[画像] 北海道日本ハムの日本一を支えた中垣トレーニングコーチに聞く!一流選手のトレーニングの組み立て方とオフの過ごし方【前編】

「スカウティングと育成」をチーム作りの基本方針に掲げる日本ハムが今季、4年ぶりのリーグ優勝、さらには10年ぶりの日本一に輝いた。その特徴といえば、若手選手を積極的に起用し、実戦の中で鍛えていくことにある。チームでは入団した選手を一日も早く、技術的にも体力的にも1軍レベルに引き上げるために様々な工夫がなされており、そのフィジカル面を主に担当するのが、中垣 征一郎トレーニングコーチ(46)を中心とするトレーナー陣だ。

 次から次へと若手が台頭してくる日本ハムでは、どんな考えのもとにトレーニングメニューが作成されているのか。中垣コーチに聞いた。

活躍できる選手の分かれ目はオフシーズンの過ごし方

中垣 征一郎トレーニングコーチ(北海道日本ハムファイターズ)

 プロ野球選手は1軍でプレーしなければ、何の評価もされない。自らの特徴を最大限にアピールし、28人の1軍枠に入ろうと選手たちは日々努力を続けている。そんな中、1軍と2軍の大きな分かれ道となるのがオフの過ごし方と言える。「オフシーズンというのは、チームでの戦術的な練習はゼロになります。チームで動いていないから、選手にとっては体力トレーニングの比重が一番大きくなる時期。練習する中で全般的な体力トレーニングと、野球における専門的な体力トレーニングが半分以上を占める時期かなと思います」と、中垣コーチは説明した。

「全般的な体力トレーニング」とはランニングや、ウエイトトレーニングなどの全般的体力強化を目的とした練習。これに対して「野球における専門的な体力トレーニング」とは、例えば「投げる」という動作に関して必要な肩回りの筋力を鍛えるだとか、その動作がよりスムーズに行えるようにするための専門的な動きの要素を含むトレーニングを指す。「野球というのは、瞬間的に大きな力を発揮したり、技が中心となるスポーツ。ですから“動き”に重点を置いたトレーニングを多く取り入れないといけません」と、この2つの要素を意識する重要性を強調した。

 日本ハムでは、個々にオフのトレーニングメニューが作成され、それぞれに手渡される。そこにはプロ野球選手として絶対的に必要な体力をつけるためのメニューと、個々に必要なトレーニング内容が書かれてある。

「野手であろうが投手であろうが、野球選手である以上、これだけはやっておきましょうというのが半分。それに加えて、例えば、走れるけれども筋力はまだまだついていないという高卒の選手ならば、筋力トレーニングの基礎に重点を置いたメニューを作っています」こうしたトレーニングを続けていく中で個性が生まれ、将来的にはその個性に合わせたメニューが作られていく。

 そんなメニューをこなす時に大切なのが、中垣コーチが何度も口にする「動き」に対する意識。トレーニングの質を高めるためには、その「動き」にどういうテーマを持って臨むかが重要になってくる。

「例えばスクワットを150kgで8回3セット行うとします。設定通りにクリアできた選手のトレーニングの質が高いかといえば、そうとも限らない。強度という点では設定したレベルを達成できているけれど、“動き”に着眼点を持って、その目的とした動きにどれだけ近づいているかということが、質を高めるということ」と、そのトレーニングによって何を目指しているのかということが大事になる。

自分のトレーニングの核を見つけられるか

中垣 征一郎トレーニングコーチ(北海道日本ハムファイターズ)

「動き」というものに着眼点がなければ、「強度と量ををこなした人が勝ち」ということになってしまう。量をこなして体力的な要素を高めていくと同時に、動きのクオリティを上げるという意識がなければ、「練習のための練習」になる可能性も高くなる。「運動技術を高める取り組みというのが一体どういうことなのか。ランニング1本走り始めたところからテーマとして持つことが必要」と中垣コーチが力説するように、ウォーミングアップにしても、体を温めるという目的と同時に、そこにスプリントのドリルなどを交えて、それを正しくやるという感覚を持てるかどうかで、質の高さが決まってくるのだ。

 これまで中垣コーチが見てきた中で、「この選手は伸びる」と感じるのは、どんなタイプの選手なのだろうか。「同じことを継続できる選手ですね。同じことをやっているようで、その時その時でちゃんとテーマを持っている。だから単純な反復ではなく“これはうまくいっている”“これはうまくいっていない”ということを意識できる。こんな選手は伸びる可能性が高いと思います」

 さらにこういうタイプの選手は、思い切った変化もできるという。「自分の核になるトレーニングを持っているからこそ、それを繰り返している中で新しい発見ができる。“ここは変化してもいいぞ”っていう部分がわかってくるんでしょうね。反対にただ変化ばかりを求めている選手は、結局自分の核になるものがないまま進んでしまうので、うまくいかないケースが多い」と、核になることを明確に持ったトレーニング方法をみつけることを推奨した。

 後編では大谷 翔平選手や宮西尚生選手のトレーニングの組み立て方や考えを紹介しつつ、トレーニングを組み立てる上で、大事な考えを中垣コーチに語っていただきます!お楽しみに!

(文・京田 剛)

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