圧倒的な歌唱力を武器に持つ、Da-iCEボーカルの花村想太。武道館ライブを成功させ、この春には舞台『ちるらん 新撰組鎮魂歌』で主演に挑戦。ツラいはずの稽古について、「苦しい経験ができて幸せ」と笑顔を見せ、マイナスな言葉はいっさい出てこない。厳しい状況や重いプレッシャーを、やわらかな発想力でプラスに変えているのだ。理想の死に際、ちょっぴり寂しい(?)ひとりの時間…次々と、予想外の答えを打ち返す。花村の頭の中は、一体どうなっている――?

撮影/川野結李歌 取材・文/古俣千尋 制作/iD inc.



新撰組の土方歳三とは、自信家なところがそっくり!?



――人気漫画を原作とした舞台『ちるらん 新撰組鎮魂歌』は、幕末最強の武士団・新撰組のヒーローたちを描いたアクションステージ。Da-iCEの花村想太さん(土方歳三役)と岩岡 徹さん(沖田総司役)がダブル主演を務めるということで、期待が集まっていますね。

僕たちもまさか主演だとは思っていなかったので、聞いたときは跳ね上がりましたね!(笑) 周りのみなさんはお芝居を生業とされている人たちが多いので、そのなかに自分たちが主演として入ることによって質を落としてはいけないなと、よりプレッシャーが高まりました。

――ボーカルのお仕事とはまったく違う、新しい挑戦になると思いますが、舞台に臨むにあたって準備したことなどはありますか?

原作を読ませていただいたうえで、もともとの土方歳三は何をした人なのか、「鬼の副長」と呼ばれているのはなぜか、まずは人物について調べるところから始めました。

――この舞台での土方歳三は、幕末の京都でただ純粋に“最強”を目指しながらも、戦いを通して成長していく主人公ですね。

土方は、最初はただの自信家で、「自分が強い」「自分が正しい」って信じ込んで戦っているだけなんですが、周りの助けによって成長して、本当に強い男になっていくんです。今回の物語は、そんな彼の成長劇でもあるんです。



――土方歳三を演じていて、自分と似ているなと思うところはありますか?

めっちゃ似てます! 僕も18歳のときは、「10代だったら日本で一番歌がうまい」と思い込んでいたんですよ(笑)。でも、東京に出てきてレッスンに通ったり、Da-iCEを組んでライブを始めたぐらいのとき、「井の中の蛙状態だったんだな」って気づかされたんです。今でも自信はありますが、昔の「過信」とは違って、自分の実力をしっかり見極められてはいるつもりなので。その成長も、すごく僕に近いなとは思いますね。

――なるほど。では、土方歳三の「ここがカッコいい」というところは?

剣術が強い弱いは別として、最後まで自分を信じているところがやっぱりカッコいいですね。僕たちも、歌がうまい下手は別として、自分を信じられているかっていうのはすごく重要だと思うので。何があっても自信を持ち続けるっていうのは、才能のひとつだと思います。

――舞台稽古が始まりましたが、初めての殺陣をやってみていかがですか?

めっちゃハードです。殺陣のシーンも多くて、まだ前半しか稽古していないんですけど、ひざとかボッコボコで(笑)。もうすでに…ちょっと死にそうなんですよね。はっはっは!



――その満面の笑みが、逆にツラさを物語っているような(笑)。

でも僕、けっこうそういうの燃えるタイプなので。「うわ、足らん! もっと出たかったのに」って思うよりは、「ギリギリ限界や」って思うほうが燃えます。

――Da-iCEのお仕事との両立も大変そうですね。

このあいだ、殺陣の振り付けをした次の日にレコーディングしたんですけど、腹筋の筋肉痛がひどすぎて、歌うのが大変なんですよ。ちょっと息を入れようとしたら、ピキーンみたいな。声を響かせようとしても「痛い痛い痛い!」みたいな(笑)。

――痛みながらのレコーディング。なかなか体験できるものじゃありませんね。

歌うことがツラくなるぐらいの筋肉痛を味わうなんて、僕には衝撃でした。でも、すごく幸せなことですね。そんなこともあるんやなって。



――なんと前向きな! では、稽古で一番楽しい部分は?

とくに楽しいなって思うのは、演者さんとの掛け合いですね。たとえば同じセリフでも、毎回少しずつ違うんですよね。相手のセリフによって、そのときの自分の身体や声の反応が変わるんです。僕がいろんな言い方をしたくなるような節回しで、会話のバトンをくれて…。毎回毎回スゴいなって、プロのみなさんの力を感じますね。僕も稽古のあいだに必ず成長して、そこまで持っていかなきゃって思っています。

――それはとても楽しみです。一緒に主演を務める岩岡 徹さんは、花村さんにとってどんな存在ですか?

すごく優しくて、メンバーの中でも一番お兄ちゃんっぽいです。何でも理解してくれるから一緒にいてラクですし。だから稽古も毎回楽しいです!

――メンバーがそばにいるのは、心強いでしょうね。

いなかったら、もっとプレッシャーも重かったと思います。家族よりも一緒にいるし、しんどいことも含めて何でも共有できる存在なので、本当にありがたいですね。




後悔しないで死ぬよりも、死ぬときに後悔したい!



――先ほどから「プレッシャー」という言葉が何度か出てきていますが、花村さんはプレッシャーや緊張を感じやすいほうですか? 

めっちゃ感じやすいです! ライブで歌うときは、緊張していないと気持ちが入りづらくて、いい歌を歌えないタイプなんですよ。僕、レコーディングではわりと緊張を解いて、ライブのときとは歌い方も変えて、聞きやすさを重視しているんですね。だからライブで緊張しないと、レコーディングに近くなってしまって。なので、ライブではできればずっと緊張していたいんです。

――花村さんにとっては、プレッシャーがイヤなものではなく、味方でもあるんですね。

まあもちろん、イヤだからこそプレッシャーなんですけどね。やっぱり、しんどいものだし。もちろん、プレッシャーを感じすぎて全然ダメだった日もあるし、その兼ね合いが怖いですよね。だから、いい方向に転ばせられるかどうかが、自分でも楽しみというか。

――その心構えは、すごく素敵な考え方だと思います。

僕もまだまだなので、百発百中でうまく使える人間になりたいですね。

――漫画『ちるらん 新撰組鎮魂歌』では、男の散りざまが美しく描かれていますが、花村さんは男らしさや、男らしい散りざまについて、どんなイメージを持っていますか?

男の散りざまについては、昔から思っていたことがあるんです。言うとちょっと恥ずかしいんですけど…(笑)。よく「死ぬときに後悔しない生き方をしたい」って言う人が多いと思うんですけど、僕は逆に、死ぬときに後悔したいんです。




――後悔したい…ですか?

「もっと生きたい」「もっとこうしたかった」「もっと歌がうまくなりたかった」って、思いながら死にたいです。満足しちゃったら、もったいないじゃないですか。「あ、もういいや」って思ったら、そこで本当に終わってしまうから。欲がある人間で死にたいし、常に欲を持ち続けていたいです。

――その考え方はおもしろいですね。満足しないということは、普段から、お仕事が終わった後に反省することも多いんですか?

反省しますし、自分の映像も見ます。武道館ライブの映像も、たぶんフルで20回ぐらい見ていますね。ただ、悪いところを5個見つけるとしたら、いいところは10個見つけるようにしています。悪いところをつぶしていくのは大切なんですけど、それより得意なことを伸ばしていったほうが、僕の場合はよくなるので。

――そうやって、ご自分をしっかり分析されているんですね。

やっぱり映像を見ないとわからないんですよね。「ここの表情がよかったな」「この歌い方はよかったな」っていうのがあれば、「だったらここをもっと増やしていこう」「こういうふうに聞こえるところをあと数カ所増やそう」とか。「ここはちょっとやりすぎたな」と思うところがあれば、少し引けばいいし。日々、考えていますね。