ノロウイルスなどの感染性胃腸炎が猛威をふるっている。国立感染症研究所によると、2016年12月4日までの1週間に、ノロウイルスなどの感染性胃腸炎の患者は、1医療機関あたり17.37人で、前の週の12.85人から増加した。

過去10年間で、同じ時期としては2番目に多い患者数。昨年の同じ時期と比べても、大幅に増えている。ノロウイルスは、主に冬から春先に流行するが、今年は例年より早い時期から患者が多くなっており、専門家は対策を呼びかけている。

乳幼児や高齢者はとくに注意

ノロウイルスは手や食べ物についたウイルスが口から入り、感染する。カキなど二枚貝にもウイルスがついていることがあり、十分に加熱して食べることが大切だ。発症すると、下痢や嘔吐を繰り返し、頭痛などの症状が出る。通常1〜2日で症状はなくなるが、抵抗力の弱い乳幼児や高齢者などは、脱水症状を起こしたり、吐しゃ物をのどに詰まらせたりして死亡するケースもあるため、注意が必要だ。

直接ウイルスに効果がある薬などはない。予防の基本は、入念な手洗い。手洗いによく使われる石けんやアルコール製剤には効果がないため、手をよくこすり、汚れを洗い流すことが大切だ。

感染したら適切な処理を

しかし、いくら気をつけていても、感染してしまうこともある。患者の吐物、ふん便に汚染された床や手袋などには感染力のあるウイルスが残っている可能性があるため、適切な処理が必要だ。

厚生労働省のウェブサイトによると、床に飛び散った吐物、ふん便を処理するときには、使い捨てのガウン(エプロン)、マスクと手袋を着用し汚物中のウイルスが飛び散らないようにペーパータオルで静かにふき取る。その後、「キッチンハイタ―」や「キッチンブリーチ」などの次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤を水で薄めた液で水ぶきをする。使用済みペーパータオルはビニール袋に密閉して破棄する。

吐物やふん便が布団などのリネン類に付着した場合は、まず、汚物中のウイルスが飛び散らないように気を付けて処理をしてから、消毒した後、洗剤を入れた水の中でもみ洗いをする。

リネン類の消毒は、85℃、1分以上の熱水洗濯が有効だ。熱水洗濯ができない場合は、次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤で消毒してからよくすすぎ、高温の乾燥機などを使用すると殺菌効果は高まる。

水分補給と休養が大事

嘔吐や下痢などを繰り返すと脱水症状になりやすい。予防のために、経口補水液を利用しよう。経口補水液はドラッグストアや調剤薬局などで手に入る。一度にたくさん飲むとかえって吐き気が増すこともあるので、ペットボトルのキャップ1杯(約5ml程度)を5〜10分ごとを目安に、少しずつ飲むのがいい。

また、ノロウイルスにかかったら、回復するまで家でしっかり休養をとり、学校や仕事に行かないことも重要だ。「仕事はどうしても休めない」と、無理をすると、職場で感染を広めることになり、かえって業務が滞る。

長期的に考えれば、1人の病欠は、感染症の集団発生よりもはるかにましだ。正しい知識で対応し、これ以上感染を広げないことを第一に考えよう。[監修:岩田健太郎 神戸大学感染症内科診療科長・国際診療部長]

医師・専門家が監修「Aging Style」