パブリッシャーは、Facebookがニュースフィードの大粛清を行うかもしれないという警告をさんざん受けていた。だが、こうした警告が多くのパブリッシャーの痛みを和らげるのに役立つとは限らない。米DIGIDAYは、この改変によって、誰が勝ち組となり、誰が負け組となるのかを予想するため、複数のパブリッシャーに話を聞いた。

Winners / 勝者たち



大手パブリッシャー:Facebookは、ニュースフィードという場をパブリッシャーに公平に提供してきた。そのおかげで、アップワージー(Upworthy)やバイラルノバ(ViralNova)といった新興メディアは、一夜にして大量のトラフィックを獲得できた。しかし、大手パブリッシャーにとって、Facebookのオーディエンスを失うことはそれほど大きな痛手ではない。理由はひとつ。規模の大きい彼らは、あらゆる場所で大きな存在感をもっているからだ。どのプラットフォームにも展開しているというユビキタス性が、彼らをこうした変化から守っている。

CNNデジタルワールドワイド(CNN Digital Worldwide)の編集責任者メレディス・アートレイ氏は、Facebookがパブリッシャーのコンテンツを優先しない決定を下す前に行われたDIGIDAYポッドキャスト(公開日は1月17日)の収録で、この点について語ってくれた。

「私たちは、Facebookというカゴにすべての卵を盛るようなことはしていない」と、彼女はいう。「こうしたユビキタス性と自社(が所有し、運営するプラットフォーム)へのフォーカスがすべてだ。これなら自分たちでコントロールできる。メディア業界の人たちはみな、Facebookが何かを変えるたびに、それが自分たちのビジネスに影響するのではないかとビクビクしている。だが、そもそも何を期待していたのだろうか。(Facebookは)彼らのプラットフォームであり、彼らはニュースビジネスには携わってはいないのだ」。

Facebookと関係なく、すでに確立されたブランドをもっているパブリッシャーは、それほど悪いことにはならないだろう。彼らのコンテンツは今後もオーガニックにシェアされ、読者のフィードに表示されるからだ。

「CNNとしては、Facebookとの関係が薄くなっても問題はない」と、アートレイ氏はいう。「あのカゴにすべての卵を盛るかどうかは、私たちが決めることだ。自分たちでコントロールできることに取り組むべきだと思う」。

エンターテインメント系パブリッシャーとセレブ:ニュース記者の多くは「パブリッシング」と「ニュース」を混同している。トランプ大統領が過激な発言を繰り返す向こう側には、別の世界が広がっているのだ。Facebookはすでに、同社の重要なメディア戦略であるビデオ配信プラットフォームの「Watch(ウォッチ)」で、ニュースパブリッシャーを不安に陥れている。FacebookがWatchで力を入れているのは、メディアパーソナリティのバー・ボール氏が出演する「ボール・イン・ザ・ファミリー(Ball in the Family)」など、セレブやエンターテインメント関連の番組だ。

「彼らがWatchでセレブの登場しない番組に取り組むことはないだろう」と、あるパブリッシャーの幹部はいう。「『Facebook専業パブリッシャーのみなさんは、パーソナリティに目を向けるように』と、彼らは言っているのだ」。

別のパブリッシャーの幹部によれば、彼らは数カ月間から、「パーソナリティを起用した」動画をもっと増やしてほしいと、Facebookから依頼されているという。同じように、ライフスタイル系やエンターテインメント系のパブリッシャーは、Facebookが重視しているエンゲージメントをより多く獲得することになりそうだ。楽しくて、ユーモアがあり、出演者の個性がみえるコンテンツのほうが、誘拐事件のようなローカルニュース記事より、多くのシェアやコメントを得られる可能性が高い。

「もっとも大きなダメージを被るのは、誰もコメントやシェアをしたがらないような動画や記事を配信しているパブリッシャーだろう」と、あるパブリッシャーの幹部は予測する。

だが、気楽なコンテンツを手がけるパブリッシャーにとって、良い話ばかりではない。セックス関連などのクリックされやすい記事は、Facebookで高いパフォーマンスを上げてきたが、そうした記事をクリックする人たちは、自分がその記事を読んだことを「いいね!」やシェアやコメントで知らせたいとは思わないのが普通だ。今後は、「パーソナルな」コンテンツを投稿してFacebookで成功を収めているパブリッシャーが躍進する可能性がある。

独自のオーディエンスをもつメディアブランド:Facebookはかなり前から膨大な数のオーディエンスを獲得しているが、メディアブランドはこのオーディエンスと関係を深められていない。ニュースフィード上では、パブリッシャーのコンテンツは、フェイクニュース、赤ちゃんの写真、バイラルニュースなどに紛れて表示される。ニュースフィードは、ブランドロイヤルティを構築できる場所でも日常的な利用習慣を形成してもらえる場所でもないのだ。次のデジタルメディアの時代に向けて絶好の位置につけているのは、忠実なフォロワーを急速に増やしているバースツール・スポーツ(Barstool Sports)などのメディア企業だ。Facebookは明日にも去ってしまうかもしれないが、バースツールの熱心なフォロワーは、そのあともバースツールというブランドを愛し、パーソナリティの人たちを追いかけ続けるだろう。

「独自の視点をもち、熱心やユーザーを獲得しているブランドには、問題は起こらないだろう」と、バースツールのCEO、エリカ・ナルディーニ氏はいう。「友人に近い存在になっていればいるほど、問題は少ない」。

メディアプラットフォームとしてのTwitter:多くのパブリッシャーが、Facebookの機能に不満を抱き、Google以外の新たな選択肢が登場してほしいと考えている。Apple Newsへの期待はしぼみ、Snapchatには大いに失望している。だが、Facebookが明らかにニュース記事を減らす方向に舵を切るなか(現実を直視しよう。Facebookには頭痛の種は必要ない)、ニュースにぴったりのプラットフォームが突如として現れた。それはTwitterだ。パブリッシャーはこの1年間、Twitterにより多くの希望を見出すようになっている。ブルームバーグメディア(Bloomberg Media)が新しいライブ動画プラットフォームを立ち上げた場所は、FacebookではなくTwitterだった。

「Twitterはいまや、ニュースメディアプラットフォームとして独自の地位を築いている」と、サイクル・メディア(Cycle Media)のCEO、ジェイソン・ステイン氏はいう。「この分野で活動している企業はほかにない」

Losers / 敗者たち



Facebookのパブリッシャーとの信頼関係:今回の一件は、パブリッシャーがFacebookに振り回されるはじめてのケースではない。長年にわたって、パブリッシャーは絶えず変化を続けるこのプラットフォームで、Facebookの指示に従ってきた。Facebookがシェアを欲しがれば、クリックベイト(釣り記事)と呼ばれるみっともない手を使ってでも、シェアを提供してきた。Facebookがライブ動画を欲しがれば、次々とコンテンツを作り出した。Facebookがフィード内動画を欲しがったときも同じだ。例を挙げればきりがない。

Facebookは、今回の大規模な改変に対するパブリッシャーの苛立ちを鎮めるため、エンゲージメントを獲得している限り問題はないと述べて安心させようとしている。だが、多くのパブリッシャーは、すでにこうした改変を15回は経験している。あるメディアのCEOは、今回の発表のあとにFacebookの担当者から、高いエンゲージメントを得ているので問題はないと説明された。だが、最近になってリーチが目にみえて減少している理由を尋ねても、この担当者は答えられなかったという。Facebookはあまりに規模が大きくなったため、Facebookのなかにいる担当者でさえ実際に何が起こっているのかわかっていないのではないかと、パブリッシャーは疑うようになっている。

「Facebookが、パブリッシャーの人たちにうまく対処しているとは思えない」と、この幹部はいう。「パブリッシャーは腹を立てている。Facebookはあれこれ説明するが、いまでも不透明な点が実に多い。彼らが『エンゲージメント』という言葉を使うときは、フィードからパブリッシャーを追い出そうとしているときだ。いつもこの言葉で取り繕っているにすぎない。それに、彼らがベストプラクティスを提示することはないのだ」。

ニュースフィードに頼り切っていたパブリッシャー:新興のデジタルパブリッシャーやローカルニュースパブリッシャーほど、大きな損害を被るだろう。彼らはかなりの数の参照トラフィックをFacebookから得ていたからだ。調査会社のパセリ(Parse.ly)の共同創設者兼CTOのアンドリュー・モンタレンティ氏はそう指摘する。「Facebookにすべてを注いでいたなら、かなり大きな損害を受けると私は思う」と、モンタレンティ氏は語った。

また、得ていたものが大きいところほど、影響も大きくなる可能性がある。たくさんのフォロワーを抱えたメインページから、多くのリーチを安定的に獲得していたようなパブリッシャーだ。なぜなら、今後は、人々がシェアしたりコメントを残したりするコンテンツが優先的に表示されるようになるからだ。「『そのページに新しい記事を投稿すれば、確実に高いエンゲージメントが得られる』と、彼らは自信ありげに語っていたものだった」と、モンタレンティ氏はいう。少数の人々が長い時間を過ごしたいと思うような、特定の話題にフォーカスしたページが優先的に表示されるようになれば、彼らのリーチは減少するだろう。

フィードを埋め尽くすことばかり考えていたパブリッシャー:テレビコマーシャルを焼き直した動画や「鉛筆の作り方」に関する90秒動画などが、ニュースフィードで優先的に表示されることはもはやないだろう。人々がフィードをスクロールしながら受け身で消費するようなコンテンツは、コメントとシェアという点で本当のエンゲージメントをもたらす可能性が低いからだ。したがって、優先順位を下げられることになる。この数年間、もっぱらこのような手法で大量の「ビュー」を積み上げていたパブリッシャーは、現実に引き戻されることになる。

「私もパブリッシャーにとって非常に困難な時期を経験してきた」と、ステイン氏はいう。「オーガニックなリーチをFacebookに依存するというのは、戦略ではないのだ」。

Brian Morrissey、Jack Marshall、Lucia Moses(原文 / 訳:ガリレオ)