お金に苦労せず、幸せに生きていくことを目指す【脱貧困診断】。今回の相談は、佐野淳子さん(仮名・制作会社勤務・31歳)からの質問です。

「31歳会社員です。今勤めている会社を辞めたいと思っています。転職するか、派遣会社に登録するかはまだ迷っています。辞表を提出するにあたって、お給料や待遇面でもっともベストな時期はありますか?」

さっそく森井じゅんさんに聞いてみましょう。

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支給規定を知らないと、もらえるボーナスがパーになることも

会社を辞めるにあたり、お給料や待遇面で有利な時期を知りたいとの事。気になっているのは、ボーナスや退職金についてでしょうか。

賞与、退職金、その他手当は、法律で支給が義務付けられているわけではありません。ただし、賞与、一時金、退職手当等の制度がある場合は、就業規則にその記載があります。

まずは就業規則を確認し、賞与や退職金その他の支給規定を確認してみましょう。

賞与の支給規定は会社により異なり、支給対象者についても「支給日当日に在籍していること」となっていたり「賞与算定期間の最終日に在籍していること」と定められていたりします。

例えば、賞与の支給日が12月10日、「賞与算定期間は4月1日から9月30日まで、支給対象者は支給日当日に在籍していた社員」、と定められていた場合。

もし、10月に退職すれば、たとえ賞与算定期間中の4月から9月はしっかり勤務していたとしても、12月10日に在籍していないため、支給対象者から外れてしまいます。

また、退職金についても、欠勤や休職期間の取り扱いなど会社により異なります。

現在お勤めの会社の就業規則を確認することから始めてください。

雇用契約で支給が定められていた場合にも、そういった手当の支給を受けることができますので、入社時の雇用契約などを確認してみてください。

退職日は有給休暇消化の観点から検討

相談者さんは退職後、転職するか、派遣会社に登録するかをまだ迷っているとのこと。退職までに余裕があり、未消化の有給休暇があるのであれば、有給消化の観点からも退職日を検討したいですね。

有給休暇の買い取りは基本的には違法です。退職時の有給買い取りはできなくはありませんが、会社が応じなければならないものではないので、買い取り希望が通るとは限りません。

有給休暇とは取得しても賃金が支給される休暇のことです。そして有給休暇は退職が決まってからでも消化することができます。

例えば、最終出社日から退職日までの期間を有給消化にあてることができます。例えば有給休暇が20日程度残っていた場合、退職日を10月末とした場合は、9月末を最終出勤日として約1か月間を有給休暇とすることが可能です。

最終出勤日後、有給休暇を消化して退職日を迎えることができればいいですね。ただし、残務や引き継ぎなどで思っていたよりも出勤することが多くなることもあります。ですから、会社とのスケジュールの共有が重要になってくるでしょう。

有給消化のためには、まず有給休暇がどれくらい残っているのか、正しく把握しましょう。そして、会社と最終出勤日や退職日をしっかり話し合い、業務の引継ぎと有給休暇消化のスケジュールを余裕をもって決めてください。

給与の手取りは社会保険料のタイミングで変わる

退職日によって、給与の手取りが変わることがあります。それは社会保険料のタイミングによるものです。

社会保険料は退職日が月の途中か月末かという違いで、社会保険の加入期間が変わり、社会保険料の控除額が変わってきます。
月末退職の場合にはその月までが加入期間となり、月中の退職では前月までが加入期間となります。

そして、控除のタイミングは会社の給与支払日も関係してきます。

例えば、給与が当月払いの場合で、9月29日退職の場合、8月までが現在の保険加入期間となります。そのため、9月末支給の給与からは8月分の保険料1か月分が控除されます。

一方、同様の給与支払いで、9月30日退職の場合、9月までが保険加入期間です。そのため、9月末支給の給与からは8月分9月分と、2か月分の保険料が控除されることになります。具体的には、月給30万円程度でひと月4万2千円程度の保険料ですので、2か月分だと8万5000円弱の控除となります。

また、給与が翌月払いの場合では、月末退職で1か月分の控除、月中退職では最後の給与で社会保険料の控除はありません。手取りがいったん増えて、得した気分になれるかもしれません。

退職後すぐに次の会社に入社し、新しい会社にて同様の社会保険に加入する場合には、給与水準が同じであれば全体としての負担額は変わりません。控除のタイミングの違いだけです。でも、知らずに突然ひと月分の手取りが減ると困ってしまう事もありますよね。給与の支払日や保険料控除のタイミングを確認しておくとよいでしょう。

しかし、給与の水準が変わる場合や、新しい会社で社会保険加入の予定がなく、国民健康保険・国民年金の加入になる場合には、全体としての負担額が変わってきます。

退職日が1日違うだけで保険料の負担額が変わってくるのです。退職後にどのような保険に加入することになるのか、その負担額はどれくらいになるのか。シミュレーションをしてから退職日を決める事も大切です。

退職するときには、冷静に、いただけるお金はきちんといただいた上で円満に去りたい。



■賢人のまとめ
賞与については、まずは会社の就業規約で支給規定を確認すること。同水準の会社にすぐに転職した場合は、手取り額は社会保険のタイミングで変わりますが、負担額は同じ。ただし、給与の水準や、加入する保険が変わると負担額が変わります。その場合は、シミュレーションをしてから退職日を決めるとよいでしょう。

■プロフィール

女子マネーの達人 森井じゅん

1980年生まれ。高校を中退後、大検を取得。レイクランド大学ジャパンキャンパスを経てネバダ州立リノ大学に留学。留学中はカジノの経理部で日常経理を担当。

一女を出産し帰国後、シングルマザーとして子育てをしながら公認会計士資格を取得。平成26年に森井会計事務所を開設し、税務申告業務及びコンサル業務を行なっている。