●減益は計画通りというが……

NTTドコモは27日、2017年度第1四半期の決算を発表した。近年好調な業績を挙げてきた同社だが、今期は前年同期と比べると増収減益となった。本稿では夏モデルでリリースされた新施策「docomo with」の概況や、中期戦略「beyond宣言」の取り組み状況なども明かされた決算説明会の様子をレポートする。

○減益は計画通りというが……

決算説明会にはNTTドコモの吉澤和弘社長が出席。2017年度第1四半期の売り上げは、営業収益が前年同期比+2.5%の1兆1,367億円だったのに対し、営業利益は前年同期比で-7.0%の2,783億円、営業フリーキャッシュフロー(FCF)は-10.1%の2,480億円だった。営業利益をセグメント別に見ると、通信事業は-10.7%の2,414億円だったが、スマートライフ領域は+27.7%の369億円と好調だ。

営業利益の減少要因は、吉澤社長によると、ウルトラパックや子育て応援プログラムといった、ユーザーへの利益還元措置や、設備の減価償却の計上方法が変わったことなどが影響しており、通期ではフラットになるよう調整しているとのことだった。また今回の増収減益も事前の計画で織り込み済みであり、通期では黒字になる見込みであることを強調した。

このほか気になる数字としては、契約数は好調に伸びているものの、解約率が少し上昇している。吉澤社長はこの要因のひとつとして、2年前に発売したタブレットの縛りが消える時期であり、一斉に解約が集中したためであると説明。ドコモとしてはタブレットは好調に推移しており、特に問題はないことを強調した。

このほか、8月には国内最速のLTE回線の下り速度788Mbpsを提供予定であること、夏期の登山シーズンに合わせて富士山山頂で682Mbpsでの通信サービスを提供開始することをアピールした。

●beyond宣言の取り組みは?

続いて吉澤社長は、2017年からの中期戦略2020「beyond宣言」の取り組み状況に触れた。

まず宣言1については、大容量プラン「ウルトラシェアパック30」、基本料金プラン「シンプルプラン」、夏モデルで新設されたプラン「docomo with」などでユーザー還元の強化を行うと共に、「ドコモスマートアイランドプロジェクト」の一環としてグアムでのdポイント加盟店の展開や、dアカウントによるDOCOMO PACIFIC Wi-Fiの無料提供、訪日外国人向けのプリペイドSIM「Japan Welcome SIM」の提供などが該当すると紹介した。

宣言2関連としては、AIエージェントAPIの開発とオープン化を推進し、新たなサービスの協創の促進を行うとともに、宣言6にも関わってくるが、「ドコモAIエージェント・オープンパートナーイニシアティブ」を推進するとしている。また革新技術や斬新なビジネスモデルを有するベンチャー企業の支援で、150億円規模のドコモ・イノベーションファンド2号を設立したことを明らかにした。

●docomo withに新たな対応機種も

○MVNOは敵ではない

メディアからの質疑応答では、減益要因やKDDI/auの新プランの影響、docomo withなどの実績、総務省からの行政指導などに質問が集中した。

この中で、KDDI/auの新プランについては、ドコモユーザーが積極的に流れているとは思えず、大きな影響は少ないと考えているという。またMVNOについては、回線純増分のうちドコモブランドの回線については横ばいであり、増えたのはMVNOやIoT用モジュールであるとし、MVNOが増えるぶんは間接的にドコモ回線のユーザーが増えることであり、特にMVNO対策を取る予定は今の所ない、としている。

○docomo withに対応機種追加

docomo withについては約30万回線の契約を得ており好調。一方、基本使用料980円(税別)の「シンプルプラン」は約40万契約と、予定をやや下回っているという。docomo withが好調である反面、2016年販売を開始した低価格スマートフォン「mono」については言明するのを避けたが、秋冬以降でdocomo withの対応機種を増やしたいと発言しており、言外にmonoまたはその後継モデルがdocomo withの対応端末として登場する可能性を含ませていた。

○総務省の指導「謙虚に受け止める」

総務省からの指導については、契約時に解約方法などについての説明がないということで3社すべてが指導を受けたが、特にドコモについて悪質であると強い指導があったというもの。これについては吉澤社長は、謙虚に受け止めており、現場スタッフの研修などを徹底することで改善したいとした。

計画通りだとはいえ、就任以来初めての減益とあってやや元気のないように見えた吉澤社長だが、ドコモとしては今後もdocomo withなどの還元政策を続けていくということ、auに対抗した大きな値引きプランの提供などは計画にないということで、今後も中期計画の実現に向けて地道に歩みを進めるものと見られる。

これから秋冬にかけては、例年通りであれば大きな話題を集めるiPhone新機種の発売も控えているが、auの新プランも今のところiPhoneには対応しておらず、どのような影響が出るかは未知数だ。ドコモが通期での増益に向けてどのような施策を行うのか、注目したい。