10月2日、日本代表の合宿が始まった。そしてその集合時間の約14時間前、プレスリリースが配信された。そこには宇佐美貴史と武藤嘉則がケガのため不参加となり、代わって齋藤学が招集されることが書かれていた。

今回の日本代表では、ヨーロッパで活躍するほとんどの選手がほぼ試合に出場しておらずコンディションが心配されている。メンバー発表記者会見でヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、「彼らを外してしまえば誰が代わりがいるのか?」と語っていた。

だが、試合の前々日に帰国する選手がいた9月のUAE戦で敗戦を喫したのは事実。選手を集めてすぐに試合がやってくるこの日程は、調子に不安のある選手が多ければ多いほどリスクが高まる。ハリルホジッチ監督は「海外と日本で行われているフットボールとでは、まだ歴然とした差がある」と言っているものの、リスクヘッジは調子のいい国内組で行うべきだろう。

その意味で、今回もっとも妥当な選手選考はこの齋藤だ。1日の甲府戦では2ゴール2アシストの活躍だったが、その1試合だけではない。現在チームではトップスコアラーの8点を挙げるとともに、自身のJ1シーズンハイとなった。

U-12ではダノンネーションズカップの日本代表としてフランスの世界大会に行き、2007年U-17ワールドカップも経験した。U-20ワールドカップこそ逃したものの、2012年はロンドン五輪では4位に輝く。順風満帆とも言えるサッカー人生を送ってきた齋藤だったが、2014年ブラジルワールドカップでは、FWの中でただ1人出場機会がなかった。相手が引いて守るギリシャ戦ではドリブルで崩せる齋藤の突破力が期待されたが、アルベルト・ザッケローニ監督はとうとうカードを一枚残したまま引き分けを選択してしまった。

その屈辱を晴らすときがやって来た。最後に呼ばれた齋藤だが、堂々たる振る舞いでしっかりチームに馴染んでいる。

「ブラジルワールドカップで悔しい思いをしました。あれからすごく勉強もして、メンタル的なものも、すごくプレーの質も変わってると思うし、考え方も変わってきているので、自信を持ってプレーできるんじゃないかなと思う」

「ここで力を見せることが出来れば、また自分の道も変わってくると思う。楽しみですけど、楽しんでもいられないと思うので、しっかりとこのチームが勝つために自分のベストを尽くしたいなと思います」

今の齋藤で注目すべきはドリブルだけではない。甲府戦の2ゴールはいずれもワンタッチ。ドリブルの後の柔らかなスルーパスでゴールも演出している。プレーの選択肢は多い。今回こそ、齋藤の出番が必要だろう。

【日本蹴球合同会社/森雅史】