大人気コンシューマーゲーム『ペルソナ3』の舞台化作品『PERSONA3 the Weird Masquerade』は、2014年の第1弾「青の覚醒」を皮切りに、これまで第2弾「群青の迷宮」、2015年に第3弾「蒼鉛の結晶」と上演されてきた。ひとつの物語を男性主人公版と女性主人公版のWキャストで楽しめ、公演ごとに高い評価を得ている本作だが、2017年4月の第4弾「藍の誓約」、最終章「碧空の彼方へ」の2作同時上演でついにファイナルを迎える。1作目から女性主人公・汐見琴音を演じているのは、声優の阿澄佳奈。舞台出演を通して、声優業とは異なる演技の幅を学んだという彼女が、本作への思いを語ってくれた。

撮影/西村 康 取材・文/渡邉千智(スタジオ・ハードデラックス)

初舞台はハードルだらけ! 戸惑いの連続だった



――2017年4月に上演されることが決まった舞台『PERSONA3 the Weird Masquerade』(以下:舞台『ペルソナ3』)の第4弾「藍の誓約」と最終章「碧空の彼方へ」。阿澄さんは、2014年の初演である第1弾「青の覚醒」から引き続き、汐見琴音(しおみ・ことね)役で出演となります。

けっこう前から、この第4弾、最終章を「やるぞ!」というお話はいただいていたのですが、私としては今回の公演が発表になってからそわそわし始めた感じがあります(笑)。

――それはどうしてですか?

これまで3作品をやってきて、公演が終わるたびにキャストのみんなと「ペルロスだ、ペルロス(ペルソナロス)」って言っていたんですけど、でもそのときはまだ続きがあることを期待して言っていた部分もきっとあったんです。それが、今回の第4弾、最終章で、いざ最後となるとどんな気持ちになるのかな?って、急に考えるようになって。

――現実味を帯びてきた、と。

……実は、本当に最後っていう実感はまだあまり湧いていないんです。もしかしたら、終わってしまうのが寂しくて、あまり考えないようにしているのかもしれないですね(笑)。

――それくらい本作への思い入れが大きいってことですね。

そうですね。私、舞台『ペルソナ3』に運命を左右されているんじゃないか!って思うくらい、自分にとって転機となった作品なんです。お仕事で舞台に出演するのは舞台『ペルソナ3』が初めてだったので、最初は舞台上でどう役を演じればいいか?など、舞台のノウハウがまったくなくて。女性主人公という大役を任せていただいたのに、私が一番できていない…という自分の中の葛藤と戦いながらの1作目、そして、2作目、3作目と経験させてもらってきたので。




――葛藤と戦いながら役を向き合ってきたからこそ、汐見琴音というキャラクターへの思い入れも強そうですが、いかがですか?

1作目は本当に探り探りで、「琴音を演じなくては」という意識が強かった気がします。2作目、3作目になって、「私らしく演じてみてもいいのかもしれない」という感覚が出てきました。

―― “阿澄さんらしさ”というのは、具体的にどういう部分でしょう?

『ペルソナ3』の主人公って、人と関わることで影響されて変わっていくんです。だからこそ、周りのキャラクターに言われたことへのリアクションや気持ちの動き方……私は違うなって思った、面白いって思った、っていう私自身の感情を素直に出してもいいのかなと。あとは、私の舞台経験が浅かったこともあって、周りのキャストにはすごく助けられたんですね。だから、仲間と何かに立ち向かうという感覚はそのまま作品に活かせたような気がします。

――琴音を始め、ペルソナ使いが所属する特別課外活動部は、影時間に現れるシャドウという敵を討伐する活動を行うので、武器を持っての殺陣もありましたが。

殺陣も初めてだったので苦労しました。しかも、琴音が使うのは薙刀という長物! 殺陣初心者にはかなりハードルが高かったです!(笑)……というか、舞台『ペルソナ3』は私にとっていろんなハードルがある作品でした。

――殺陣のほかにも?

歌、ダンス、マイム……普段経験しないようなことがたくさんあって、本当にいろんなことにチャレンジをさせてもらいました。



どんなときも支えてくれた…キャストを結ぶ強い絆



――W主演と言えど、初舞台でいきなり座長という立場だったのも、なかなかのチャレンジだったのでは?

その通りです(笑)。でも、私は座長らしいことはできていなかったと思うし、周りのキャストに支えられっぱなしでした。舞台『ペルソナ3』は本当にいいキャストが揃っていて、彼らとの出会いがなければ、「舞台って大変だな」という気持ちで終わっていたかもしれません。

――第3弾の大千秋楽のカーテンコールでは、「座長の気持ちも芽生えつつある」とおっしゃっていましたが、第4弾、最終章では阿澄さんの座長力が発揮されそうですか?

多少は……それっぽいことをしたいなと思っているんですけど、できるか不安なところでもあります(笑)。でも、今まで支えられてきたぶん、カンパニーのみんなにもお返しができるような存在になりたいと思っていますね。

――カンパニーの絆が強いというお話はこれまでにも伺っていました。とにかくキャスト同士の仲がいいんですよね、LINEグループもあるのだとか。

そうなんです。誕生日のキャストがいればみんなでお祝いしたり、キャストが出演した舞台を観に行ったらその写真をアップして共有したり…。ちょくちょく連絡を取り合っています。

――舞台が終わっても仲がいいというのは素敵ですね。

(蒼井)翔太くん(汐見朔也役)やZAQ(アイギス役)が、よく自分のライブに舞台『ペルソナ3』のキャストを呼んでくれて、みんなで行ったこともありましたね。あとは、みんなが出演している舞台に誘ってもらって、観に行ったり。もう〜何度も言っちゃうんですが、本当に素敵な仲間たちなんです!!(笑)

――差し支えなければ、舞台『ペルソナ3』のLINEグループ事情を教えていただきたいのですが……。

ん〜そうですね。たけやん(タカヤ役/西山丈也)はLINEでも愛されキャラですね(笑)。普段もみんなからイジられるキャラなのですが、それはLINE上でも変わらずで。たけやんが発言すると、ツッコまれるか、スルーされるかです。わざと名前を間違えたりしてイジったりすることもあります(笑)。




もうひとりの主人公・蒼井翔太の存在感



――舞台『ペルソナ3』は、ひとつの物語を男性主人公版と女性主人公版のWキャストで上演する点も面白いですよね。蒼井翔太さんが演じる汐見朔也(しおみ・さくや)への印象はいかがですか?

原作の男性主人公って、率先して前に出るタイプのキャラクターじゃないというイメージがあるんですが、翔太くんが演じる男性主人公はすごく気になるんです。不思議と目を惹きつけられるというか。翔太くん自身が、そういったオーラや、人の目を惹くような魅力を持っている方なので、より男性主人公が魅力的に見えるんだなと思っています。

――なるほど。阿澄さんから見た蒼井さんは、どんな方でしょうか?

すごく努力を惜しまない方だなと思います。声優やアーティストとしてのお仕事も忙しいはずなのに、忙しさをまったく見せず、常に努力をして。そういった彼の舞台に対する熱い姿勢を知っているから、カンパニーみんな、翔太くんを信頼しています。

――同じ主人公を演じるということで、蒼井さんの演技はやっぱり気になるものですか?

気になります! いいところを盗んでやろう!って気持ちで翔太くんのお稽古を見ていますから(笑)。翔太くんは私より舞台経験があるので、いろいろと学ぶことが多いです。

――実際に、男性主人公版の本番も観に行ったりもするのでしょうか?

はい。翔太くんのお芝居から勉強することもありますが、それだけじゃなくて。お客さまの視点で最初から最後まで観るようにしてるんです。客席で、お客さまと同じ視点で見られるのってWキャストだけなんですよね。だからこそ、私が観て感じたことを、他のキャストに伝えたいなって。

――舞台に立っているのと、客席から観るのとでは違いますもんね。

全部知っている流れを改めて客席から観ると、「ここのシーンはこんなに迫力があるんだ」って気づいたりとか、思いがけないシーンでグッときたりとか、いろんな発見があるんです。

――舞台『ペルソナ3』では、ペルソナやシャドウなどの姿は映像で表現されていて、ペルソナ召喚のときや、シャドウと闘うときなどは映像と見事にマッチしたお芝居になっていますよね。

舞台からだと映像は見えないので、客席から見て「こうなっているのか〜!」って気がつきますね。

――映像とお芝居を合わせるのって、すごく大変じゃないかと思うのですが…?

そうですね……(苦笑)。音で合わせてもらう部分もありますが、基本はタイミングで、みんな稽古中に練習した感覚でやっています。映像との演技は、本当に練習の賜物だなって感じですね。



すっかり舞台の虜に…? 声優業とは異なる“魅力”



――阿澄さんは舞台『ペルソナ3』に出演される前から舞台に興味があって、学生時代も演劇部に所属していたと過去のインタビュー記事で拝見しました。

はい、短大のときに演劇部に入っていました。演劇部に入ったのは声優になりたかったから、というのが一番の理由だったのですが、もともとお芝居には興味があって。まぁ、学生演劇のレベルだったんですけど(笑)、それがすごく楽しくて、声優のお仕事を初めてからもずっと、舞台をやりたいなっていう思いは持ち続けていました。

――実際に初舞台を経験してみていかがでしたか?

私、声優の仕事は、あくまでキャラクターを作りあげるうえでの一部分だと思っているんです。アニメーターさんが絵を描いて、演出家さんが動きをつけて……そのなかで私たち声優はキャラクターの声の部分を担当する。だからこそ、舞台の上で、自分が実際に動いてセリフを言うのがすごく新鮮で楽しく感じました。

――声優業とはまた異なる発見があった?

はい! 自分が全身でキャラクターを演じることでわかることって、けっこうあるんだなって。言葉で説明するのが難しいんですけど……声を吹き込むだけだとわからなかったセリフのニュアンスなど、本当にいろんな表現の仕方、演じ方があると感じています。

――では逆に、声優としてお仕事をしているからこそ、舞台で表現できている部分もあるのでしょうか?

そうですね。私のセリフに関して、周りのキャストに「そういうふうに表現するとは思わなかった!」って言ってもらえることがあって。セリフのニュアンスを少し変えるだけで印象がガラッと変わるので、そういった技術面は、私が声優として仕事をするうえで培ったものかなと思います。

――なるほど。

そういう意味では、舞台経験が多いキャストと私とで、お互いに新鮮な気持ちで演技に臨めているのかなって。でも私としては、せっかく舞台に立つのだし、なるべく声優として演じるというのは置いておいて、舞台役者としての演じ方を意識していきたいって思っています。

――今後も、舞台のオファーがあったら出演したいと思いますか?

はい! たぶん、飛びついちゃうんじゃないかと思います(笑)。実際に、私の周りの声優さんには多いんです、一度舞台に出たら、どんどん舞台の世界にハマってしまう方が……。

――阿澄さんも本作をキッカケに、舞台の虜になってしまった、と。

そうですね。それくらい、私にとって、舞台『ペルソナ3』は「舞台って楽しい!」って強く思わせてくれる作品、カンパニーです。

――そんなカンパニーで作り上げる第4弾と最終章に向けて、意気込みをお願いします!

舞台『ペルソナ3』ファンの皆さまに、ようやくこの物語のラストをお届けできるということが何よりうれしいです。初舞台で何もわからない状態から始まって、これまで3作品。本作では、私自身が体感したことや、カンパニーのみんなに教えてもらったことを全部詰め込みます。責任を持って汐見琴音として舞台に立ち、私のすべてを懸けるくらいの強い気持ちで臨みたいと思っていますので、ぜひ劇場に観に来てくださいね。



【プロフィール】
阿澄佳奈(あすみ・かな)/8月12日生まれ。福岡県出身。A型。2007年の『ひだまりスケッチ』主人公・ゆの役で注目を集め、同作で、第3回声優アワード新人女優賞を受賞。出演作に、『這いよれ! ニャル子さん』(ニャル子役)、『WORKING!!』(種島ぽぷら役)、『ささみさん@がんばらない』(月読鎖々美役)などがあり、多くの作品で主役を務める。自身がパーソナリティを務めるインターネットラジオ『阿澄佳奈 星空ひなたぼっこ』が毎週月曜日23:00から超!A&G+で放送中。
【Twitter】@0812asumikana


■公演情報■
舞台『PERSONA3 The Weird Masquerade』
第4弾「藍の誓約」、最終章「碧空の彼方へ」

日時:2017年4月14日(金)〜23日(日)
会場:シアターGロッソ
演出:キムラ真
<出演者>
蒼井翔太/阿澄佳奈
富田麻帆、大河元気、田野アサミ、藤原祐規、田上真里奈、坂口湧久/鈴木知憲(Wキャスト)、西山丈也、松本祐一、はねゆり/ZAQ、植田圭輔 ほか

※詳細は下記公式サイトにアクセス!
http://www.clie.asia/p3wm/

ⓒATLUS ⓒSEGA / P3 the WM Project 2016


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★★阿澄佳奈さんのサイン入りポラを抽選で3名様にプレゼント★★

今回インタビューさせていただいた、阿澄さんのサイン入りポラを抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

■応募方法:ライブドアニュースのTwitterアカウント(@livedoornews)をフォロー&以下のツイートをRT


■受付期間:2月13日(月)12:00〜2月19日(日)12:00

■当選者確定フロー
・当選者発表日/2017年2月20日(月)
・当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、発送先のご連絡 (個人情報の安全な受け渡し) のため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
・当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから2月20日(月)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき2月23日(木)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。

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