中途採用による人材獲得競争は激しさを増し、従来の採用手法では応募が集まらない状況だ。複数の企業からオファーを受ける候補者も多く、内定辞退も続出している。こうした採用課題を解決するため、採用チャネルの多様化や採用プロセスの最適化などを支援する新たな手法が出てきている。

 グローバル化やイノベーションで経営スピードが一層求められる時代になり、これまでのビジネスリソースや人材だけでは解決が難しい経営課題が増えている。こうした経営課題の解決に必要な経験やスキルを持った人材を獲得するために、企業の中途採用意欲は高水準だ。

 求人情報サービスのマイナビが2016年に中途採用を実施した企業を対象に実施した調査によると、 64.1%が「人材が不足している」と回答。すべての業種で「不足している」が半数を超える結果となった。従業員数別では、「不足している」が「60人未満」が55.4%、「60〜299人」が60.4%、「300人以上」が71.4%となり、従業員規模が大きい企業ほど必要な人数を確保できていない実態が浮かび上がった。 17年の中途採用見通しでは「経験者採用に積極的」が86.0%に上り、そのうち46.5%は「未経験者採用にも積極的に取り組む」と回答しており、採用基準を下げてでも人材を確保したいという企業の思いがにじむ。

 新卒採用の動向も中途採用に影響を与えそうだ。同じくマイナビの18年大卒採用予定調査によると、文系、理系ともに4分の1以上の企業が採用数をさらに「増やす」計画だ。新卒採用に苦戦する企業では、その不足分を埋めるために第二新卒や既卒者の採用を増やす傾向が出てくるだろう。 厳しさを増す採用環境において母集団形成に苦しむ企業では特に求める人材に応じて、ダイレクト・ソーシング、リファラル採用、特徴的な求人サイトや人材紹介会社の活用など、採用チャネルの多様化に取り組むことが欠かせなくなっている。

 同時に採用業務の効率化や採用のスピードアップも図らなければならないなど課題も多い。こうした採用課題を解決するために中途採用の新しい手法を提供するサービスが出てきており、これまでの“待ち”から“攻め”の採用への転換で欲しい人材を積極的に発掘する企業が成果を上げている。 採用担当者が候補者に直接アプローチする「ダイレクト・ソーシング(ダイレクト・リクルーティングともいう)」に対する採用担当者の関心が高まっている。

 日本最大級の人材データベース「DODA」を運営するインテリジェンスでは2016年1月からダイレクト・ソーシングサービス「DODA Recruiters(デューダ リクルーターズ)」を開始している。 「DODA」の登録者115万人のデータベースから最適な候補者を検索してスカウトメールを送ることができるサービスだ。

 さらにダイレクト・ソーシングを導入する際の課題であった人材データベースだけでは採用担当者が上手く使いこなせないという状況を解決するため、採用担当者がスカウトメールの書き方などを学べる「リクルーター・アカデミー」を無料で提供しつつ、営業担当がサポートしてダイレクト・ソーシングによる採用を支援している。 企業が候補者に直接アプローチするダイレクト・ソーシングの一つでもある「リファラル採用」に取り組み始める企業も出てきている。

 リファラル採用とは、社員が友人関係やビジネスの人脈を生かして自社への入社を勧める手法だ。例えば、ウエディングプロデュースやレストラン運営を手がけるノバレーゼは、昨年3月からリファラル採用に本格的に取り組み始めた。 リファラル採用の狙いを、高橋麻菜美同社人材開発部長は「転職市場は売り手市場になっており、求人広告を出して応募を待っているような方法では人材を確保できなくなっています。社員が『ノバレーゼにふさわしい』『ノバレーゼで働いてほしい』と見初める優秀な人材の積極的かつ効率的な採用を行います」と話す。