飛行機に遅延が発生すると、旅客たちから不満の声が出るのは自然なこと。その時間が長くなればなるほど、不満は強くなりトラブルが発生しやすくなる。しかし、このほど日本と台湾を結ぶ航空便では1時間の遅延が発生したにもかかわらず、最後はみなが感動するなか目的地に到着したという。台湾メディア・三立新聞網は22日報じた。

 記事は、先日あるネットユーザーが台湾の掲示板サイトPTTで「1時間の遅延が生んだ心温まるストーリー」を披露したと紹介。その書き込みによれば、19日に函館から台北に向かうタイガーエア台湾IT237便の機内で60歳ぐらいの女性が躁うつ病の発作を起こし、機内で取り乱すアクシデントが発生したという。友人や客室乗務員の制止も効果がなく、機長は止む無く女性を飛行機から降ろすよう指示したとのことだ。

 この騒ぎにより同便は出発が1時間遅くなった。当然乗客らは出発が遅れたことに不満を抱いていたが「思いがけないことに、機長の話でそんな気持ちはすっかり変わってしまった」という。機長が乗客に謝罪した後で発したのは、こんな話だった。

 「私の母も躁うつ病患者です。同じ患者の家族として、先ほどはとてもつらい一幕でした。私たちは彼女を飛行機に乗せてあげられず残念ですが、日本でしっかりケアを受けたうえで、ご家族ができるだけ早く台湾に連れ戻し、治療を受けさせてあげることを望みます。そして皆さん、ご理解ご辛抱いただき非常に感謝いたします。すでに日本と台湾双方の航空管制と連絡をとっており、ロスした時間を取り戻せればと思います。皆さんの素晴らしい北海道旅行に残念な記憶を残さぬよう・・・」

 記事は、機長の話が終わると乗客一同から拍手が起こったと紹介。しかも、飛行経路の変更許可を得たことで同便は定刻通りの到着に成功、涙を流して同便や空港のスタッフに敬礼する客もいたと伝えている。

 機長の乗客への対応、発作を起こしてしまった女性への配慮、そして乗客のことを最優先に考えた行動が、乗客らの心を動かしたようだ。乗客たちにとっては、北海道旅行が残念なものになるどころか、さらに記憶に残るような素晴らしい旅行になったことだろう。(編集担当:今関忠馬)(イメージ写真提供:(C)Keerati Tangyoocharoen/123RF)