もし予想通りになれば“隠れ残業”が横行し、給与が減らされた上に心身に負荷がかかるという健康確保とは真逆の結果になりかねない。 前出の厚労省の委託調査の企業アンケートでは、労働時間の把握方法が「タイムカード、ICカードなど客観的記録で確認している」企業は47.4%。上司などが「直接始業時刻や終業時刻を確認している」が25.4%、「労働者が自己申告している」企業が21.5%となっている。

 上司が意図的に残業時間を操作する、社員本人が少なく申請する余地が残されている。ちなみに同調査では「持ち帰り仕事がある」と答えた人は34.5%。その頻度はほぼ毎日という人を含めて週2~3回以上の人が合計29.5%に上っている。 上限規制を実施しても実労働時間が変わらないという事態は避けたい。

 各企業が実施している「ノー残業デー」「定時退社」のみを実施している形式的な残業規制の構図と同じだ。たとえ外から規制しても“隠れ残業”が横行することになる。 政府が実施する上限規制はあくまでも企業が長時間労働を是正するための誘導策にすぎない。実効性を持たせるかどうかは、企業自身が業務量を含めた業務プロセスの見直しなど地道な取り組みがより重要になるだろう。