でも、そういった悩みはなかなか日常では顕在化してこないので、メンタルトレーナーに来てもらい、悩みを引き出し、自分で解決できる可能性がある心配事と自分では絶対に解決できないことに分けて整理するんです。県選抜に入っているU-12の女子選手が「敵にイケメンが気になる」と悩んでいたこともありました(笑)。なんでもいいんです、少しでも気になることを引き出す。そういう悩みを引き出してあげると、子どもたちの気持ちが軽くなってサッカーに取り組めるようになります。
岩政 育成にフォーカスしようと思われたのはいつ頃でしたか?
浜田 一昨年くらいです。
岩政 そこに至った経緯は?
浜田 久保建英選手との出会いが大きかったです。彼の成長には、本人の努力はもちろん、ご両親、バルサ、トレーナーの力などいろいろありました。そのなかで、どんなアプローチをすると成長のスピードが上がるのかが見えてきたんです。
ただ、日本サッカーは久保建英選手で終わるわけではありません。彼も引退する時が来ますし、日本サッカーが継続的に成長していくには、どんどん久保選手のような人材が生まれてくるような土壌を作りたいと思いました。土壌を作るには試していかなければいけない。試すために1回1回お金を取っていたら成立しないので、スペイン人コーチが行なう個別トレーニングなどの経費を会社で持つ形で始めました。
岩政 サービスを提供するために、会社として予算を取っていると?
浜田 そうです。バルセロナキャンプやワールドチャレンジ、チームの海外遠征など、会社で事業として行なっている案件から育成予算として一定の費用をプールし、その予算をスペイン人コーチのトレーニングの費用にあてたり、メンタルコーチ招聘の際に、会社の選手育成予算として出します。プロクラブの予算はトップチームからユースチーム、ジュニアユースと下に下がるにつれて下がっていくのが普通です。でも、私は下のほう、育成に予算を付けたほうが良いと思ったので会社として始めました。
岩政 バルサをはじめ、スペインなど欧州の子どもたちをたくさん見られてきたと思いますが、日本との違いは感じますか?
浜田 はい、文化的な部分はかなり感じますね。日本は先生に質問されたら正解を言わなければいけないと思っていて、間違ったら落ち込んでしまう。スペイン人は間違うことを何とも思いません。日本は恥の文化なので仕方ないですが、そうなっているから、なかなかトライができないんです。
岩政 文化は人間のベースの部分ですからね。欧州のやり方を日本に持ち込んでも上手くいかない時もあるのでは?
浜田 あります。 「日本の文化を変えましょう」は相当難しい。国としては永遠に変わらないと思います。ただ、グループやチーム単位なら変えられます。今はその段階です。日本は成功したものをまねる傾向があるので、ダントツに成功するやり方を構築し、それが周りに影響を与えるような状態を作りたいと思っているんです。
岩政 文化の違いは、サッカーにも現われますよね?
浜田 サッカーで言えば、バルサってすごくマニュアル化されているんですよ。それをメソッドと呼んでいるんですが、サイドバックがボールを持ったら、遠いほうのボランチが近寄ってきて近くのボランチが離れる。こういう基本的な動き方を6歳からやっています。でも、サッカーは状況によって変わりますよね。その時は応用が必要になるんですが、バルサの人たちは最終的に答えが一緒になればいいと考えます。つまり、過程は自由なんです。
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