衝撃のセリフ 妻の無償奉仕は“好きの搾取”!

回を重ねるごとに視聴率がどんどん上がり、12/20放送の最終回の平均視聴率が20.8%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)を記録したドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS系)。

ヒロインのみくり(新垣結衣)が住み込みで家事代行サービスをし、雇用主の平匡(星野源)がみくりに給料を払うという形で始まった契約結婚(入籍しない事実婚)は、やがて愛のあるバラ色の生活に変わって、第10話でついに平匡が求婚!

このままハッピーエンドを迎えるのかと思いきや、平匡は、ドラマ史上に残るような最悪のプロポーズをしてしまいました。彼はなにやらパワーポイントで作ったらしき試算表を取り出し、家計のシミュレーションを見せながら、こう言ったのです。

平匡
「結婚すれば雇用契約は必要じゃなくなります。今までみくりさんに支払っていた給与が浮いて、生活費や貯蓄に回すことができます」

当然、これまで家事で給料をもらっていた、みくりは反発。しかも、平匡が会社からリストラを宣告されている状態だと知って、キレてしまいます。

みくり
「結婚すれば、私に給料を払わずに、ただで使えるから合理的。そういうことですよね?」
「それは“好きの搾取”です! 好きだから、愛があればなんだってできるだろうって、そんなことでいいんでしょうか」

妻が家事や育児をしても給料が支払われないアンペイドワーク(無償労働)を鋭く突いた“好きの搾取”という言葉は、衝撃的でした。世間一般の現実を考えれば、ほとんどの家庭では妻が家事や育児をしても夫がお金を支払うことはないのですが、これまでの性役割意識から、それを当然のこと、または仕方のないことと考えてきた風潮に、ズバッと斬り込んだのです。

夫婦は“雇用関係”?“共同経営責任者”?

そして第11話に当たる最終回。ただでさえコミュニケーションが苦手で、恋愛経験のない平匡が、この難しい局面を乗り切れるのか?と心配していましたが、さすがに36歳の現役会社員。これまでのみくりとの関係を通して、かなり成長していました。

みくりが給料の支払われない主婦として生きるのは「不安定なんです。労働時間の上限もないんです。下手したらブラック企業になりかねません」と訴えると、平匡は「そもそも雇用関係なんでしょうか? 主婦も家庭を支える立派な職業。そう考えれば、立派な“共同経営責任者”なのでは?」とちがう見方を提案します。

そこから、「303 (マンションの部屋番号)カンパニー」と銘打って、みくりと平匡は家庭の共同経営責任者として、会議を重ねつつ、共稼ぎ夫婦へとシフトしていきました。しかし、もともと家事をしたくないからみくりを雇った平匡は、お風呂掃除などを始めたものの、「正直、面倒くさい」と会社で愚痴る始末。みくりはみくりで、商店街のコンサルタント的立場として働いても、日給3000円程度しか稼げない。一気に、共働き夫婦としてのリアルが2人を襲います。

NHK大河ドラマ「真田丸」のパロディが出てきたように、まさに家事を押し付けあうバトルの様相も呈してきて、“好きの搾取”という状況を回避するためには、夫婦双方がかなりの努力をしなければならないことが浮き彫りになります。

恋愛感情に流されず、既成概念にも縛られない生き方

それでも、2人が共働きという生き方を選んだのは、希望の持てるラストだったと言えます。夫も家事を分担するからこそ、妻の大変さが分かるし、妻も仕事をするからこそ、外で稼ぐことのしんどさも分かる。

そんなふうに、最初から最後まで「立場の違う相手を思いやる」ということを描いていたこのドラマ。2人が将来を妄想するシーンで出てきたように、例え今後、なんらかの事情で立場が逆転し、平匡が専業主夫となり、みくりが稼ぎ手になっても、お互いを思いやって一緒に生活していけるのではないでしょうか。

「相手を好き」という恋愛感情に流されず、既成概念に縛られず、とことん話し合って共存の道を見つけてきた、みくりと平匡の今後に幸あれ!

(小田慶子)