ガイドラインが施行されることになれば、多くの企業は非正規に対して賞与を支給しなければいけなくなる。その意味では正社員と算定方式を同一するKDDI労組の取り組みはガイドラインの施行を先取りした要求ということになる。だが、結果的には前年比2倍の20万円に引き上げることで妥結し、算定方式の変更は見送られた。 

 同一労働同一賃金原則に基づいた今回の両社労使の取り組みはもう一つの課題を示唆している。NTTグループは約4万人に手当を支給するが、会社側の負担額は年間60億円も増えるという。また、KDDIの契約社員は約3000人。前年比10万円アップだと単純に約3億円の人件費原資が増えることになる。一方、今春闘では総合職正社員ベアはゼロ回答だった。

 同一労働同一賃金制度の導入によって、既存の正社員の処遇を下げることは立法の趣旨に反すると労働法学者は指摘している。だが、企業の現場においては人件費原資が限られている以上、非正規の処遇改善を進めるにあって正社員の処遇も調整せざるをえなくなるかもしれない。

 改正法の施行までに2年しかない。正社員を含めた人事・賃金制度や労使交渉を含めた協議を考えると、紹介した2社のように早期に着手すべきだろう。