[画像] 「黒子のバスケ」なぜ人気絶頂で連載を終了?作者・藤巻忠俊の思いとは

 日本を代表するバスケットボール漫画「黒子のバスケ」。連載中にスタートしたテレビアニメも人気に拍車をかけ、若い世代を中心に絶大な支持を受けていたが、絶頂期の2014年に連載を終了した。ファンから惜しむ声も多く上がったが、作者の藤巻忠俊にはどのような意図があったか。「きっちり風呂敷をたたんで終わりたかった」という藤巻が、物語にかけた思いを明かした。

 「黒子のバスケ」の完結からは約3年。藤巻は「あまりにも必死だったので、描いた当時のことはあんまり覚えていません。読み返すと全編新鮮な気持ちになるくらいです」と連載中は目の前の作業に没頭していたそう。2012年にアニメ化され爆発的な人気を獲得してからも漫画への取り組みは変わらず、「それまで通り必死で毎週毎週全力でした。もうこれ以上の力は出ないというペースを変わらず続けていました」と振り返る。

 ストーリーについては、「最初から最後まで決めていたわけではなく、予想外なところの方が多いくらいですが、全国大会に出て主人公たちが優勝して終わるというラインは達成できたのでよかったです」と当初から思い描いていたものに仕上がったことに満足そうな表情を浮かべる。藤巻がこだわった筋書きには、バスケ漫画の金字塔「SLAM DUNK」(作・井上雄彦)の影響があった。同作の物語は、主人公チームが負けて終了する。「僕は『SLAM DUNK』が大好きで、山王戦で終わってよかったと思っています。ただ、子供の頃、単純に主人公を優勝させてほしいと思ったんです。だから自分がもし漫画を描くのなら、子供の時に思い描いた“主人公たちが優勝して終わる”というのをやりたかったんです」。

 「黒子のバスケ」のメインキャラクターの多くは高校1年生。連載当時、ファンの間では1年目の全国大会では主人公チームが負けて「2年目が始まるのでは」と期待を込めた声も上がっていた。藤巻は「続いてほしいと思ってもらえたのなら本望です」と前置きしつつ、「僕は、小説でも漫画でもよくできた長編作品を読んだ後のおもしろかったという満足感と、読み終わってしまったさみしさが混ざった感じが好きだったので、自分の作品でも味わってほしかったんです。むしろその感覚を知ってほしいという思いでした」と語り、2年目を描くことは選択肢としてもなかったという。

 本編完結後には、後日譚として「黒子のバスケ EXTRA GAME」が描かれた。そこまでの思いで終了した物語の続きにはどのような思いがあったのか。「原作30巻でもうこれで終わり、描ききったという思いでしたが、まだもうちょっとその後キャラたちが成長したらどうなるのだろうかという思いはありました。長い続編を作るというテンションではなくて、あと1試合だけ最後にライバルたちと組むというお祭りをできたらいいなと……」と明かし、「EXTRA GAME」の内容は「この漫画はちゃんとラストまで描けるかも」と思い始めた頃から構想があったのだとか。

 その話をベースに描く『劇場版 黒子のバスケ LAST GAME』が3月18日に公開された。夢だったという自身の漫画の映画化を叶えた藤巻は、「僕は週刊少年ジャンプの中のアンケートで1位を取ったことがないので、1位を取りたいですね。もちろんそれを目的に描くわけではありませんが、取りたいなという思いはあります。新連載もがんばろうという気持ちです」と次なる目標を掲げていた。(編集部・小山美咲)