴が可能で、在京キー局による中継がほとんどない首都圏にあって、貴重な存在だ。

三重県の三重テレビは、中日ドラゴンズが地元球団なので、2017年シーズンはドラゴンズのホームゲームを6回、ビジターゲームを5回放送したが、タイガース戦もホーム、ビジター1回ずつ、西武ライオンズ戦もホームゲームを1回中継している。

独立系同士は放送エリアが被らないため、互いに番組を供給しあうことに抵抗がない。昨年のセ・リーグ・クライマックスシリーズファーストステージ第2戦・タイガース対ベイスターズ戦は、兵庫のサンテレビから提供を受けた映像でテレビ神奈川が甲子園のゲームを中継した。系列に縛られない独立系だからこその独自性といえるだろう。