ミラノで開催される「ネクストジェネレーション・ATPファイナルズ」では時短フォーマットが適用される。5セットマッチであるものの、1セットは4ゲーム先取 (3-3になった時点でタイブレーク) で、各ゲームでアドバンテージがないことが特徴だ。

このルールについて「テニスの試合を通して意味のある瞬間を増やすことが目的です。ブレークポイント、ゲームポイント、セット後半、タイブレークはより意味のある瞬間であると言えるでしょう」とATPチーフプレイヤーオフィサーのロス・ハッチンスは語っているとATP公式サイトが報じている。

新しいフォーマットでは、勝利に必要なゲーム数は12であり、3セットマッチの場合と変わらない。だが、この短縮フォーマットでは完全に異質の試合が生まれるのだとハッチンスは言う。

5ゲームか6ゲームでセットが変わる可能性があり、試合の流れがより頻繁に変わるようになる。接戦のスコアラインは第5セットに入る時点で4-1、1-4、4-1、2-4のようになっている可能性が非常に高い。また、逆転する機会が限られるため、選手がセットの始まりをより重視するようになるのではと、ハッチンスは指摘している。

「1-1は3-3と同じです。見始めたときに2-2であれば、4-4と同じで、あと2ゲームでセットが終わるということです...セットの始まりが突然に、セットの終わりにうんと近づいたということです」とハッチンスは話した。「そのセットをもり返すのはより難しくなると選手は考えますから、サーブのキープや相手のサービスゲームのブレークにより力を注ぐようになるでしょう」。

ATPツアーのダブルスで採用されているノー・アドバンテージ・ゲームでも、同様に新たな変更点がある。ダブルスではレシーブチームがリターンを行うサイドを決定しなければならない。だが、今回のミラノでは、サーバーがそれを選択することになる。

「ダブルスにおけるディサイディングポイントはレシーブ側の選択で行われ、定着してきました。しかし、この大会のコンセプトを保持する上で、サーバーが選択した場合にどのような展開が見られるか、また、サービスサイドを選ぶことを要求される選手の考え方の変化を見てみるほうがおもしろいだろうと考えました」とハッチンスは話している。

その他の変革も同様に、選手や観客にとってよりエキサイティングな瞬間が生まれることを目指したものになっている。試合前のウォーミングアップの時間も5分と短縮されている。

「選手はコートに出てから可能な限り急いで用意をすることが求められます」と、元世界ランク1位のレイトン・ヒューイット(オーストラリア)は言う。

また、レットのコールもなくなる。サーブがテープに当たってネットを越えればそのサーブはインであり、プレーを続けることになる。

「レットは、『もう一度やろう』と言っているようなものです。実際には何も発生しないため、試合中により興奮や、想定外の付加的な要素を生み出せないかという問題があるのです」とハッチンスは話した。

観客もこれらの瞬間を同様に楽しめるが、これに加えて、コートのサイドで観戦する人は席に再び戻るのにコートチェンジを待たずに、自由に移動することができるようになる(ベースラインの後ろ側での移動には変わらず、制限がある)。

「観客やメディア、テレビ放映など、様々に関わり合うすべての人にとっての、プレー中のおもしろくない瞬間や動きの止まった瞬間を減らすことを目指しています」とハッチンスは言う。

「これらのルールのすべてに対して、特に、レットについては、練習をすることになると思います。選手は足を止めてしまうことにとても慣れているため、すぐに気を緩めてしまう傾向があるでしょう。実際、これに慣れるには数日かかると私は考えていますが、この大会の開催時期が適していると思うのはこのためです。この大会はシーズンの終わりの時期に行われるため、他に開催される大会は多くありません。」と続けた。

試験的なルールで行われる「ネクストジェネレーション・ATPファイナルズ」が今後どのような影響を与えるかも注目だ。

(テニスデイリー編集部)

※写真は「ネクストジェネレーション・ATPファイナルズ」メディアデーでの様子
(Photo by Emilio Andreoli/Getty Images)