見ず知らずの男女が出会いを求めて一本の電話でつながる――90年代に流行し、一時代を築いたテレクラが今、絶滅の危機に瀕(ひん)している。

かつては男のロマンにあふれていたテレクラは今、どうなっているのか?

■時に大当たりを引くのがテレクラのロマン

日本からテレクラの灯が消えようとしている。

昨年から今年にかけて、都内では渋谷や歌舞伎町など主要繁華街にあったテレクラが続々と閉店。今や都心で営業を続ける店舗は数えるほどだ。

「00年代初頭から出会いを求める女性の多くはネットに流れ、テレクラ利用者は激減しました。さらに条例が厳しくなり、一般女性の供給源だった駅前のポケットティッシュ配布や、電話ボックス内のチラシも廃止。今やテレクラに集まってくる女性はネットを使えない“情弱”か、ものぐさのどちらか。絶滅は時間の問題でしょう」(業界関係者)

2020年の東京五輪に向け、風俗産業への締めつけも厳しくなるなか、もはや役目を終えたかにも見えるテレクラ。だが、ブーム時にそのロマンに魅せられたファンからは、文化としてのテレクラの消失を惜しむ声が少なくない。風俗ライターのブラボー川上氏が言う。

「かつてのテレクラには圧倒的な夢とロマンがありました。見ず知らずの男女が一本の電話でつながり、テレフォンセックスや一夜限りの関係を求める。さらには恋人や夫婦になったり、ビジネスや生涯の友になったなんてハートフルな話もゴロゴロと転がっていた。男たちは己の持てるトーク力のすべてを駆使して女を狩りにいく、最高に面白いツールでした」

85年の風営法改正後に注目され、流行したテレクラは、バブル期に黄金時代を迎えた。当時、テレクラにどっぷり漬かっていたという、風俗ライターのK氏が言う。

「今は金目当ての女ばかりになっちゃったけど、当時は、純粋にヤリたい女が夜な夜なコールしてきて、それを男どもが奪い合った。だまされたり、バケモノだったり、美人局(つつもたせ)だったり、ひどい目にもたくさん遭ったけど、ごくたまに、とんでもない美人とセックスできたこともあった。あのスリルと感動がテレクラの醍醐味(だいごみ)。男も今ほど貧富の差がなかったから、俺の周りでは芸能人も公務員もプータローも、みんなテレクラに夢中だった」

そんなK氏が今でも「あれこそ奇跡体験アンビリバボーだった」と話すのは、約20年前の未亡人との出会いだ。

「都内のテレクラで30代の女と意気投合して会ってみたら、葉月里緒奈みたいな信じられないほどの美女で。思わずガッツポーズしたよ(笑)。それで彼女の家に招待されたんだけど、山の中のドデカいお屋敷で。聞けば旦那が2週間前に死んだばかりだとか。

『私、寂しいんです…』とか言いながら、自宅のリビングで狂ったように何度もセックスして、翌日、帰ろうとしたら『お車代です』って現金10万円までもらった。こんなウソみたいな経験が本当にできた当時のテレクラには、間違いなく男のロマンがあふれてました」

全盛期には都内だけでも100店舗に迫る勢いで増殖。人妻、女子大生など寂しい女性からのコールが24時間鳴り響いていたという。

「毎年5月、6月ぐらいは新たに上京してきた女子大生で入れ食い状態だった。地方から出てきて友達ができないコがコールしてくるんですよ。大学の多い八王子のテレクラなんて、それ目当ての男で連日満員。立川辺りに連れ出しただけで『わー、東京だ!』とか目をキラキラさせてね、

寂しいからガードも緩いし、デニーズ辺りでメシ食べさせたらすぐにヤラせてくれた。知り合いの50歳ぐらいのさえないオッサンが、複数の女子大生と付き合ってるなんて異常な状況が、あの時代はフツーにあった」(前出・K氏)

また、全国どこの町にも存在していたテレクラは、出張族にとっても強い味方だった。

「地方に出張に行くと宿は取らず、その土地のテレクラで女性を調達していました。地方の女性は非日常を求めて電話をかけてくるから、『東京から来た』なんて言うとすぐに釣れた時代でした。メシも地元のうまいところを知ってるし、『今日泊まる場所がない』と言えば、宿と女が一挙に賄えた。僕はテレクラのおかげで、一時は全国20ヵ所ぐらいに“定宿”をつくっていましたね」(40代・出版社営業)

当時はまだ、淫行条例など未成年に対しての法律も緩く、女子高生ら10代の女子とも比較的オープンに出会えることができた。30年前に女子高生だったカスミさん(40代・社長秘書)が回想する。

「休み時間に学校の公衆電話から、女友達と暇つぶしでテレクラにかけることがよくありました。会う約束をして、友達と待ち合わせ場所に行って、どんな男が来るのか遠くから見て笑ってたんです。

でも、テレクラにいる男は話が面白かったり、聞き上手だったりするんで、友達には内緒で、いつの間にか、ひとりでもちょくちょく利用するようになってました(苦笑)。怖い思いをすることはほとんどなかったですね」

★昭和の出会い系“ロマン枠”――さらばテレクラ、黄金伝説&絶滅寸前ルポ【後編】

(取材・文/金町三郎 イラスト/西アズナブル)